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後方からの競馬ながら6着に健闘したコスモバルク(1周目)


力負けではない、価値ある6着
 「無事是名馬」とはよく聞く言葉だが、誰が、いつ頃、使いはじめたのだろう。それにしてもコスモバルクほど、この言葉が似合う馬もいないのではないだろうか。
 いわゆる認定厩舎の第1号として注目されたのは、もうかなり昔のことのようにも思える。以来、地方所属馬のままジャパンカップと有馬記念には4年連続での出走。中央所属馬でも、これほど毎年無事にGIに出走できる馬はどれほどいるだろうか。それがさらに地方に所属したまま、高いハードルをひとつひとつクリアしながらの挑戦ということには驚かされる。
 そしてあらためて書くまでもないが、シンガポール航空国際GIへの出走も、これで3年連続となる。
 
 
現地での最終調整
 地方所属馬として初めて海外に遠征したのは、05年、アジュディミツオーによるドバイワールドカップ(6着)だが、コスモバルクはそれに遅れることわずか1カ月半、初めての海外遠征は、香港・チャンピオンズマイルに挑戦して10着だった。
 海外遠征ということでは「2番目」だが、その年のシンガポール航空国際カップを勝ち、地方所属馬として史上初の国際GI勝ちの快挙を達成した。
  冒頭の「無事是名馬」という、ともすれば使い古されたような言葉が浮かんだのは、今回のシンガポールであらためてコスモバルクの輸送に対するタフさを確認したからだ。
  日本を出る前が520キロ。そしてシンガポールに着いたときが514キロ。レース4日前、水曜日の追い切り後が504キロで、木曜日には505キロ。シンガポールには3年連続、たったひとりでコスモバルクにつきそっている榎並調教厩務員は「レース当日は510キロくらいになれば」と語っていたのだが、レース当日はきっちり510キロに仕上げてきた。
  これまで一度も怪我をしたこともなければ、脚元不安になったこともない。長距離輸送をしても大幅に馬体重が減ることもなければ、体調を崩したことが一度もない。田部和則調教師は、このことを特に強調していた。
 
 
パドックでのバルク
 「去年より調子はいい」と榎並調教厩務員が話していたとおり、万全の状態でレース当日を迎えた。
 パドック内の装鞍所では壁を蹴飛ばしてうるさいところを見せていたコスモバルクだが、パドックでの周回では落ちついていた。
 しかしスタートでは、誰もが、あっ!と思ったことだろう。今まで出遅れるシーンなどなかったコスモバルクが、ダッシュがつかず後方からとなった。
 コスモバルクは、昨年と同じ9番枠からのスタート。シンガポールでは、1番と9番の枠から馬を入れるのだそうだが、昨年と違っていたのは、全馬が枠入りするまでにかなり時間がかかったこと。
 松岡正海騎手によると、ゲートの中で待たされて「馬が飽きてしまった」そうだ。
 馬群を前に見てレースを進めたコスモバルクは、4コーナーでもほぼ最後方という位置取り。現地で、そしてグリーンチャンネルの生中継で見ている大多数が「ダメか?」と思ったのではないだろうか。
 勝ったのは、前走ドバイデューティフリーを快勝し、1番人気でここに臨んだ南アフリカのジェイペグだった。地元のシェヴロンが後続を離して逃げる展開で、ジェイペグはその逃げ馬から離れた馬群の先頭でレースを進めた。そして直線、ジェイペグは、バテたシェヴロンを交わすと、後続には一度も並びかけられることなく、1馬身3/4差をつけて先頭でゴールを駆け抜けた。
 2着争いは混戦。そして絶望的かとも思えたコスモバルクだが、直線半ばから伸びてくると、その2着争いに加わった。
 着順こそ6着だったが、2着のリキャストからは3/4、ハナ、アタマ、アタマ。タイムにして0秒2ほどまでに迫っていた。
 6着という結果は残念だったが、現地で見守っていた関係者からは落胆の色はほとんど感じなかった。
 ほんのちょっとのことで結果が変わってしまうのが競馬であり、それが国際レースともなればなおさらのこと。おそらく誰もが感じたように、今回のコスモバルクは力負けではなかったからだ。
 3度目の挑戦にして、初めて現地を訪れたビッグレッドファームの岡田繁幸氏は、松岡正海騎手に対し、「普通の若い騎手なら出遅れたところで、焦って前に行ってしまうんですが、彼は落ち着いて乗っていましたね」と。
 
騎手集合写真(松岡騎手は前列左から3人目)
 改修されたというシンガポールの馬場は、芝がかなり短く刈り揃えられ、路盤も昨年までより堅く、スピードの出る馬場になっていた。それゆえ、01年のこのレースで記録した2分00秒8というレコードにコンマ1秒と迫る速い決着。出遅れたからと、早めに好位に取りつこうと道中で脚を使っていれば、おそらくゴール前で差を詰めるということもなかっただろう。
 先行してどこまで粘れるか、というのがコスモバルクの好走パターンだったが、松岡騎手は、脚を溜めておけば直線でもちゃんと伸びてくるという、新たな一面を引き出す好騎乗だった。
 
 
バルクの挑戦はまだまだ続く!
 シンガポールの馬場が合うと言われていたコスモバルクだが、スピードの出る馬場に変わっても、一応の見せ場はつくった。どうやらコスモバルクには、馬場だけではなく、シンガポールのさまざまな環境が合っているのではないか。
 美浦や栗東では、調教のときにほかの馬がたくさん出てくると、それだけでテンションが上がってしまうのだそうだ。それがシンガポールでは、検疫厩舎に入っていることもあり、調教のときには他の馬もほとんどいないことで、毎日とってもリラックスした状態だと、榎並調教厩務員が話してくれた。
 岡田繁幸氏は、「牧場で休ませるときは、青草をたっぷり食べさせてリラックスさせているので、馬がまだ若い。種牡馬になる血統でもないので、まだまだ現役を続けます」と。
 来年、4度目のシンガポール挑戦も、もしかしてあるのではないだろうか。そしてそこで再び世界を「あっ!」と言わせる結果を今から想像しているのだが。

シンガポール航空国際カップ (Singapore Airlines International Cup 2008) 国際GI
5月18日 シンガポール・クランジ競馬場 第8競走 芝2,000m 良(good)
総賞金3,000,000S$(シンガポールドル) 約235,500,000円/1着賞金1,710,000S$ 約134,235,000円
 
着順 ゲート番 馬番 馬名 調教国 重量 騎手 調教師
1
7
1
ジェイペグ JAY PEG
SAF
57
A MARCUS H BROWN
2
2
9
リキャスト RECAST
SG
57
N CALLOW L LAXON
3
10
2
バリオス BALIUS
FR
57
B PREBBLE C LAFFON-PARIAS
4
1
14
ワールドディライト WORLD DELIGHT
SG
57
J POWELL S BURRIDGE
5
4
5
サースリック SIR SLICK
NZ
57
B HERD G NICHOLSON
6
9
3
コスモバルク COSMO BULK
日本
57
松岡 正海 田部 和則
7
13
8
スピンアラウンド SPIN AROUND
NZ
57
G MCKEON S COOPER
8
3
4
モーリリアン MOURILYAN
SAF
57
W MARWING H BROWN
9
14
16
ワンスアポンアタイム ONCEUPONATIME
SG
54.5
D BEASLEY D HILL
10
12
6
トラフィックガード TRAFFIC GUARD
GB
57
J EGAN J CHAPPLE-HYAM
11
8
11
トリガーエクスプレス TRIGGER EXPRESS
SG
57
E LEGRIX S BURRIDGE
12
11
7
キングアンドキング KING AND KING
SG
57
KB SOO D KOH
13
16
13
ミスターライン MR LINE
SG
57
R FRADD P SHAW
14
15
15
ミュージカルウェイ MUSICAL WAY
FR
55.5
R THOMAS P VAN DE POELE
15
6
10
シェヴロン CHEVRON
SG
57
J SAIMEE C LECK
16
5
12
イットメイビーユー ITMAYBEYOU
SG
57
D OLIVER B DEAN
調教国:SAF=南アフリカ、SG=シンガポール、FR=フランス、NZ=ニュージーランド、GB=イギリス



 
 
優勝したのは南アフリカのジェイペグだった


取材・文:斎藤修
写真:森内智也、斉藤修

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