兵庫ダービー
 

2008年6月5日(木) 園田競馬場 1,870m

 

究極の鍛錬の成果、向正面から一気にスパート

 
 3日前に入梅した近畿地方は朝から生憎の雨模様。兵庫ダービーが行われる園田競馬場も例外ではなく、一時は東の空に晴れ間も見えたものの、結局は大粒の雨が降る中で兵庫ダービーが行われた。
 年初まで兵庫の3歳世代のトップに立っていたアルアルアルが戦線離脱して以来、この世代を牽引してきたパセティックシーン、バンバンバンクがともに単勝オッズ2倍台で人気の中心。菊水賞でこの2頭を破ったディアースパークルがこれに続いた。
 スタートでミリオンフィルムズとレガーロが競るようにして先行し、ダートチープ、ディアースパークルの順。パセティックシーンは6番手のインコース、バンバンバンクは後方3番手のアウトコースという位置取り。
 2周目向正面、ゴールまで残り800メートルを切ったところで動いたのがバンバンバンク。一見奇襲とも見える展開であったが、「残り1000メートルからの勝負に持ち込めば、負けないだけの調教を課した」と田中範雄調教師がレース後に述べたように、むしろ力で捻じ伏せに行った格好。それを物語るように、3コーナー入り口では先頭に立ったダートチープに早々と並ぶも、鞍上の田中学騎手はここで一旦手を止め、中団でもがくパセティックシーンを股の間から確認する余裕。単独先頭に立った4コーナーから後続をぐんぐんと突き放し、どうにか2着に押し上げたパセティックシーン以下に6馬身差をつけるワンサイドな勝利だった。重賞初制覇をダービーで飾るとともに、田中学騎手は昨年に続く連覇を達成した。
 アルアルアルの離脱により厩舎の看板を背負うこととなったバンバンバンクが、大一番できっちりと結果を出した。
 しかし、ここに至る過程は決して平坦ではなかった。「完全に調子が落ちていた」と田中範雄調教師が語る菊水賞以降、使い込んだほうがいいという判断で、1000メートルからという異例の調教を何度も敢行。田中学騎手も付きっきりとなっての究極の鍛錬の答えが、大一番で見事に導き出された。
 ジャパンダートダービーについて話を向けると「兵庫ダービーだけを目標に全力を尽くしてしまったので、今はまだ考えられません」と田中範雄調教師。「なんと言っても、地元のダービーを獲るということは格別ですから」。
 安堵の表情を浮かべながらのその言葉に、賞金の大きさでは量れないダービーというタイトルの重みを感じとることができた。

取材・文:土屋真光
写真:桂伸也

 
田中学騎手
  先行馬が残る馬場というのは判っていましたが、馬の力を信じて後方から数えて3〜4番手から行かせました。折り合いもついていたので、残り800メートルからはとにかく馬を気持ちよく走らせようと思い、外を回していきました。やはりダービーは何度でもうれしいですね。  
 
田中範雄調教師
  菊水賞以降調子を崩したので、とにかく立て直すことを重点に置きました。使い込んでいい結果を出した園田ジュニアカップと同じ仕上げを意識して、1000メートルからの追い切りを3本かけました。馬の力ももちろんありますが、調教も含めてジョッキーがうまく乗ってくれました。