血統のつながりと、勢いを感じた若駒の祭典
 2歳版の「ダービーウイーク」ともいえる「未来優駿」が施行されたことで、目に見えて効果があったのは荒尾の九州ジュニアグランプリではなかっただろうか。
 もともと賞金が高い南関東は別として、「未来優駿」として賞金も全国で同じようなレベルにしようという意図があったのかどうか、1着賞金は岩手と荒尾が250万円、兵庫と名古屋が300万円というものだった。岩手は現在の厳しい状況があってか昨年の300万円から減額されたが、荒尾は昨年の60万円から大幅アップ。兵庫は新設重賞で、名古屋は昨年と同額だった。
 近年、荒尾の九州ジュニアグランプリは、約1カ月後に行われる佐賀の九州ジュニアチャンピオンとの賞金格差から、佐賀から有力馬の遠征はあまり期待できなかった。それが今年は佐賀の九州ジュニアチャンピオン(200万円)を逆転することとなり、佐賀からも有力馬3頭の遠征があった。それゆえ佐賀勢が1、2着を独占し、しかもレコード決着となったが、九州交流をアピールするならむしろこれはプラス材料。地元荒尾でも2歳戦の賞金レベルが上がることで、今後はそれ相応の2歳馬が入厩してくることが期待される。


 
 九州ジュニアグランプリ、その後に続く佐賀の九州ジュニアチャンピオンは、実際の条件としては四国・九州地区交流だが、現状、高知には2歳馬の入厩がほとんどないので、これは仕方ない。これからの課題ということになるだろう。
 兵庫ではこれまで初秋の2歳重賞は牝馬による園田(姫路)プリンセスカップしかなく、牡馬にとっては兵庫ジュニアグランプリJpnIIの前に重賞を使おうと思えば、金沢の兼六園ジュニアカップや名古屋のゴールドウィング賞に遠征するしかなかった。兵庫ジュニアグランプリのトライアルとしては、特別のプリンスリートロフィーがあったが、やはりファンの目線からすれば、ダートグレードの前に前哨戦となる地元重賞があったほうがわかりやすい。これまではダートグレードの兵庫ジュニアグランプリのあとに、地元重賞の園田ジュニアカップという流れにやや違和感があったが、兵庫若駒賞の新設(プリンスリートロフィーからの重賞格上げ)によって、さらに2歳戦線が充実するものと思う。


 
 レースそのものについては、各レースのハイライトをご覧いただくとして、全体を通してまず気がついたのは、荒尾と船橋(勝ったのはホッカイドウ競馬所属馬)でゴールドヘイロー産駒が連勝したこと。今年、ホッカイドウ競馬の2歳戦線ではゴールドヘイロー産駒が1日に3勝(9月9日)を挙げるなど、JRA認定競走の勝ち馬を次々と送り出し注目されている。その流れが全国の2歳戦にも波及したようだ。
 そしてその2頭、九州ジュニアグランプリのギオンゴールド、平和賞のチョットゴメンナは、ともに門別の道見牧場の生産馬。ちなみに額のハートで話題となっているホッカイドウ競馬のマサノウイズキッドも、同じ道見牧場生産のゴールドヘイロー産駒。勢いというのはすごいと思う。


 
 もうひとつ、ダートグレードで活躍し、その後種牡馬となった産駒の活躍も目立った。
 岩手・若駒賞を勝ったワタリシンセイキの父は、とちぎマロニエカップなどGIII・2勝のほか帝王賞GI・2着などがあるビワシンセイキ。若駒賞2着のダンストンジールの父は、ジャパンカップダートGIを制すなど中央・地方で数々のダートグレードを制したウイングアローだ。そして名古屋・ゴールドウィング賞を勝ったダイナマイトボディは、第1回JBCクラシックGIを制したレギュラーメンバーの産駒。
 こうした血統が再び地方のダートに帰ってくるというのは素直に喜ばしい。
 最後に「未来優駿」の目的として、その勝ち馬を兵庫ジュニアグランプリJpnIIや全日本2歳優駿JpnIへの出走を促すということがある。これはダービーウイークがそうだったように、毎年続けていくことで、全国の厩舎関係者の意識がそうした方向に高まっていくものと思う。

文:斎藤修
写真:いちかんぽ
 
 

 

 

 

 

 

 
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