富士通賞
うまレター杯

 

 

8馬身差圧勝でシリーズ初勝利、火の国に咲いた彩の国の華

 
 LJS2009の第2ラウンドは、4年連続(全日本レディース招待を含めると6年連続)の開催となる荒尾競馬場。曇り空に包まれた水沢とは一転、雲ひとつない青空のもとでの開催となった。
 第1ラウンドから様々なドラマが続く今年のLJS。第1ラウンドでトップに立ち、その主役となったのは西原玲奈騎手。ここ荒尾でもエキストラ騎乗となった第5レースで8馬身差の逃げ切り勝ちを収め、5年ぶりの勝利から連勝へとつなげることができた。佐賀出身の西原騎手にとっては準地元でもあり、重賞勝利などもある相性のいい当地で、水沢から続く好調ぶりをまずは勝利でアピールした。
 

 そして、俄然注目を集めたのは当地所属の岩永千明騎手。場内などに掲出されたLJSのポスターは岩永騎手を前面に押し出し、紹介式でも一際大きな声援を集めるなど、競馬場全体が応援ムード。シリーズの2レースともに有力馬に騎乗する運に恵まれた上に、ホームでのアドバンテージがあるのは大きい。
 シリーズ第3戦を前にして、この九州出身の2人のどちらかが中心になりそうな、そんな雰囲気をゆるやかに醸し出していた。
 

 ところが、水沢の初戦でも勝利を挙げた名古屋の山本茜騎手が、この空気をまずガラリと変えた。第3戦の富士通賞で手綱を取ったラバーズトウショウは結果的に断然の1番人気であったが、馬の能力よりも、そのクレバーな乗り方に目を見張らされることになる。好スタートから迷うことなく先手を取り切るも、1コーナーから2コーナーにかけて外から並んできた福山・池本徳子騎手のテイエムマッハに先頭を譲り、向正面では後続が次々押し寄せて、3コーナーの入口では5番手に後退。普通のレースの流れから考えれば、一番最初にバテて潰れたように見えるほどだったが、そうではなかった。3コーナーでマクり切った浦和・平山真希騎手のモエレロイヤルが先頭に立ち、連れて外から進出した岩永騎手のテイエムオカツとの争いになるかと思いきや、インを回ったラバーズトウショウがコーナーワークで一気に復活。直線をいっぱいに使った3頭による叩き合いとなり、ラバーズトウショウがクビ差で先着。冷静に控えて息を入れ、着差以上に余裕を感じさせる勝利となった。

 「あれ、速過ぎだったんで。ついていったらやばいなと思って」と、山本騎手は淡々と振り返ったが、簡単にできる芸当ではない。やはり今年の山本茜はちょっと何か違う。先制パンチを浴びせた水沢での第1戦を引き合いに出しながら、取材陣の中からも自然とその騎乗ぶりに感嘆の声が上がっていた。しかし、この日も主役は彼女ではなかった。
 「水沢も惜しい2着だったし、さっきも追い負けての2着だったんで、ちょっと悔しくて」と振り返るのは、先の第3戦で一旦は抜け出しながら2着となり、水沢の第2戦から2レース連続で2着の平山騎手。水沢ラウンドの後、船橋で最低人気の馬を小差の4着に持ってくるなど、好調を維持して荒尾ラウンドに臨んできた。その好調ぶりと惜敗の悔しさが蕾となり、続くシリーズ第4戦のうまレター杯ではじけるように開花する。
 

 第3戦同様に山本騎手が手綱を取るグランドフェアリーが一旦は先手を取り、外から高知・森井美香騎手のホッコーバリキとJRA・増澤由貴子騎手のセルリアンラリックらが上がってきたところで控えるという展開。そのホッコーバリキとセルリアンラリックが雁行したまま4コーナーに向かうところを、向正面からじわじわと進出してきた平山騎手のメイプルゴゼンが外からマクりきり単独先頭に。直線でもその勢いは止まらず、2着に8馬身差をつける圧勝となった。
 「えっ!? そんなに差をつけたんですか!? 必死に追ってたので……」と夢心地の平山騎手は、これがLJSでは初勝利。自身でも3年2カ月ぶりの勝ち星なのだから、その心境も無理はないだろう。
 

 かくして、荒尾ラウンドは2着、1着で35ポイントの平山騎手が、07年の浦和以来の表彰台で、初のラウンド1位をゲット。地元の岩永騎手は3着、4着の24ポイントでステージ3位。1着、3着で33ポイントの山本騎手は、惜しくもラウンド優勝こそならなかったが、総合ポイントではトップに立った。
 第1ラウンドに続いて山本騎手の勝利に始まり、平山騎手による久々の勝利で逆転となった第2ラウンド。最終ラウンドは南国高知決戦。「ちょっとこのままじゃダメです」と昨年の覇者である別府真衣騎手は、地元での戦いに向けて唇を噛み締める。50ポイント台で2人が抜け出しているが、総合優勝の行方が最終戦までもつれるのは、LJSの歴史が物語っている。同じ土佐を舞台にした大河ドラマをも凌駕するような、乙女たちのドラマから目が離せない。

取材・文:土屋真光
写真:トム岸田(いちかんぽ)、NAR

 
荒尾ラウンド 優勝
平山真希騎手(浦和)
  LJSでやっと初めて勝てて、しかも1位なんてうれしいと同時にビックリしています。(第4戦は)馬の具合はいいと聞いていましたし、水沢の前のレースも追い負けた感じでの2着で、ちょっと悔しかったんで、頑張りました。前に行く馬が多いので後ろからという指示通りに乗れましたが、とても気持ちいいです。いいリズムでここまで来られているので、高知でも表彰台に立てるように頑張ります。  
 
荒尾ラウンド 2位
山本茜騎手(愛知)
  (第3戦は)外から池本さんの馬がすごい勢いで来ましたが、速過ぎだったので、これについていったら、絶対にやばいなと思って控えたのがうまくいきました。荒尾は好きなコースです(笑)。高知はあんまり得意ではないんですが、総合でトップなので、最後までこのまま行けるように頑張ります。
 
荒尾ラウンド 3位
岩永千明騎手(荒尾)
  せっかく2戦ともいい馬に乗せていただいたのですが、思ったような成績が残せず、その上地元でたくさん応援してもらったのに応えられず悔しいです。ポイント的には上位につけることができて、次につなげられたので、高知では今日の良くなかった分も頑張って総合優勝を目指します。