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レースハイライト
 
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2010年12月5日(日) JRA阪神競馬場 1800m


マイペースの逃げで後続を完封
チャレンジャーからチャンピオンへ

 今年は芝のジャパンカップGIこそ外国馬の遠征が8頭と、久々に国際招待レースらしくなったが、対照的にジャパンカップダートGIには外国馬も地方馬も参戦がなく、中央所属馬だけで争われるのは11年目にして初のこととなった。さらには、アメリカのブリーダーズカップクラシックに遠征(10着)したエスポワールシチーも出走態勢が整わず回避、GI(JpnI)馬は2カ月前にマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIを制したばかりのオーロマイスターと、ヴァーミリアンの2頭のみ。日本のダートで最高賞金のGIとしては、やや寂しいメンバー構成となった。
 実績断然は、GI(JpnI)10勝目の大記録がかかるヴァーミリアンだが、6月の帝王賞JpnIで9着に敗れ、以来約5カ月ぶりの実戦となるだけに伏兵的な扱い。確たる中心馬はなく、トランセンドが単勝3.5倍で押し出されたような1番人気。それゆえ頂上決戦というより、このあとの東京大賞典、川崎記念、フェブラリーステークス、そしてドバイへと続く、冬から春にかけてのGI(JpnI)戦線へ向けて主役候補探しという様相となった。
 そんな争いから一歩抜け出したのは、混戦ながらもファンが1番人気に押し上げたトランセンドだった。。
 好スタートから先頭に立ち、バーディバーディ、ダイシンオレンジらに競りかけられたものの、内枠を利して1コーナーを回るところで再び単独先頭に立つと、あとは後続を引き付けマイペースでの逃げ。直線を向いてバーディバーディに並びかけられる場面もあったが、これを競り落とし、さらにはゴール前で迫ったグロリアスノアをクビ差で振り切った。
 トランセンドは3走前に藤田伸二騎手が手綱をとるようになってから成績が安定し、東海ステークス、日本テレビ盃とGII(JpnII)で連続2着のあと、G3のみやこステークスを制して臨んだ一戦。その藤田騎手が「まだ自分の形で競馬ができないと、ちょっともろい部分がある」と言うのが、2走前の日本テレビ盃だったのではないか。スタート後の直線で外のフリオーソに一旦前に出られ、1〜2コーナーで先頭には立ったものの、終始フリオーソに突かれる厳しい展開。直線を向いて、一瞬にしてフリオーソに突き放された
 今回は戦前から単騎先行が予想され、無理に競りかけてくる馬もなくマイペースでの逃げ。2着グロリアスノアの上り3ハロンが36秒1、5着のシルクメビウスが36秒3と、ともに自慢の末脚を発揮して追い込んだが、トランセンドは36秒6という上がりで振り切った。前走みやこステークスを逃げ切ったときもトランセンドは上り36秒8で粘り、2着キングスエンブレム、3着サクラロミオがともに36秒台前半で迫ったものの届かずという競馬。これがトランセンドの勝ちパターンといえそうだ。
 管理する安田隆行調教師は、厩舎開業16年目でのGI初制覇。レース直後は「感動で言葉にならないです。ダービー(騎手として91年の日本ダービーをトウカイテイオーで勝利)のときもうれしかったけど、今回はそれ以上です」と、目には光るものがあった。
 「今日はチャレンジャーのつもりで挑みましたが、今度はチャンピオンとして慎重にレースを選んで、来年の海外遠征も視野に入れていきたいと思っています」(安田調教師)という目標は、ドバイワールドカップとなるようだ。
藤田伸二騎手
安田隆行調教師
取材・文:斎藤修
写真:桂伸也(いちかんぽ)

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