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連載

連載第8回 1999年 とちぎアラブ王冠

ライバルがいて名勝負がある
ホマレスターライツ

これぞまさに「マッチレース」
※ 写真はレース映像からのキャプチャー画像です
(映像ファイルサイズ:34MB)
 「90年代の栃木競馬における好敵手をひと組挙げるとしたら?」という問いに、「ホマレスターライツとイーシーキング」と答えるひとは少なくないはずだ。

 2頭はアラブである。アラブ系のレースが全国的に縮小・廃止されていった90年代、北関東地区からも、アラブ系限定レースはやがて姿を消すことになる。その間際に、2頭は登場した。
 ファンの間で「名勝負数え歌」「ライバル物語」とまで称えられる激闘を繰り広げたホマレスターライツとイーシーキングだが、実は直接対決したのはたったの6度。99年に3度、翌00年に3度、これですべてである。

 ホマレスターライツは、99年の楠賞全日本アラブ優駿を制している。その前には地元のアラブ4歳重賞・華厳賞で優勝し、すでに栃木のアラブ4歳頂点に君臨していたのだが、楠賞をも制したことで、その実力は全国一という誉れを手にすることとなった。
 全国一強いアラブとなったホマレスターライツにイーシーキングがはじめて挑んだのは、99年9月15日に水沢競馬場でおこなわれた北日本アラブ優駿においてである。それまでイーシーキングは年齢限定の、それも平場レースばかりを使われていたから、2頭が対戦する機会は、なかなか訪れなかったのだ。
 水沢では、悠々と勲章をひとつコレクションに加えたホマレスターライツに対して、イーシーキングは4着に敗れた。しかし初遠征で強敵をむこうにまわしての4着である。この馬に対する評価は俄然、高まった。

 そして1ヵ月半後の11月6日、栃木県4歳アラブの頂点を決める重賞・とちぎアラブ王冠で、ふたたび2頭は激突する。思えばこれが、地元ファンが最初に目にした2頭の対決だった。そしてこのレースを見た者はみな、度肝を抜かれることになる。

 ホマレスターライツはスタート直後につまずいた。並の人気馬・実力馬なら致命的なほどの遅れだが、この馬は「並の」実力馬ではなかった。遅れをすぐに挽回し、2コーナー手前で外に出すと、じわじわとポジションを上げる。そして仕掛けてからは、別あつらえのエンジンを積んでいるとしか思えない、そんな脚で、先行各馬を見る見る交わしていく。
 イーシーキングは対照的に好スタートを切り、2番手につけてスイスイ先行する。残り1000メートルで前を交わすと、やがて来るであろうライバルを待つ態勢に入った。
 ものすごい勢いでせまってくるホマレスターライツ。イーシーキングもまたスパートをかける。2頭の後ろは離れる一方だ。逃げるイーシーキング、追うホマレスターライツ。せまるホマレスターライツ、粘るイーシーキング。
 懸命の逃げ込みをはかるイーシーキングを、ホマレスターライツが手応え十分で4分の3馬身、捕らえきったところがゴール。レコード決着。2頭の後ろは…3秒6ちぎれた。衝撃的なレース内容に、場内は一種異様な空気に包まれた。

 2頭は生涯で6度、対戦した。成績は3勝ずつ。タイである。

 99年、旧表記の4歳での3戦は、ホマレスターライツの完勝だった。暮れの大一番、とちぎアラブ大賞典ではホマレスターライツが56キロを背負って、52キロのイーシーキングを完封した。
 明けて00年にも3戦し、今度はイーシーキングが3戦全勝した。うち2戦は斤量差があったが、暮れのとちぎアラブ大賞典では斤量差は0.5キロ。6戦目にしてついに、ほぼ互角の条件でイーシーキングがホマレスターライツを打ち負かした…のだが。
 この00年とちぎアラブ大賞典が2頭の最後の対戦となった。そして、栃木県で行われた最後のアラブ重賞となった。以後、栃木県に所属するアラブ系の馬たちは、あるいはサラブレッド系レースに挑戦し、あるいはアラブ系レースのある地区へ移籍していった。

 ホマレスターライツはアラブ系レースを求めて福山へ移籍した。が、そこでかつての圧倒的な強さを見せることはなかった。

 イーシーキングは宇都宮に残り、サラブレッド系レースに挑戦し続けた。サラブレッド系の重賞で2つの勝ち星をあげた。

 非常に高いレベルで拮抗した力をぶつけあった2頭の対戦は、たったの6度しか実現しなかった。世が世なら、それこそ数え切れないほどの直接対決を堪能できただろうに、それはかなわなかった。だが、だからこそ、2頭の激闘の軌跡は、強烈な印象を我々に残しているのかもしれない。
文●大川充夫(耳目社)
競走成績
北関東交流競走 第25回 とちぎアラブ王冠 平成11年(1999年)11月6日
  アラ系4歳 1着賞金400万円 宇都宮2,000m 晴・良
着順
枠番
馬番
馬名
所属
性齢
重量
騎手
タイム・着差
人気
1 1 1 ホマレスターライツ 栃木 牡4 55 鈴木 正 2.08.5 1
2 6 7 イーシーキング 栃木 牡4 55 加藤 和博 3/4 2
3 5 5 ミネフジイチバン 栃木 牡4 55 長嶋 茂夫 大差 3
4 6 8 キングソプラノ 栃木 牡4 55 早川 順一 3/4 4
5 5 6 トチノオー 栃木 牡4 55 藤本 靖 ハナ 7
6 8 11 ハシノクラウン 栃木 牡4 55 柴嵜 勝 6 10
7 4 4 ノギノライデン 栃木 牡4 55 平澤 則雄 4 6
8 7 9 イッセイタッカ 栃木 牝4 53 岡田 康志 3/4 12
9 8 12 ウイニングチャンプ 栃木 牡4 55 内田 利雄 1 5
10 2 2 タマスカイ 栃木 牡4 55 青木 秀之 3 8
11 7 10 リバータカナス 栃木 牝4 53 古澤 泰博 大差 11
  3 3 ミドリヒマワリ 栃木 牝4 53 松本大寿郎 中止 9
払戻金 単勝140円 複勝110円・110円・140円 枠連複110円 馬連複110円
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