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連載

連載第11回 1999年 川崎記念

地方競馬ファン至福の1週間

次元の違う脚で堂々と先頭に立つアブクマポーロ
(映像ファイルサイズ:47MB)
 このレースが果たして「名勝負」であるかどうかと問われれば、恐らくは「名勝負」ではないという意見の方が多いだろう。同じ川崎記念でもアブクマポーロVSメイセイオペラに沸いた前年(1998年)の方が、むしろ「名勝負」に近いレースかもしれない。しかし、敢えてこのレースを選んだ理由は、このレースを見て貰いたいと言う事に他ならない。
 川崎記念が行われた1999年2月3日の3日前。東京競馬場で行われたフェブラリーステークスにおいて、岩手のメイセイオペラが地方馬在籍として初のGT制覇という、まさに「歴史的快挙」を成し遂げた。当時、地方競馬を代表する1頭である。方やアブクマポーロの方は97年に東海ウインターステークス(GU)に出走しトーヨーシアトル等を退け、JRAの重賞に勝っているが、今回は敢えて川崎記念に出走した。
 3日後であるから、レース前、アブクマポーロを管理する出川克己調教師のもとには、メイセイオペラの快挙についてコメントを求める取材が相次いだ。出川師は「仲間が勝ったような気分です。とても嬉しい」と答えていたが、フェブラリーステークス出走については「考えてはいましたが、ホクトベガに続く連覇も掛かっていましたし、地方競馬の事を考えて川崎記念を使いました」と敢えて川崎記念を使った訳を答えていた。
 JRAのメンバーも当然分散していた。フェブラリーステークスにはワシントンカラー、オースミジェット、エムアイブラン等が。川崎記念にはナリタホマレ、ナナヨーウォリアー、パリスナポレオン、そしてキョウトシチー等が出走。
 この年から2100メートルに距離延長された川崎記念。好スタートのゴールドプルーフを制して、予想通りウインドフィールズがハナを奪うが、テツノセンゴクオーが鈴を付けに行く。ナナヨーウォリア、ナリタホマレ、キョウトシチーと、JRAの有力馬は中団に陣取り、アブクマポーロは後方9番手。レースは大方の予想通りスローペースとなった。
 向正面中間からレースは動き出す。ナリタホマレ、キョウトシチー、ナナヨーウォリア等JRAの有力馬が前を伺い始め。アブクマポーロも徐々に位置取りを上げるが、石崎騎手はまだ持ったままだった。4コーナーで前が壁になり、外に持ち出すアブクマポーロ。大外から2頭目の隙間を抜けて直線を向いた。
 ゴールドプルーフ、ナリタホマレ、キョウトシチーが追い比べ……と、普通のレース回顧ではこうなるのだが、その外、しかも大外から並ぶ間もなく交わすアブクマポーロ。しかも軽く追っただけで、鞍上の石崎騎手はチラリと内の2着争いを見やると、手綱を緩めて馬なりのゴール。「モノが違う」とはこういう勝ち方を言うのだろう。
 メイセイオペラが東京競馬場で魅せたものとはまたちょっと違う、インパクトというか、貫禄というか、何かそういった凄みを感じる勝ち方であった。本来ならメイセイオペラのフェブラリーステークスとセットでご覧になって頂きたいレースである。
 ライバルと呼ばれ、1990年代後半凌ぎを削った2頭が、同じ週にGTを制した地方競馬ファン至福の1週間であった。
 アブクマポーロはこのレースの後、3月のダイオライト記念を制した後、馬房内で左後肢飛節を負傷し放牧へ。一度帰厩したが、回復かなわず引退となった。地方競馬30戦22勝、中央2戦1勝、帝王賞、東京大賞典、川崎記念など重賞は中央、地方併せて14勝、内GT4勝の実績を引っさげ種牡馬入りしたが、目立った活躍馬を残せず2005年に種牡馬引退。現在はにいかっぷホロシリ乗馬クラブで、乗馬として余生を送っている。一般の方でもポーロに騎乗できるそうなので、是非、その背中を体験してもらいたい。
文●小山内完友(日刊競馬)
写真●いちかんぽ
音声●耳目社
映像●プラスミック(現・山口シネマ)
(協力:神奈川県川崎競馬組合)
競走成績
農林水産大臣賞典 第48回 川崎記念 平成11年(1999年)2月3日
  サラ系5歳以上 1着賞金6000万円 川崎2,100m 晴・良
着順
枠番
馬番
馬名
所属
性齢
重量
騎手
タイム・着差
人気
1 7 10 アブクマポーロ 船橋 牡8 56 石崎 隆之 2.16.6 1
2 4 4 キョウトシチー JRA 牡9 56 松永 幹夫 2 1/2 5
3 1 1 ゴールドプルーフ 愛知 牡5 55 丸野 勝虎 1 6
4 6 8 ナリタホマレ JRA 牡5 55 蛯名 正義 3/4 2
5 8 11 パリスナポレオン JRA 牡9 56 武 豊 1/2 4
6 5 5 セントリック 大井 牡7 56 宮浦 正行 2 9
7 5 6 ナナヨーウォリアー JRA 牡5 55 熊澤 重文 2 3
8 8 12 テツノセンゴクオー 大井 牡8 56 鷹見 浩 5 11
9 7 9 グランプリクン 浦和 牡6 56 見澤 譲治 3 7
10 2 2 ウインドフィールズ JRA 牡9 56 田中 剛 6 8
11 6 7 マイネルガーベ 川崎 牡8 56 河津 裕昭 2 12
12 3 3 コクサイスピード 川崎 牡6 56 森下 博 4 10
払戻金 単勝110円 複勝100円・220円・350円 枠連複750円 馬連複800円 枠連単830円 馬連単810円
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