第38回 2011年9月20日 ユキノビジン


 ユキノビジンの原点は岩手競馬でした。そもそもは中央競馬からデビューする予定でしたが、当時はうらやましいほどに景気が良く馬房に空きがなかった時代。馬主さんが東北の方だったので空くまでの間を条件に岩手で走ることになったという逸話があります。

 「テスコボーイの血も入っていたし父譲り(サクラユタカオー)の馬格もあったので、デビュー前から期待をしていました」とユキノビジンを生産した村田牧場の村田繁實代表は当時を振り返ります。

 岩手では4戦3勝し、中央に転厩後の活躍はあまりにも有名ですね。93年の桜花賞とオークスはともに2着(優勝はベガ)、その後のクイーンSでは念願の重賞タイトルを制覇。

 実力はもちろんのこと、ユキノビジンと言えばそのアイドル的なルックスを語らずにはいられないでしょう。父に似た栗毛の華やかな馬体にタテガミは純白のリボン風の装いで、女性からの支持も絶大。ユキノビジンはその時代を彩った主役の1頭でした。

 現役引退後は村田牧場(新冠)で繁殖生活に入りました。「気は強いけど利口な馬ですよ。他の馬たちも一目置いている感じですね」(村田代表)

 約15年の繁殖生活で送り出した産駒は牡馬9頭、牝馬3頭。子出しは良かったものの、蹄が弱く妊娠した時に脚元に負担がかかることから、今では繁殖牝馬は引退し功労馬として悠々自適な毎日を送っています。

 私がおじゃました時は南関東で大活躍しているセレン(現在は放牧休養中)の祖母カリネッタと一緒に放されていて、2頭仲良くのんびりした時間を過ごしていました。

 「ユキノビジンは曾祖母のミスジェーンからうちに入っている血統で、私はミスジェーンを初めて馬主として持ったんですよ。その仔から78北海優駿を勝ったビユーテイワンが出ました(ユキノビジンの祖母)。うちに後継してくれている思い出がいっぱいつまった血統なので、ユキノビジンの血も残したいんです」(村田代表)

 ユキノビジンの最後の産駒は今年2歳の牝馬コアンドル(父リンカーン)で、ホッカイドウ競馬で1勝を挙げたばかり。ひとつ上の姉ハルジオン(父ティンバーカントリー)もお里帰りをしていて、今はどちらを後継にするか思案しているそうです。

 現在は21歳になったユキノビジン。その華やかなルックスは健在で、『おばあちゃん』と声をかけたら、バシッと怒られそう……(苦笑)私はこれまで写真でしか見たことがありませんでしたが、実際会ったユキノビジンは思っていた以上に、美しかったです。


高橋華代子(たかはしかよこ)
元NHK山形放送局キャスター。
現在は南関東競馬を中心に活動中。
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