第43回 2012年2月20日 テンセイフジ


 「最初は別の種馬をつける予定だったんだけど、その種馬の状態が良くなくて、それなら別の種馬にしようってつけたのがテンセイフジの父ハウスバスターだったんだよ。これだからわからないもんだねぇ」とテンセイフジを生産した小葉松幸雄さんは笑います。

 テンセイフジはとねっこの頃から小柄で、取り立てて目立つ所のない普通の馬だったそうです。母ハローメルヘンは新潟と佐賀で走り、伯父のツキフクオーは95東京王冠賞などを優勝した南関東の重賞ウイナー。

 川崎競馬場の小向トレーニングセンターに入厩後は、今は亡き八木正雄調教師の元でデビューし、石崎駿騎手の手綱で東京プリンセス賞と関東オークスGVを優勝して、05南関東牝馬クラシック2冠を達成。当時89歳で日本最高齢調教師だった八木調教師が「うれしいよぉ」と顔をくしゃくしゃにして喜びを噛みしめていた姿が今も忘れられません。関東オークスGVがダートグレードレースになってから地方所属馬にとって記念すべき初勝利でした。その後は酒井忍騎手とのコンビでダートグレードレースを活躍。

 現役生活引退後は生まれ故郷の小葉松さんの牧場(浦河)に帰り繁殖生活に入りました。09年に出産した初仔アバーブゴッド(父ストームファング、牝馬)は中央デビューをして初勝利を目指しているところです。10年に牡馬(父バゴ)、11年に牡馬(父アッミラーレ)、今年はお腹にヴリルの仔が宿っていて5月5日が出産予定。母のハローメルヘンも仔出しがひじょうに良いので、そんなDNAをしっかり受け継いでいるようです。

 ビッグニュースとして、今年の種付けのお相手はカネヒキリの予定とのこと!!!

 現在の小葉松さんの牧場はテンセイフジと母ハローメルヘンの2頭の繁殖牝馬を繋養しています。「テンセイフジもきつい気性だけど、ハローメルヘンはもっときついから、テンセイフジのほうが逃げていくよ(笑)」(小葉松さん)テンセイフジは最初から自分でとねっこにお乳を飲ませて子育ては上手にやっているそうです。人にきつい気性でもとねっこには優しいお母さん。

 小葉松さんの牧場は最高で6頭の繁殖牝馬しか置いてこなかったそうですが、数少ないチャンスから活躍馬を送り出しています。テンセイフジの他にも、北海道で重賞を勝ち02TCK女王盃3着のヤマノジェネラスや10九州ダービー栄城賞と10荒尾ダービーを制したメイオウセイなども……。

 「今度はテンセイフジの仔で大きいレースを取って欲しいね。夢を見ていきたい」(小葉松さん)


高橋華代子(たかはしかよこ)
元NHK山形放送局キャスター。
現在は南関東競馬を中心に活動中。
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・船橋競馬を愛する100人の会