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2013年2月28日(木) 笠松競馬場 1400m

好スタートから逃げ切り完勝
短距離王者の直接対決を制す

 午後1時ごろ笠松競馬場に着いて、あれ?と思った。平日にもかかわらず、まるで週末か祝日かのように場内はたくさんのファンで賑わっていたのだ。天気にも恵まれ、上着を着たまま日向にいると汗ばむほどの陽気になった。全国から好メンバーが集まったということもあるだろうが、やはり地元でもありラブミーチャンの人気は絶大だ。
 NARグランプリ年度代表馬に選出され、迎えた初戦。昨年11月の笠松グランプリではエーシンクールディに競り負けていただけに、ここはきっちり勝って次につなげたいところ。単勝1.5倍で圧倒的人気。今回はJRAの福永祐一騎手が鞍上となることでも注目となった。
 対するは、やはりダートグレード勝ちの実績がある船橋のナイキマドリードで、単勝は2.2倍。ラブミーチャンとの馬連複は、なんと1.3倍という一騎打ちムード。離れて、大井のファイナルスコアー、佐賀のエスワンプリンス、金沢のトウショウクエストと、ラブミーチャン以外では遠征勢が上位人気を占めた。
 互角のスタートから、ラブミーチャンは二の脚の違いで先頭へ。ナイキマドリードが競りかけてきたが、内枠のラブミーチャンが1~2コーナーを回るところでハナをとりきった。
 3番手以下は徐々に離れ、人気2頭の一騎打ちに。しかしラブミーチャンは最後まで並びかけることを許さず、ナイキマドリードに1馬身半差をつけて逃げ切った。さらに4馬身離れたものの、九州代表として全国区での活躍が期待されるエスワンプリンスも3着に入る好走を見せた。
 勝ったラブミーチャンは、オッズパークグランプリは佐賀で行われた11年12月に続いての連覇。地元笠松での勝利は、3歳2月のゴールドジュニア以来3年ぶりということもあり、ゴールの瞬間にはスタンドのファンから拍手が起こった。
 ここ2戦のラブミーチャンは、悔いが残るレースだったと柳江仁調教師。「JBC(スプリント)のときは両トモ脚をドンッとついてしまいましたし、前回の笠松グランプリでも左のトモをゲートの中で滑らせてますから。それを思うと今回はゲートをうまく出てくれて、福永くんもリラックスして、追わなくてもいい動きをしていたし、理想のレースができる馬体になっていたのかなと思います」。本馬場入場の前に少しイレ込むような仕草も見せたが、実際にパドックで引いていた柳江調教師は「がんばるぞ、みたいな感じで、これはいいと思いましたね」と。パドックでの足音もいいときのものだったという。
 ナイキマドリードは一昨年のNARグランプリ最優秀短距離馬、そしてラブミーチャンは昨年の最優秀短距離馬。その直接対決を、ラブミーチャンは地元で制して見せた。勝ちタイムの1分24秒5は、02年全日本サラブレッドカップ(当時GⅢ)でのヤマカツスズランのコースレコードにコンマ2秒と迫る優秀なもの。
 すでに伝えられているように、ラブミーチャンは今年限りでの引退が予定されている。次走黒船賞JpnⅢへ、そして今年最大の目標となるJBCスプリントJpnⅠ(金沢)へ向けて、最高の形で6歳シーズンの幕開けを飾った。
福永祐一騎手
今年一番のプレッシャーがありました。昨年の地方競馬の年度代表馬ということで、なかなかこういう機会はないですし、負けられないというプレッシャーもあったので、勝ててよかったです。本当にすばらしい馬です。次は黒船賞と聞いているので、そこでもいいレースを見せてほしいと思います。
柳江仁調教師
今日は本来のラブミーチャンの姿で勝てたということが一番よかったです。背中の凝りや痛みがなくなって、休養した効果がありました。まだ筋肉は絞りきれていない感じで、今回のひと叩きで磨きがかかったと思います。黒船賞に向けては、1泊の輸送とか、展開とか、今から心配することがたくさんあります。

ラブミーチャンとの一騎討ちを演じ2着となったナイキマドリード

取材・文:斎藤修
写真:宮原政典(いちかんぽ)