レースハイライト タイトル
dirt
2013年3月19日(火) 高知競馬場 1400m

インを突いて抜け出し連覇
実力馬が復活をアピール

 昨年の黒船賞JpnⅢは祝日開催でにぎわったが、今年は平日の開催。それでも熱心な競馬ファンは競馬場行きの無料バスを満席にし、第1レースから発売窓口の前には列ができた。
 パドックを囲むひな段状の観覧場所を囲む人もレースごとに増え、第3レースのJRA交流、はりまや盃の出走馬が現れたあたりでスタンド側はほぼ一杯に。続いて黒船賞の出走馬が登場すると、たくさんの携帯電話やスマートフォンがパドックに向けられるのも例年と同じ風景だった。
 今年の黒船賞で人気を集めたのは、このレース連覇を狙うJRAのセイクリムズン。高知競馬場には初登場となる笠松のラブミーチャンも単勝3番人気と支持を集めたが、3連勝式ではJRAのティアップワイルド、ダイショウジェットとの組み合わせが上位となっていた。それでもラブミーチャンは騎乗合図後に尻っぱねを始めて元気一杯の様子。マイナス13キロという体重ではあったが、前走に続いての勝利をファンが期待していたことは、単勝5.6倍という数字が示していた。
 この日の高知地方は朝から青空が広がって、正午の気温が25度。馬場コンディションの発表は不良だったが、1コーナー周辺の砂は乾いた色になっていた。ただし、赤岡修次騎手いわく、「砂を補充した影響で全体的にパワー優先。とくに外を回したらチャンスは少ない」という状況らしく、前半のレースでもインコースから差を詰めた馬が上位に浮上するシーンが見受けられた。
 黒船賞でそのコンディションを最高にいかしたのは、連覇を決めたセイクリムズンだった。
 スタート直後に先手を奪ったサマーウインドが、黒船賞史上最速のスピードで前半400メートル地点を通過。6馬身ほど離れた2番手にラブミーチャンがつけたが、その直後は団子状態で進んでいった。そして3コーナーあたりから有力馬が続々と差を詰めにかかり、4コーナーでは5頭が横に広がる白熱の争いに。その集団からインコースを通ったセイクリムズンが先に抜け出した。
 しかしそこに昨年同様、ダイショウジェットが猛然と差を詰めてきた。それでもセイクリムズンは昨年と同じように最後まで抜かすことを許さず、ゴール地点ではクビ差先着。ダイショウジェットを管理する大根田裕之調教師は、「3コーナーでは内でも4コーナーでは脚質的に外を回さなければならない、その分だなあ。でもよくがんばった」とコメント。柴山雄一騎手は「思ったとおりの競馬ができたのに……」と悔しそうに振り返った。
 それとは対照的に、セイクリムズン鞍上の岩田康誠騎手はウイニングランで勝利をアピール。そして検量室に戻ってくるなり「地方も世界も勝っちゃうぜ。次はドバイじゃ!」と気合の表情で吼えてみせた。
 3着にはティアップワイルドが入り、地方馬最先着は4着となった高知のコスモワッチミー。赤岡騎手は「別定(56キロ)でもこれだけやれたんですからね。差はそんなにないですよ」と、今後に向けて意欲的。ラブミーチャンは6着だったが、福永祐一騎手は「向正面から後続にプレッシャーをかけ続けられてしまって。状態面も展開的にも悪くないと思っていたんですが」と唇をかんだ。
 それでも、3着までを独占したJRA勢と、5着に入った高知のクイックリープを含めた地方競馬所属の上位入線馬には、今後への期待が十分。高知競馬場でもっともハイレベルな戦いである黒船賞は、今年もまた観客席が最高に盛り上がる白熱の一戦となった。
岩田康誠騎手
馬が充実している状態でしたし、最後も差は詰められましたけれど自分自身としては余裕がありました。今年もここからさらに上昇してくれると思いますし、JBC(スプリント)という目標に向かっていけると思います。
服部利之調教師
年齢もあって反応が多少鈍くなっていますし、枠も内でしたから脚質的にもどうかなと思っていたんです。それでも暖かい時期になると変わってくる馬なので、今年もこれから活躍してくれると期待しています。次は東京スプリント(4月10日・大井競馬場)に進む予定です。


取材・文:浅野靖典
写真:国分智(いちかんぽ)、NAR