レースハイライト タイトル
dirt
2012年5月4日(祝・金) 名古屋競馬場 1400m

余裕のレース運びで突き放す
ダート短距離の絶対王者へ

 JRA勢優勢のダートグレード戦線のなかでも、近年特に固い決着が続いているのが、このかきつばた記念JpnⅢ。07~10年は1~3番人気が上位3着までを占め、昨年ようやく4番人気のラブミーチャンが3着に粘った。
 今年、断然人気となったのは、黒船賞JpnⅢ、東京スプリントJpnⅢと連勝してきたセイクリムズン。しかし、パドックを取り囲んだファンが応援するのは断然ラブミーチャンで、騎乗合図がかかると「はまちゃ~ん!」という濱口楠彦騎手への声援が飛んだ。
 4番枠のジーエスライカーと6番枠のエーシンクールディが競り合い、1~2コーナーを回るところで内のジーエスライカーがハナへ、外の11番枠に入ってしまったラブミーチャンは無理せず3番手から。セイクリムズンはやや離れて4番手を追走した。
 3コーナー手前でラブミーチャンが仕掛けて先頭に立ち、すぐにセイクリムズンが追った……ように見えた。しかしレース後のインタビューで岩田康誠騎手はこれを否定。「いえ、ぼくが(ラブミーチャンを)動かしたんですけどね」。なるほど、正面からのレース映像を見直してみると、岩田騎手がまず仕掛け、それを前で察知した濱口騎手が一瞬後ろを振り返り、そして追い出している。どちらに主導権があったかは、はっきりしている。直線を向くところまではラブミーチャンが先頭だったが、すぐにセイクリムズンが交わし、後続を突き放して完勝。ラブミーチャンも必死に粘ったが、前が速い展開になれば追い込んでくるのがダイショウジェット。ラブミーチャンは、ゴール前で交わされ3着だった。
 ラブミーチャンは、2着を狙いにいく競馬をすれば、実力的にはおそらく2着が獲れるだろう。しかし3歳以降はダートグレードのタイトルがなく、ここは勝ちにこだわっての結果。今回は相手が強すぎた。
 そして1~3着は人気順の決着と、今年も固い結果に収まった。黒船賞JpnⅢから始まる、このダート短距離路線は、JRAのメンバーがある程度固定されるため、例年固い決着が多くなるのかもしれない。今回のJRA勢4頭も、東京スプリントJpnⅢからスーニが抜けただけというメンバーだった。
 勝ったセイクリムズンは、これで黒船賞JpnⅢから3連勝。昨年はこのレースを勝ったあとしばらく勝ち星から遠ざかってしまったが、今年は違うようだ。「以前好調なときに岩田君が乗ってくれて、そのころの馬の力を把握していて、それを信じてやってくれたのが黒船賞。あのあたりから本格的に岩田君とこの馬との信頼関係ができたからね」と、服部利之調教師。岩田騎手も「JBCスプリントまで負けられない気持ちです」と自信を見せている。今後のダート短距離戦線は、セイクリムズンを巡る争いとなりそうだ。
岩田康誠騎手
先行しようと思ったんですが、何頭か速い馬がいたので、それを行かせて、あとはラブミーチャンだけを見てレースをしました。前回から日にちがなかったので軽めの調整だけで、今回も余裕を持って、ほんとに生き生きと楽しそうにレースをしています。
服部利之調教師
前回から馬が自信をとりもどしたようで、今日は岩田君と馬との共同作業みたいな感じで、馬ものびのび走っていました。距離的には1200でも1400でも、それに合わせてレースができるような感じがします。ローテーション的にも次走はさきたま杯でしょう。


取材・文:斎藤修
写真:宮原政典(いちかんぽ)、NAR