レースハイライト タイトル
dirt
2012年6月14日(木) 門別競馬場 1200m

早めの門別入厩が功を奏す
直線鮮やかに抜け出し完勝

 1200メートルで実施されるようになり今年で3年目。その最初の年、2010年は稍重で行われたこともあり、ミリオンディスクが1分09秒6のレコード勝ちを収めたが、良馬場の昨年はマルカフリートが1分11秒5と前年より約2秒も時計を要した。
 昨シーズンの終了後、本走路を全面改修したこともあり、クッションの効いた馬場で騎手たちの評判も良い。時計を採っていても、今シーズンの門別競馬は比較的上がりが掛かるレースが多く、一転二転するスリリングな競馬が展開されるようになった。
 今年のメンバーは、春のダート短距離路線で独壇場だったセイクリムズンの2番手グループの争いと、JRA勢は例年より小粒な印象。それでも、プリティゴールドが連覇したエトワール賞の勝ち時計が1分13秒4と、昨年の北海道スプリントカップJpnⅢの勝ち時計より約2秒遅く、ホッカイドウ競馬の調教師も「中央馬とは持ち時計が違うからね」と、戦前から一目置いたコメントが目立った。
 レースは、大井の快速馬・ブリーズフレイバーがハナへ行くかと思われたが、地元のグレンチェックが意地を見せる先行策で、里帰り的な存在となったサマーウインドがそれを追いかける展開。3コーナー手前でサマーウインドが先頭に立つ形となったことで、先行勢にとっては厳しいラップを踏む形になった。前半3ハロン34秒0を私が採った時計の内訳は11秒8-10秒6-11秒6。
 ただ、JRA勢にとっては平均ペースでありこのラップなら上がりもきっちりまとめられる。上がり3ハロン37秒6も、12秒3-12秒4-12秒9と全て12秒台をマークした。このラップ構成だと、地方馬には出番がない。
 直線に入ると、迷うことなくサマーウインドの内を突いた岩田康誠騎手のセレスハントが、昨年の東京スプリントを見ているかのような鮮やかなレース振りで8カ月振りの勝利を飾った。
 2010年に佐賀のサマーチャンピオンJpnⅢを制したことはあるが、セレスハントは広々としたコース形態、そしてワンターンのレースが合っている。
 たった3世代しか残せなかったコロナドズクエストの貴重な重賞ウィナー。栗東で追い切った後、1週前の金曜日に門別競馬場に入厩する形で落ち着きがあったことも勝因のひとつと言える。
 その一方で、JRA未勝利から門別で2連勝し、JRAに戻った後はJBCスプリントJpnⅠ制覇まで一気に駆け上がっていったサマーウインドは、初勝利を挙げた思い出の地に登場し、ホッカイドウ競馬のファンも注目した。昨年から本来の行きっ振りが見られなかったが、「門別や大井のようなコース形態が合うのは、今回の走りでわかりました。大分良くなっていますよ」と、藤岡佑介騎手も復活への手応えを感じていた。
岩田康誠騎手
セレスハントに騎乗するのは久々でしたが、同じレースで一緒に戦っていた馬だけに能力があるのはわかっていましたので、自信を持って挑みました。勝負どころでは無理をせず力を温存させ、直線で内を突いた時に期待通りの末脚を見せてくれました。
松永幹夫調教師
この後は栗東に帰ってからの様子を見て、次走を判断することになりますが、プロキオンステークスやクラスターカップなどを視野に入れています。

直線で内から伸びたセレスハントが後続に差をつける
 それにしても、セレスハントが勝ち上がったことで、セイクリムズンの強さがより際立つ形となった。ノボジャックやサウスヴィグラスなど、北海道スプリントカップは後のGⅠ馬を送り出している。打倒セイクリムズンを叶えるためにも、タフな門別を経験したセレスハントが力をつけ、大一番での逆転に望みをつなげて欲しいと思う。

取材・文:古谷剛彦
写真:中地広大(いちかんぽ)