レースハイライト タイトル
dirt
2012年7月11日(水) 大井競馬場 2000m

測ったように差し切り頂点に
羽田盃馬も強力JRA勢相手に健闘

 3歳ダートの頂点ジャパンダートダービーJpnIには、地方競馬の“ダービーウイーク”勝ち馬から、東海ダービーのマイネルセグメント、東京ダービーのプレティオラスが参戦。残念だったのは、東京ダービーで、馬主、厩舎、生産牧場、種牡馬がすべて同じという、きわめてめずらしいワンツーの2着馬プーラヴィーダが脚部不安のため回避となったこと。
 一方で、JRA勢は強力なメンバーが揃った。兵庫チャンピオンシップJpnII、ユニコーンステークスGIIIの勝ち馬に、ダートでは無敗の馬、さらには芝のクラシックからの転戦と、おおよそ考えられる実績馬たちばかりだ。
 逃げ馬不在でどの馬がペースを握るか注目されたが、果たして先手を奪ったのは、ここまでダートで3戦全勝、しかし5カ月ぶりの実戦のフリートストリートだった。トリップ、オースミイチバンらが追走し、JRA勢6頭が先団を形成。やや離れてアートサハラ以下の地方勢が続いた。
 ペースはやはりスロー。4~6ハロン目にはラップが13秒台に落ちた。先行するJRA勢と、続く地方勢の差もなくなり、そして3コーナー手前で一気に動いたのが今野忠成騎手のアートサハラだった。先頭に立っていたトリップにアートサハラが並びかけ、一気にペースが上がった。
 直線ではトリップが一旦後続を突き放す。しかし満を持して追い出されたハタノヴァンクールがじわじわと差を詰め、ゴール前30メートルあたりでとらえ、交わし去った。芝のクラシック路線から転戦してきたトリップが1馬身差2着。勝負を挑んだ羽田盃馬アートサハラが3馬身差の3着に粘った。
 単勝1番人気の支持にこたえたハタノヴァンクールは、芝では2戦していずれも二桁着順だったが、ダートでは5戦全勝で頂点に登り詰めた。そのダートでの5勝は、いずれも道中は中団よりうしろを追走し、直線で前をとらえるという競馬。今回も大井の長い直線を一杯に使い、測ったように前をとらえた。「いつもあと何メートルかのところで交わしてくれるので、すごい馬です」とは、管理する昆貢調教師。それはまるで、狙った獲物は必ず仕留める、とでもいうべきレースぶり。今回、抜け出してからは手綱を緩める余裕もあったため、着差以上の強さといってもいいかもしれない。「スタートがいつもゆっくりなので、ファンの方もハラハラすると思いますけど、僕もドキドキしながら乗っています」と鞍上の四位洋文騎手。まだまだ強くなる余地を残しているということだろう。
 強かったのは、もちろん勝ったハタノヴァンクールだが、殊勲はアートサハラの今野騎手だ。JRA勢6頭でもっとも人気薄だったホッコータルマエの単勝が10.8倍で、地方勢ではもっとも人気となったアートサハラが44.9倍。JRA勢と地方勢ではかなり力の差があるというのがファンの評価だった。それをみずから動いてJRA勢の上位独占を許さず3着に食い込んだのは、今野騎手の好騎乗といえよう。管理する荒山勝徳調教師は、レースを前にした会見でも、そしてレース後も、「まだまだ力を出し切れていない」と話していただけに、今後の成長も大いに期待できそうだ。
四位洋文騎手
今日は2000メートルでスローペースになると思ったので、向正面から3コーナー手前で動いていこうと考えたんですけど、今野君が一気にまくっていったので、ちょっとあわてました。末脚がいい馬で、大井の長い直線で、期待どおり交わして見せてくれました。
昆貢調教師
4コーナーで前を射程圏に入れたときは差し切れるだろうなと思いました。ユニコーンステークスは使わず、じっくり力を溜めてここを目標にしていたので、計算どおり勝つことができました。3歳でまだ完成はしていませんが、ほんとに完成したときはすごい馬になるんじゃないかと思います。

アートサハラ(大井)は積極的な仕掛けで3着に粘った

取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(川村章子、森澤志津雄)、NAR