浅野靖典の全国馬美味(ウマウマ)行脚」地方競馬にまつわる「ウマいもの」を毎月ご紹介!
“鉄人”佐々木竹見の見解」佐々木竹見元騎手がダートグレード各競走を“鉄人”の目線で鋭く解説!
高橋華代子の(続)気になるあの馬は…」引退後や転厩した名馬の近況を愛あふれる文章でご紹介!
REWIND 90's」当時の写真や映像を交えて90年代の名勝負を振り返ります!

第9回 2012年6月8日(金) そばめし(園田競馬場)

園田競馬場
「ポニー」 そばめし(500円)

 個人的な話で恐縮だが、数年前まで園田競馬場のパドック周辺にある食堂には、なんとなく入りにくい気がしていた。初めて園田競馬場に足を踏み入れたのは確か1999年だが、スタンド以外の食堂で座って何かを食べたのは、2008年の夏が初めてなのである。
 その理由はいくつかあって、私が園田に行くときはたいてい晴れていて、それに比べると食堂のなかが暗く感じて気後れする……とか、店頭や店内で常連さんとおぼしき人々がワイワイやっているから突入するのに躊躇する……といったことが挙げられる。もちろんそれは私の勝手な個人的感覚だったわけで、初体験の夏以降はそれ以外の店にも体験入店。もう少しで全店制覇するところまで近づいている。
 さあ、それでは未踏の地図をひとつ塗りつぶそう。某競馬関係者にそのことを相談すると、「ポニーがいいんじゃないですかねえ」との答えを得た。
 ということで午後2時すぎにお店に行くと、いきなり店頭の「そばめし」という表示にハートを射抜かれた。それでも初めての店なので少し警戒心をもちつつ店内に入ると、笑顔満面のおばちゃんがそれを和らげてくれる。すぐさま「そばめし」を注文すると、店内の大きな鉄板からコテの金属音が聞こえてきた。おお、フライパンで作るんじゃないなんて本格的。その音は5分ほど続いていたから、やきそば業界にありがちな「作り置きを温める」ではないことがよくわかる。
大きな鉄板で調理される
 だから出てきた「そばめし」からは湯気がモワモワ。 まずは味噌汁から箸をつけると、鳥っぽい風味がふんだんに入っていていきなりウマい。続いてメインディッシュに移行すると、ソースが脇役に徹している感じでいいバランス。へえ、「そばめし」ってこんなにウマかったんだ!
そばめし(500円)

 じつは私は「醤油派」。コロッケにもトンカツにも醤油を垂らす人なのだ。でもこのソース味はクセになる。実際、それなりの量があるこの「そばめし」を一気に完食してしまったのだから。
 「どうぞ、ゆっくりしていってくださいな」と、お店のおばちゃん。午後3時前という時間帯だからお客さんはまばらで、なかにはウトウトしている人も。店内のテレビで場内映像を見ながらお茶を飲めば、すぐそこにある勝負の緊張感とは別の世界だ。戦士の休息には最適なお店かもしれないなあ。
 「もう何十年もここで営業しているんですよ。でもだんだんお客さんが減ってきましたね」JBCの年にフードコートができてからは、さらに客足が遠のいてしまったそうだ。確かにフードコートは気軽に注文できるから敷居が低い。でも気分転換ができるという点では食堂のほうが断然上だ。
 「また来てね~」と送り出してくれたおばちゃん。「ウチはリピーターが多いのよ」とおっしゃる理由がよくわかった。味もさることながら、温かさが園田の食堂の魅力なんだなあ。


文・写真●浅野靖典

浅野靖典(あさのやすのり)
競馬キャスター・ライターとして活動中。「クリック!地方競馬」キャスターを務めているほか、JRAブリーズアップセール、八戸、九州の各競走馬市場にて司会進行を担当。ライターとしては、
・競馬総合チャンネル(netkeiba.com)
・POGの達人
・JRAホームページ
・週刊プレイボーイ
・WEBハロン
などに寄稿している。


※ 本文で紹介している逸品については、取材時点のものです。 その後、値段改定やメニューが変わっている場合もございます。