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第50回 2012年9月20日 モエレトレジャー

 「愛馬ですもん。頑張っている姿はうれしいですよ」とカナイシスタッドの代表・金石守さん。11歳になった今も現役を続けるモエレトレジャーの生産者としても知られています。「通常は1歳のオータムセールが終わった頃からトレーニングを開始するものですが、うちの育成ではこの馬の世代から当歳の離乳後から試みてみたんです。モエレジーニアス(05函館2歳S・優勝)もそうでしたが、名馬になるための道を教えてくれた1頭ですね」(金石さん)

 モエレトレジャーはそもそも03年に川崎競馬場デビュー。04浦和記念GⅡや04しらさぎ賞、04戸塚記念と南関東の重賞レースを3勝。持ち前のスピードを武器に先行して押し切る競馬スタイルで、金子正彦騎手とのコンビでもお馴染みでした。

 06年5月から園田競馬場の名門・曾和直榮厩舎に仲間入りをし、園田のタイトル(08摂津盃と08姫山菊花賞)も奪取。10年9月に曾和調教師が定年を迎えたのと同時に同じ園田の荒山義則厩舎に転厩しました。この馬のすごさは、11歳になった今年もすでに2勝を挙げているところです。

 「発汗するほうがいいようで夏場は得意なんですよ。普段はおとなしい馬なんですが、輸送をすると馬運車の中で4頭が一緒にいるせいか年の割にギャンギャン鳴いて馬っけを出して元気になるんです。不思議なんですけど(笑)」と荒山調教師。川崎時代の関係者に改めて聞いてみると当時は馬っけがまったくなかった馬だったそうで……年齢を重ねておとなになってきたのか?気持ちが元気ということも若さの秘訣でしょうか(笑)。

 「曾和先生のところで担当していたスタッフが引き続きよく面倒をみてくれています。年齢もありますがもうひと花咲かせて欲しいっていう気持ちでやっていますよ」(荒山調教師)

 モエレトレジャーの99戦目は9月7日に園田競馬場で行われた摂津盃(11着・写真はパドックにて)で、この日は兵庫競馬にとって記念すべき初ナイターが行われた日でした。この馬にとって約6年5カ月ぶりのナイター競馬(06年4月大井競馬場のマイルグランプリ・6着以来)。

 若い頃にダートグレードレースを勝った実力馬が、ここまで長い間現役を続けて、今でもきちんと勝ち星を挙げているという姿に感動を覚えます。

 「生まれたときは超未熟児と言ってもいいくらいに小さい馬だったんですよ。競走馬としてこの世に生まれた以上、走ることができるうちは走らせてやりたいです。1年でも長く走る姿を見せて欲しいですね」(金石さん)

高橋華代子(たかはしかよこ)
元NHK山形放送局キャスター。
現在は南関東競馬を中心に活動中。
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