レースハイライト タイトル
dirt
2014年2月28日(金) 笠松競馬場 1400m

宿願達成の差し切り勝ち
今後に夢が広がる10歳馬

 昨年に続き、笠松競馬場での開催となったオッズパークグランプリ。この日の最終レース後にラブミーチャンの引退セレモニーが行われるということもあり、多くの来場者で賑わった。
 当日は2月にしては気温が上がったが、前日の雨の影響で馬場コンディションは第5レースまで不良。白い砂を使用しているダートコースは、スタンドから見る分にはどのくらい水を含んでいるのかわかりにくいが、吉井友彦騎手によると「不良馬場だと表面に水が浮いていますが、それがなくなって重馬場に変わると、時計がもっとも出やすくなります」とのこと。今年のオッズパークグランプリは、まさにそのとおりの結果となった。
 好スタートを決めたのは最内枠のクリスタルボーイと6番枠のキモンレッド。実績上位のナイキマドリードも先行争いに加わって、3頭が横並びの状態で1コーナーをカーブしていった。向正面に入ってもその3頭が後続を引っ張る展開だったが、3コーナー手前あたりでキモンレッドが脱落。内ラチ沿いを走るクリスタルボーイは変わらず先頭を守っていたが、常に同馬をマークする形でレースを進めていたナイキマドリードが徐々に差を詰めて、直線入口では押し切る態勢を作り上げた。
 しかし最終的にレースを制したのは、高知から参戦のエプソムアーロン。向正面では先行3頭の少し後ろという位置から、4コーナーでは3着に残ったクリスタルボーイを交わす勢いで進出。そして残り100メートルあたりでナイキマドリードに並び、ゴール地点では同馬に1馬身半の差をつけた。
 レース直後、エプソムアーロンを管理する雑賀正光調教師は「やっと川島(正行)先生に勝つことができました」と大感激。じつは、雑賀調教師はレース前に「今回は川島先生の馬に並べるところまで来ているかな……」と話していた。雑賀調教師は、NARグランプリ2011で最優秀勝利回数調教師賞を受賞したときに「夢は川島厩舎の馬に勝つこと」というコメントを残し、2012年度の表彰式でもその言葉を発していた。「他地区に遠征するようになって、馬造りに対する意識が変わった」という雑賀調教師がいちばん参考にし、いちばんの目標にしてきたのが川島正行調教師。その厩舎の大将格といえる馬をコースレコードで負かしたのだから、感無量となるのは当然だろう。
下原理騎手
装鞍所での雰囲気は、兵庫ゴールドトロフィーのときより気合が入っている感じでしたね。レースは出たなりで強いライバルを見ながら進めて行けました。820メートルのレース(園田FCスプリント)で差し切っている馬ですから、直線では絶対に脚を使ってくれると思っていました。
雑賀正光調教師
前走のあとは地元のレースをパスして、ここを目標にしてきました。今日はちょっとテンションが高かったですが、状態も元気もよかったですね。レースでは下原騎手が上手に乗ってくれました。兵庫に移籍した時期(昨夏から秋)に体が大きくなりましたし、10歳でも2つくらい年が若い感じがします。

 対して、2着となったナイキマドリード鞍上の川島正太郎騎手は「勝ったと思ったんですが……」と悔しそうな表情。それでも「馬の状態は2着だった昨年よりもよかったですし、まだまだ頑張ってくれると思います」と、改めて今後に期待を寄せた。そして3着に粘ったクリスタルボーイは「前走の高知ではボーっとしていましたが、今日は気合乗りが抜群でしたね」と、戸部尚実騎手。川西毅調教師も「小回りコースならどこでもこれくらい走れますよ。今日の3着は価値ある3着。黒船賞に選ばれたら行こうかな」とニヤリ。
 全国交流のレースに刺激を受けて、上を目指していこうという思いで邁進しているのは雑賀調教師だけではない。そういった気持ちをもつホースマンがたくさんいるのは、もちろんファンも大歓迎だ。


取材・文:浅野靖典
写真:国分智(いちかんぽ)