レースハイライト タイトル

2013年11月14日(木) 門別競馬場 2000m

最後方からのロングスパート
直線人気馬をとらえての完勝

 ホッカイドウ競馬の関係者が「一番勝ちたいレース」というのが、シーズンラストの道営記念。中央との交流ではなく、ファン投票上位馬も含めた真の“ホッカイドウ競馬ナンバー1”を決める伝統のレースだ。ファンもこの日に集合し、今年の思い出を語らい合う。門別競馬場には1,555名の入場があった。
 シーズン前半に重賞2勝を挙げたスーパーパワーや、引退した三冠馬クラキンコがいないとはいえ、一昨年の勝ち馬ショウリダバンザイをはじめ、前哨戦の瑞穂賞をレコードタイムで勝ったバルーン、上がり馬グッドグラッドやファン投票1位のデルマジュロウジンなど、シーズンを締めくくる大一番にふさわしい馬たちがそろった。シャアが取り消し、15頭での争いとなった。
 氷点下まで気温が下がった週明けに比べると寒さはやわらいだものの、夜になると冷え込み、きりりと締まった空気が北海道の冬の到来を告げる。レース前には、北海道吹奏楽コンクールで金賞を受賞した静内高校吹奏楽部が『見上げてごらん夜の星を』を演奏。グランシャリオ(北斗七星)ナイターにちなんだ静かなメロディーが流れると、にぎわいを見せた競馬場に静寂が訪れ、今日で今シーズンの開催が終わる寂しさを感じさせる。
 同吹奏楽部のファンファーレで道営記念がスタート。予想通りケイアイライジンが逃げ、ヒシコモンズ、ニシノファイターと続き、バルーンはその後ろ。レオニダスは離れた最後方を追走した。
 4コーナー手前からバルーンが仕掛け、ショウリダバンザイも続く。4コーナーで先頭に立ったのはバルーンだったが、残り200メートルでこれをとらえた3番人気レオニダスがそのまま抜け出した。2着にはこのレースを最後に引退を表明しているショウリダバンザイが入り、1番人気のバルーンは3着だった。
 勝ったレオニダスは、スタート後は隣の馬とぶつかるアクシデントもあって最後方からとなったが、ごちゃついた内を避けて大外を回り、それでも2馬身差をつけて勝つという強さが際立った。普段から調教をつけている服部茂史騎手によると、「やんちゃ坊主」だという。畑中厩務員が「よかった、よかった」と顔をくしゃくしゃにして関係者と握手している姿が印象的だった。服部騎手と田中淳司調教師のコンビは、昨年のモエレビクトリーに続く2年連続での勝利。3歳馬による道営記念制覇は、2003年のビックネイチャー以来のこととなった。
 レース後は、恒例となったファンと騎手の交流会を開催。競馬場近くのケーキ店『パサパ』のケーキが振る舞われ、写真撮影やサイン会で盛り上がった。服部騎手は毎年最後まで残り、ファンにサインをし続けている。勝利インタビューで、「集まってくれたファンにいいパフォーマンスを見せられてよかった」とコメントしていたことからも、ファンを喜ばせようとする思いが、勝利を呼び込むのかもしれないと感じた。
 ホッカイドウ競馬の開催80日間のうち、台風や濃霧などによる中止があったにもかかわらず、前年比116.8%、計画比109.9%の売り上げ増。97勝で初のリーディングに輝いた桑村真明騎手をはじめ、80勝で3位の岩橋勇二騎手や、2人の新人騎手、今春福山競馬から移籍した松井伸也騎手など、今年は若手騎手の活躍が目立った。これからは、6カ月半に凝縮されたホッカイドウ競馬の熱いレースを熟成させる期間の到来だ。
服部茂史騎手
スタート後のアクシデントに一瞬ひやっとしたけれど、走りも良かったので、この馬のペースで行くしかないと開き直りました。長くいい脚があるとわかっているし、反応も良かったので1000メートル前から追い出しました。内がごちゃついていたので、邪魔されないように、馬の力を信じて乗りました。
田中淳司調教師
騎手とは、中団から行く予定で話をしていましたが、スタート後、横の馬とぶつかったようで、ブレーキがかかってしまいました。怪我をしたかと思いましたが、それで勝つんだから、強い。馬もできていたし、自信はそれなりにありました。このあとは南関東に移籍予定です。


取材・文:斎藤友香
写真:中地広大(いちかんぽ)、NAR