ダービーウイーク タイトル

 競走馬にとって最高の名誉、それはダービー馬の称号。

 全国各地の6競馬場(佐賀・盛岡・門別・大井・園田・名古屋)で行われる“ダービー”6競走を約1週間で短期集中施行する夢のような6日間、それが「ダービーウイーク(Derby Week)」(創設2006年)です。

 ダービーウイーク各レースで勝利を掴んだ各地の世代ナンバーワンホースは、全国3歳馬のダート頂上決戦「ジャパンダートダービーJpnⅠ(大井・7/10)」出走に向け、大きなアドバンテージが与えられます(※)。
※ 東京ダービーの1・2着馬にはジャパンダートダービー(JDD)への優先出走権が与えられ、その他5競走は指定競走(注)として認定されている。
(注) 指定競走とは、その1着馬が根幹競走の選定委員会において、同一地区内の他の馬に優先して選定される競走をいう。なお、他の優先出走権の状況や指定馬の数によって適用されない場合がある。
 前年秋の「未来優駿」シリーズを皮切りに、一世代でしのぎを削る熱き戦いは、集大成への大きな山場を迎え、興奮はクライマックスへ。馬も人も本気にさせるダービーウイークを今年もよろしく!

2013年ダービーウイークの総括はこちらです
※下の“タブ”をクリックするとご覧になりたいレースの記事に切り替わります。

地元重賞では負け知らず
牡馬を一蹴しダービー制覇

 昨年は3連単が100万円を超える波乱となった東海ダービー。一昨年も3連単が17万円の配当で、今年も伏兵の台頭があるのか、というところが予想のポイントのひとつといえた。そこに輪をかけるかのように、出走12頭のうち9頭が前走で2着以内。金沢からの遠征馬4頭は人気の上では劣勢だったが、それでもやはり上位拮抗の顔ぶれといえた。そのなかで人気を集めたのは、ウォータープライド、エストレーモ、ピッチシフター、ゴールドブラザー。この4頭が一桁の単勝オッズを示していた。
 この日の名古屋競馬場は、午後1時頃の段階で気温が30度近くまで上昇。しかしその夏空は、第9レースが始まる頃に一気に変わった。風向きが急に北東に変わって黒い雲が広がり、半袖では寒いと感じるほどに。さらに小粒の雨が降り始め、東海ダービーの出走馬がパドックを周回しているときには本降りに変わった。しかしそれは通り雨。レースのときにほとんど止んでいたのは幸いだった。
 その程度の雨なら馬場コンディションは良のまま。ただ、ゴールドブラザーが先手を取って、ウォータープライドが2番手をキープした流れは、かなりのスローペースだったようだ。そうなると中団より後ろに位置を取った騎手は、「動くに動けない」ということになりがち。しかし1人だけ、ホウライジェントル鞍上の柿原翔騎手がその流れを打破しにかかった。最初のホームストレッチで位置取りを上げ、1コーナーでは先頭に。向正面に入ると、ゴールドブラザーが「外から来られて馬がひるんだ」(佐藤友則騎手)とのことで3番手に下がり、ウォータープライドは先頭の直後につける手に出た。後方からはエストレーモ、ピッチシフターなどが追い上げていくが、前半の流れが遅かった分、前の流れは止まらない。
 その結果、2周目の3コーナーからはさながら2頭のマッチレース。その争いは長く続いたが、ゴール手前でウォータープライドがホウライジェントルを競り落として勝利。3着にはゴールドブラザーが粘り込み、3連覇を狙った川西毅厩舎が送り出したピッチシフターは4着、エストレーモは5着だった。
 これでウォータープライドは名古屋の重賞での不敗記録を継続。グランダム・ジャパン3歳シーズンでは関東オークスJpnIIを前にして第2位のポイント数を所持しているが、その一戦を回避して、東海ダービーを選んだ判断は成功となった。
 そして管理する塚田隆男調教師は、来場していた馬主さんを見送ったところで肩の荷が下りたというような表情をみせた。
 「実は、ウォータープライドの1つ下の妹が、先週、厩舎で死んでしまいまして。本当なら、明日の能力試験を受けるはずだったんです。それがあったから、勝ってくれて本当によかった……」
 ダービー勝利は、現役生活33年目の兒島真二騎手と同様に、塚田調教師も騎手時代を含めて初めて。しかしそれ以上に、塚田調教師がこの馬にかける思いには強いものがあったのだろう。
兒島真二騎手
今回も調教でいい動きでしたし、パドックで乗ったときも、いつもと変わらない雰囲気だなと感じました。道中はペースが遅かったこともあって、途中からホウライジェントルが先頭に立つ展開になりましたが、ついて行ったほうがいいと判断して、2番手でレースを進めていきました。
塚田隆男調教師
前走から中2週でしたが、もう体重は心配しなくて大丈夫ですね。今回はゲートがずいぶん良くて、前に行きすぎじゃないかと思ったくらいです。次走は笠松のクイーンカップ(6月25日)を考えています。名古屋では強いんですが、笠松ではまだ勝っていませんからね。古馬との対戦はその後で検討します。


取材・文:浅野靖典
写真:川村章子(いちかんぽ)