ダービーウイーク タイトル

 競走馬にとって最高の名誉、それはダービー馬の称号。

 全国各地の6競馬場(佐賀・盛岡・門別・大井・園田・名古屋)で行われる“ダービー”6競走を約1週間で短期集中施行する夢のような6日間、それが「ダービーウイーク(Derby Week)」(創設2006年)です。

 ダービーウイーク各レースで勝利を掴んだ各地の世代ナンバーワンホースは、全国3歳馬のダート頂上決戦「ジャパンダートダービーJpnⅠ(大井・7/9)」出走に向け、大きなアドバンテージが与えられます(※)。
※ 東京ダービーの1・2着馬にはジャパンダートダービー(JDD)への優先出走権が与えられ、その他5競走は指定競走(注)として認定されている。
(注) 指定競走とは、その1着馬が根幹競走の選定委員会において、同一地区内の他の馬に優先して選定される競走をいう。なお、他の優先出走権の状況や指定馬の数によって適用されない場合がある。
 前年秋の「未来優駿」シリーズを皮切りに、一世代でしのぎを削る熱き戦いは、集大成への大きな山場を迎え、興奮はクライマックスへ。今年もダービーウイークから競馬の未来が生まれる。

2014年ダービーウイークの総括はこちらです
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早め先頭から押し切って勝利
今後への期待が広がる5馬身差

 前日に発表された兵庫ダービー当日の天気予報は、朝から夜まで雨。しかも集中豪雨に注意という文字も解説文のなかに入っていた。しかし、当日の園田競馬場は午前中が曇り空で、昼過ぎからは晴れ間も覗く競馬日和。早朝には強い雨が降ったそうだが、それは一瞬のことだったようだ。
 だが、風は強かった。でもそのおかげで馬場は乾き、14時10分発走の第7レースからは良馬場に。低気圧が運んできた空気は肌寒く感じるほどだったが、雨のダービーとならなかったことは、観戦する側にとっては幸いだった。
 さて、今年の兵庫ダービー。昨年2歳時から年明けにかけて、この世代の兵庫の重賞戦線を引っ張ってきたのは“トーコー軍団”のガイア、ポセイドン、ニーケだったが、その3頭とも兵庫3歳三冠の第一弾、菊水賞には出走せず。そこで1着だったニホンカイセーラは今回の兵庫ダービーで4番人気、2着のクリノエビスジンは6番人気と、ファンが菊水賞組に与えた評価はいまひとつとなっていた。人気が集中したのはトーコーの2頭と、デビューから4戦4勝でこのレースを迎えたエイシンナカヤマ。しかしその3頭には不安もあった。
 トーコーガイアは5月17日に予定していた復帰戦が頭数不足で不成立になり、1週スライドしてひと叩きすることに。エイシンナカヤマも不成立となったレースに出走予定だった上に、中間は脚元に不安が出たとのこと。トーコーポセイドンは大晦日の園田ジュニアカップからのぶっつけ本番。陣営としては予定通りのスケジュールとはいえ、大型馬だけにいきなりという点での心配があった。
 それでもファンの注目はこの3頭。ゲートが開くとトーコーポセイドンが勢いよく先手を奪い、トーコーガイアは2番手をマーク。エイシンナカヤマは過去のレースと同じように中団あたりに陣取った。
 先頭と2番手は同厩舎、同馬主ではあるが、勝負となれば話は別。トーコーポセイドンは、園田ジュニアカップでトーコーガイアを完封したときと同じように、1周目のゴール前でもペースを緩めず押し切りを狙い、トーコーガイアもそれに対応して2周目の向正面でトーコーポセイドンを負かしに行った。
 その2頭の戦いは4コーナー手前で決着がつき、トーコーガイアが後続に5馬身差をつけての勝利。2頭の後ろとは差があったが、クリノエビスジンがトーコーポセイドンをとらえて2着。ニホンカイセーラは3番手追走から流れ込む形で4着。エイシンナカヤマは中団のまま8着という結果だった。
 結果的には、2歳時から「トーコー軍団の一番馬」と言われてきたトーコーガイアが順当勝ちをおさめたということになるが、吉行龍穂調教師はトーコーポセイドンについて「やっと気合が乗ってきた感じですから、これから強くなりますよ」と、将来性に期待を寄せた。エイシンナカヤマも川原正一騎手は「まだ体質が弱くてビシビシやれない。夏を越したら期待できますよ」と、この結果には悲観していなかった。
 現在の兵庫の上位クラスはJRAや他地区からの移籍馬が多くを占めているが、トーコーガイアを筆頭とする生え抜きの馬たちが、オオエライジンに続くような存在になってくれることを期待したいものだ。
木村健騎手
去年の園田ジュニアカップが悔しかったので、それを晴らしたいという思いがありました。休み明けを一度叩いて、その後の調教で気合が入ってくれました。今日は自分のペースで走れて、それで勝てたのでとてもうれしく思います。能力がある馬なので、これから先、大きいところを狙っていきたいです。
吉行龍穂調教師
ホッとしました。強い気持ちで臨みましたが、それでもこの5カ月は長かったです。予定の復帰戦は不成立でしたが、1週後の前走が追い切り代わりになりました。次はジャパンダートダービーに行きたいですね。来週(関東オークス)のトーコーニーケもそうですが、外を向いていきたいと思います。



取材・文:浅野靖典
写真:桂伸也(いちかんぽ)