断然人気馬を突き放しての快勝
重賞初制覇で今後の視界も良好

　平成元年、笠松のフエートノーザンの勝利で始まったブリーダーズゴールドカップは、ダートグレード制定後はGⅡ、JpnⅡとして実施されてきたが、今年から牝馬限定、そして格付けもJpnⅢに変更されることになった。その効果はてきめんで、昨年が8頭、一昨年が6頭だった出走馬は、14頭に増加。とはいえJRA所属馬に人気が集まるのは以前と同じで、なかでも今年の春にエンプレス杯JpnⅡとマリーンカップJpnⅢを圧勝したワイルドフラッパーが注目の的となった。
　その単勝オッズは最終的に1.1倍まで集中。2番人気に推されたサンビスタとの馬連複は1.3倍、ワイルドフラッパーからサンビスタへの馬連単は1.6倍となっていた。ダートグレードレースで「大差」と「7馬身差」で勝ったことがある馬をファンが絶対視するのは当然なのだが、同馬はおよそ2カ月半ぶりの実戦。パドックで見せる馬体には威圧感があったが、前走よりプラス14キロという体重は気にかかるところでもあった。
　対するサンビスタは、エンプレス杯JpnⅡで3着に入ったとはいえ、ワイルドフラッパーからは2秒2もちぎられた馬。それでもリズムよくパドックの外寄りを歩く姿には迫力があり、目下の調子のよさを窺わせていた。
　当日の門別競馬場は入場人員が多く、ホッカイドウ競馬における最高賞金額を誇るレースを迎えるにふさわしい賑わい。静内高校吹奏楽部の生演奏によるファンファーレの余韻が消えていくのと入れ替わりに開いたゲートからは、まずワイルドフラッパーが先手を主張していった。
　続いてマーチャンテイマー、リアライズキボンヌ、サンビスタとJRA勢が続き、少し間隔があいたその後ろもJRAのケイティバローズ。逃げたワイルドフラッパー鞍上の福永祐一騎手が「いいのかなと思うくらい、ペースが遅かった」という流れではあったが、後続の動きはほとんどないまま3コーナーにさしかかった。
　ここからは後続のJRA勢も勝負に出た。なかでもサンビスタの手応えが抜群で、勝負どころからはインを狙って差し切り勝ち。この日はインコースを通った馬がいまひとつだったのだが、それでも最後に独走となる走りは圧巻だった。
　断然人気を集めたワイルドフラッパーは、ゴール地点でマーチャンテイマーにクビ差まで迫られたが2着を確保。松田國英調教師は「体のラインはできているんですが、息遣いがまだ重い感じがありましたね」と、休養明けの部分に敗因を求めた。
　初の重賞勝利をおさめたサンビスタは、これで賞金の加算に成功。レース終了後はそのまま故郷のグランド牧場に移動するとのことだが、JBCレディスクラシックJpnⅠを頂点とするダート牝馬路線への視界が一気に広がったことになる。
　表彰式後に角居勝彦調教師に話を伺うと「函館競馬場にいるスタッフに任せていたので、サンビスタを見たのは久しぶり。そうしたらすごくいいデキで」と、とてもうれしそうに振り返った。インタビューを終えたあとの去り際にも「いやあ、本当にいいデキだったよねえ」と目を輝かせて一言。それは、厩舎スタッフの仕事ぶりにも満足しているということが伝わってくる表情だった。
　

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