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2016年1月27日(水) 川崎競馬場2100m

人気2頭の一騎打ちはアタマ差の決着
ついにジーワン最多勝記録を更新

 65回目を迎えた伝統の一戦、川崎記念JpnⅠ。今年から地方で行われるダートグレードレースの一部で中央馬の出走枠が拡大され、この川崎記念JpnⅠは従来の5頭から6頭に。ホッコータルマエやサウンドトゥルー、カゼノコ、マイネルバイカ、アムールブリエ、パッションダンスと、中央全馬が重賞ウイナーという豪華メンバーが集結した。
 そんな中、幸英明騎手が手綱を取った王者ホッコータルマエの意地とプライドが勝ったレースだったと言えるだろう。ダートグレードになってから初の川崎記念JpnⅠ・3連覇。そしてヴァーミリアン、エスポワールシチーに並んでいたGⅠ/JpnⅠ勝利数の記録を更新する10勝目とし、大偉業を達成したのだ。
 レースは、サミットストーンがハナを主張し、マイネルバイカ、初ダートのパッションダンスが続き、ホッコータルマエは単独4番手。「前の方で競馬をしようと思っていて、サウンドトゥルーには最近負けていたので気にしながら乗りました」と幸騎手。サウンドトゥルーはその後ろの内目を追走していき、非常に縦長の展開。
 向正面半ばからサウンドトゥルーが内からホッコータルマエに並びかけようとすると、ホッコータルマエもすかさず進出していった。「(サウンドトゥルーが)いつもより速めに動いてきたし、すごくいい脚を使う馬なので、遅れないように一緒に動いていきました」(幸騎手)。
 最後の直線に入ると、ホッコータルマエは逃げ粘っていたサミットストーンやマイネルバイカを外から一気に交わして先頭に躍り出ると、さらにその外からサウンドトゥルーも一完歩ごとに詰め寄っていき、人気2頭の一騎打ち。
 「手応えは十分で最後までしっかり伸びてくれていましたが、サウンドトゥルーもすごくしぶとい脚を使っていました。一瞬交わされるかなと思うくらいの勢いだったんですが、タルマエも最後まで頑張ってくれましたね。本当にすごい馬です!」(幸騎手)。
 ホッコータルマエがサウンドトゥルーをアタマ差で振り切ったところがゴール。勝ちタイムは2分14秒1(良)。3着には中団前の位置から脚を伸ばしてきたアムールブリエ。地方馬最先着は的場文男騎手が騎乗した元中央のケイアイレオーネで6着だった。
 レース後、サウンドトゥルーの大野拓弥騎手は、「思い通りの競馬ができて交わせそうな手応えでしたが、タルマエがしぶとかったです」と振り返っていたが、ホッコータルマエとサウンドトゥルーが魅せた追い比べは、川崎記念史に刻まれるような名勝負となった。
 ホッコータルマエは昨年6月の帝王賞JpnⅠ優勝以降、GⅠ/JpnⅠ・10勝目の達成を待たれていたが、ついにその瞬間がやって来た。ホッコータルマエと幸騎手が検量前に引き上げてくると、多くの関係者が喜びの表情を見せた。
 「なかなか勝つことができなくて馬に迷惑をかけていたので、自分の中でもモヤモヤしていました。いつもはしないんですが、今日はテンションが上がってウイニングランをしてきました。今は本当にうれしい気持ちとホッとした気持ちです。これからもどんどん勝ってくれると思うので、また気を引き締めたいです」と幸騎手は振り返った。
 西浦勝一調教師も、「やっとここまでこれたというのが本音ですね。昨年秋から10勝という数字が頭から離れなくて、何とか早く達成させてあげたいという気持ちでした。力はあるのになかなか勝ち切れなくて、もどかしいレースが続いていたので今日はよかったです。本当にこの馬には頭が下がる思いで一杯です」と、それぞれが胸をなで下ろしていた。
幸英明騎手
ずっといい状態を保ってくれています。川崎記念ではいつもそれほど離して勝つことはないんですが、本当にしぶとく勝ってくれますね。この馬の強さは、弱点がないと言うか、すべてにおいて高いレベルで走ってくれますし、丈夫なところです。今年もドバイに行けたら、いい結果を残したいですね。
西浦勝一調教師
幸君が馬を信じて、焦ることもなく、ちょうどいいタイミングでレースを進めてくれたので安心して見ていました。最後は我慢できると思いながら応援していました。競馬場に来られた方、テレビで応援してくださった方、ファンの声援のお蔭だと思っています。またこれからも記録を伸ばしていきたいです。

 ホッコータルマエは今年もドバイワールドカップに向けて調整をしていくという。国内最多GⅠ/JpnⅠ・10勝のタイトルを引っ下げて、3度目の挑戦はどんなパフォーマンスで走り抜けるのか。さらなる偉業達成が待ち望まれる。

取材・文:高橋華代子
写真:いちかんぽ(築田純、宮原政典)