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2016年2月21日(日) JRA東京競馬場ダート1600m

直線抜け出し人気馬の末脚を封じる
デビューから9カ月での古馬GⅠ制覇

 残念ながら今年は地方馬の参戦がなく、3年連続でドバイ遠征予定のホッコータルマエや、東京大賞典GⅠを制したサウンドトゥルーも不在。人気を集めたのは、昨年のジャパンダートダービーJpnⅠを制したノンコノユメに、モーニンという若い4歳世代。また昨年のJBCレディスクラシックJpnⅠを制したホワイトフーガ、同じくJBCスプリントJpnⅠを制したコーリンベリーという牝馬も参戦。昨年のチャンピオンズカップGⅠをサンビスタが制したように、ダートでも牝馬が強いという流れが続くのかどうか。そして何より注目となったのは、昨年のJRA賞・最優秀ダートホースに輝いたコパノリッキーによる史上初のJRA同一GⅠ3連覇なるかどうか。前年のJBCの覇者3頭が直接対決ということでも興味深い一戦となった。
 そして結果は、人気の4歳馬によるワンツー。3着にも5歳馬が入り、若い新興勢力の勢いがまさった。
 昨年は大きく出遅れたコーリンベリーだったが、今回は互角のスタートから先頭に立つと、モンドクラッセ、スーサンジョイと続いた。3番枠からのスタートだったコパノリッキーもスタート直後は内の3番手につけたが、外から勢いをつけて行く馬が何頭かいたため7番手あたりまで位置取りを下げることになった。モーニンはスタート後こそ中団だったが、外目から徐々に位置取りを上げてきた。ノンコノユメは16頭立ての後方から4番手。前日の雨で湿った馬場を考慮してか、普段より前目の位置取りとなった。
 直線を向いてコーリンベリーが後退すると、残り200メートルを切って馬群から抜け出したのがモーニン。そして大外からノンコノユメが自慢の末脚で迫ってきた。しかしモーニンがそのまま振り切り、ノンコノユメに1馬身1/4差をつけて勝利。脚抜きのいい重馬場だったこともあり、勝ちタイムの1分34秒0は従来の記録をコンマ1秒縮めるコースレコード。ノンコノユメと同じように中団からの末脚が際立ったアスカノロマンがアタマ差3着。マイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠ連覇のベストウォーリアがさらにアタマ差で4着。3連覇のかかったコパノリッキーは、あまり得意ではない馬群に包まれてのレースとなって、直線も伸びが見られず7着だった。
 単勝2.4倍の1番人気に支持されたノンコノユメは、4コーナーで中団よりややうしろという位置取りから上り3ハロン34秒7で追い込んだ。一方のモーニンは4コーナーで前3頭横一線の直後4番手から上り3ハロン35秒2の脚を使って抜け出した。これではさすがのノンコノユメでも届かなかったのは仕方ない。
 モーニンは昨年3歳時、5月の未勝利戦から準オープンまで4連勝。重賞初挑戦となった武蔵野ステークスGⅢこそノンコノユメの3着に敗れたものの、年明け初戦の根岸ステークスGⅢを制してここに臨んだ。キャリア7戦、デビューからわずか9カ月で古馬のGⅠ制覇という快挙となった。
 モーニンに初騎乗でGⅠ制覇に導いたミルコ・デムーロ騎手は、「先生(石坂正調教師)から『スタートは良くないけど、ダッシュ力はあるから問題ない』と聞いていました。先頭に立った時に少し物見をして、ノンコノユメが来ると思ったけど、最後までよく伸びてくれた。フェブラリーステークスには3回乗って、イーグルカフェで3着(03年)、フリオーソで2着(11年)、そしてモーニンで1着」と喜びを語った。
M.デムーロ騎手
石坂正調教師

 石坂正調教師は、「今までのモーニンの競馬のイメージとは違ったんですが、最後までしっかり伸びてくれて、新たな一面を見ることができました。短いところがいいと思っていたんですが、この距離もだいじょうぶということがわかったので、今後は選択肢が広がります」と話していた。
 このあと、かしわ記念からのダートGⅠ/JpnⅠ戦線では、このまま一気に世代交代が進むのか。それともコパノリッキーや、今回不在だったホッコータルマエら既存勢力が巻き返すのか。ダートの頂点を争う戦いは厚みを増していきそうだ。

取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(国分智、岡田友貴)