2015年11月12日(木) 門別競馬場2000m

馬群を割って抜け出し4馬身差圧勝
厩舎初のリーディングで締め括る

 今年度のホッカイドウ競馬リーディングトレーナーに輝いたのは、開業9年目の田中淳司調教師(102勝)。過去には2歳重賞をハッピースプリントなどの名馬で多数制し、北海道の関係者が目標とする道営記念も2勝。毎年リーディング上位に名を連ねる新進気鋭の調教師だが、勝利数1位は初の栄冠だ。
 シーズンのラストを飾る道営記念を制したのは、その田中淳司厩舎のグランプリブラッド。父ディープインパクト、母シルクプリマドンナという良血馬だ。厩舎に所属する服部茂史騎手はゴール後、ガッツポーズとウイニングランで喜びを爆発させた。「先生にリーディングを獲らせたかった。その上での道営記念制覇、感極まりました」。スタッフと握手しながら、今にも泣きそうなくしゃくしゃの笑顔を見せた。
 今年のホッカイドウ競馬の古馬戦線は、実力伯仲の好レースが多かった。その中の上位馬のほとんどが道営記念に参戦。連覇を狙うウルトラカイザー、前哨戦の瑞穂賞を快勝したグランプリブラッド、今年の3歳二冠馬オヤコダカ、グランダム・ジャパン2015古馬シーズンで優勝したサンバビーンなど12頭が出走。静内高校吹奏楽部によるファンファーレで、そのクライマックスを迎えた。
 揃ったスタートから、ビービーレジェンド、ヘブンズゲートが先行し、向正面ではウルトラカイザーがかかり気味に続く。グランプリブラッドは後方3番手を追走した。
 3コーナー過ぎからレースが動き、外からサンバビーン、内からキタノイットウセイが上がっていった。直線を向いてウルトラカイザーの内に並んだグランプリブラッドが、ラスト2ハロンでビービーレジェンドをとらえ、一気に突き放しての勝利となった。
 混戦が予想されていたが、結果4馬身差の圧勝。かかる癖があるため「外枠が心配だった」(田中調教師)というが、うまく馬の後ろで我慢させて脚をためた。
 2着はウルトラカイザー。3着には3コーナー過ぎまで最後方だった11番人気のビッグバンドジャズで、この日が門別初参戦の高知・別府真衣騎手が大仕事をやってのけた。オヤコダカは7着。2日前の雨と寒さの影響で速いタイムでの決着となり、人馬ともに泥だらけになって戻ってきた姿が印象的だった。
 レース後は、スタンド内で恒例の騎手とファンとの交流会。6年ぶりに北海道リーディングとなった五十嵐冬樹騎手(106勝)をはじめとする騎手全員が写真撮影やサインに応じた。
 今年のホッカイドウ競馬の発売額は計画対比113.5%、前年対比107.6%といずれも上回る結果。内回りコースを新設し、1500メートル、1600メートルのレースが可能になるなど年々新しい挑戦が続いている。服部騎手の「これから遠征馬も控えていますので、道営馬を応援してください。また、来年熱い戦いをするために冬場はみんなで一生懸命馬作りをします」というインタビューでの言葉に、関係者が一丸となって競馬を盛り上げようとする思いが伝わってきた。これからも、レースのみならず、馬を育てる馬産地競馬の戦いが続く。
服部茂史騎手
外枠でしたが、位置よりは折り合いに気をつけていました。3~4コーナーでウルトラカイザーの横のスペースに入った。最大の目標は先生のリーディング。獲ってくれて、最高のウイニングランでした。この馬の良さは、溜めた分だけ弾けてくれるところです。馬、スタッフ、先生のお陰です。
田中淳司調教師
リーディングよりは、強い馬で大きなレースを勝つことを目標としていました。一番獲りたいレースなので、馬や関係者、スタッフに感謝しています。この終わり方で最高ですね。今後はオーナーと相談して、馬の状態をみながら、総の国オープン(船橋)か名古屋グランプリへの遠征を考えています。

門別初参戦の高知・別府真衣騎手が大仕事をやってのけた

取材・文:小久保友香
写真:中地広大(いちかんぽ)