dirt
2015年12月6日(日) JRA中京競馬場ダート1800m

中団追走から直線で突き抜ける
牝馬によるJRAダートGⅠ初制覇

 今回のチャンピオンズカップGIには、地方からは大井のハッピースプリントが出走に前向きだった。しかし登録段階の賞金順で補欠2番め。出走できるかどうか微妙だったこともあり、4日前に行われた浦和記念JpnIIに出走。格の違いを見せつけるレースぶりで勝利を収めた。
 地方所属馬の出走がなかったチャンピオンズカップGⅠだが、この年、ここまでに地方で行われた中距離のJpnⅠ勝ち馬が顔を揃えた。川崎記念と帝王賞を制したホッコータルマエ、ジャパンダートダービーのノンコノユメ、そしてJBCクラシックのコパノリッキー。最終的にこの3頭が単勝3倍台で三つ巴の人気となった。ほかに、かしわ記念で9歳にしてJpnⅠ制覇となったワンダーアキュート、JBCスプリントのコーリンベリーも出走した。
 しかし勝ったのは、JBCレディスクラシックJpnⅠで断然人気に支持されながら2着に敗れていたサンビスタだった。
 逃げるかとも思われたコーリンベリーが無理には行かず、好スタートを切って先頭に立ったコパノリッキーが自分の形に持ち込んだかに思われた。しかし1コーナーに入るところで外からクリノスターオー、ガンピットが競りかけてきた。クリノスターオーには向正面まで執拗にからまれ、コパノリッキーにはこれが想定外に厳しい競馬となった。
 レース後、武豊騎手は、「ずっとからまれて引くわけにもいかず、ムダに脚を使わされました。からんできた馬は15着、16着ですよね」と不満そうに話していた。
 直線を向いても先頭はコパノリッキーだったが、ホッコータルマエに早めに来られたことでさらに苦しくなった。
 ところがそのホッコータルマエにしても仕掛けのタイミングは早く、残り100メートルで突き抜けたのが、先行勢のうしろにつけていたサンビスタだった。
 縦長の後方を追走していたノンコノユメがラチ沿いから鋭く追い込んで1馬身半差の2着。やはり後方に位置していたサウンドトゥルーが外から迫ってクビ差3着。同じように直線伸びたロワジャルダンが4着で、ホッコータルマエは5着、コパノリッキーは7着だった。
 2、3着馬はもともと末脚勝負で力を発揮する馬だが、それにしても4コーナーでほとんど最後方という位置からの追い込みだったことからも、いかに前で競り合った馬たちの流れが厳しかったかがわかる。そしてその先行馬たちを前に見て、直線で抜け出したサンビスタのレースぶりは見事だった。
 サンビスタに初騎乗だったミルコ・デムーロ騎手は、「ダートのジーワンも、牝馬でジーワンも、今まで勝ってなかったので、うれしいです」と喜びを語った。
 昨年のJBCレディスクラシックでJpnⅠ初制覇を果たしていたサンビスタだが、その後は、チャンピオンズカップGⅠ(4着)、フェブラリーステークスGⅠ(7着)、かしわ記念JpnⅠ(5着)と、牡馬の厚い壁に跳ね返されてきた。角居勝彦調教師といえば、牝馬ながら日本ダービーをはじめ、安田記念、天皇賞・秋などいくつもの牡馬相手のGⅠを制したウオッカが思い出されるが、今回このサンビスタでは牝馬によるJRAのダートGⅠ初制覇という快挙を達成することとなった。
 「年齢的にも上積みがあるのかどうか不安を感じていましたし、ダート(のGⅠ)では牝馬は通用しないのではないかと思っていましたが、ほんとにミルコがうまく乗ってくれました。来春、お母さんになるまで、もう1、2戦できるのかなと思っています」と角居調教師。
 今年、ここまでにダートのGⅠ/JpnⅠで2勝以上挙げているのは、フェブラリーステークスとJBCクラシックを制したコパノリッキー、それに川崎記念と帝王賞のホッコータルマエと、昨年来の2強が一歩リードしている状況。サンビスタ出走の可能性も含め、年末の東京大賞典GⅠが今年のダートチャンピオン決定戦となりそうだ。

M.デムーロ騎手
角居勝彦調教師


取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(岡田友貴、国分智)