各地で行われる2歳馬による重賞競走のレースハイライトをピックアップしてお届け。

第15回 イノセントカップ

9/17(木) 門別 1200m  リンダリンダ Movie競走成績

未来優駿へつながるスプリント重賞「イノセントカップ」は、
フレンチデピュティ産駒のリンダリンダが2馬身差快勝!

 約1ヶ月後に迫った未来優駿シリーズ「サッポロクラシックカップ」と同じ、門別1200mが舞台となる「イノセントカップ」。昨年は、最低人気のコールサインゼロがこのレースを制し、1ヶ月後に未来優駿のタイトルも獲得。また、一昨年の覇者ニシケンモノノフは、2ヶ月後に「兵庫ジュニアグランプリ(JpnⅡ)」を制してダートグレードホルダーとなっている。その他にも、3年前の優勝馬ストーミングスターはJRAへ移籍したのちに「ニュージーランドトロフィー(GⅡ)」で僅差の3着とし、4年前の優勝馬ゴールドメダルは南関東へ移籍して浦和の3歳重賞「ゴールドカップ」を制するなど、若駒たちが未来へ羽ばたく大きなステップとなっているのがこの「イノセントカップ」だ。

 今年は力の拮抗した快速馬9頭がエントリーし、競馬新聞の印も割れ加減。上位4頭が10倍を切るオッズとなったが、最終的に単勝2.2倍の1番人気に推されたのは、夏にJRAの北海道シリーズ「函館2歳ステークス(GⅢ)」と「クローバー賞」へ遠征し、芝のレースを経験してきたリンダリンダ(牝、北海道・角川秀樹厩舎、父フレンチデピュティ)だった。芝では結果が出なかったものの、デビュー3戦目にのちの栄冠賞馬タイニーダンサーと同3着馬プレイザゲームを完封している能力が評価され、久々の地元戦ながら最有力候補に目されていた。

 単勝2.9倍と僅差の2番人気は、ここまで4戦2勝、2着2回と連対を外していないナイスヴィグラス(牡、北海道・田中淳司厩舎、父サウスヴィグラス)。前走の「スマートファルコン賞」で大きく出遅れながら、直線だけで全馬をごぼう抜きした末脚は、ファンに強烈なインパクトを残していた。

 少し離れた単勝6.0倍に、その「スマートファルコン賞」で僅差の3着だったエイシンキロオル(牡、北海道・松本隆宏厩舎、父マンハッタンカフェ)。この馬も夏にはJRA札幌の「クローバー賞」へ挑戦し、芝のレースを経験してきている。

 そして単勝7.9倍の4番人気には、ここまで5戦して未勝利を1勝したのみ、まだJRA認定レース勝ちのないネスター(牡、北海道・小野望厩舎、父シニスターミニスター)が推された。もともと素質を高く評価されていた期待馬だが、このメンバー相手に得意の先行力をどこまで活かせるかがポイントとなる。

 以下、「スマートファルコン賞」僅差の2着馬フィランソロフィー(牡、父スクリーンヒーロー)が単勝15.2倍、前走の「ヤングチャレンジC」でウッディタイガーの2着としたシュネルバレイ(牡、父サウスヴィグラス)が単勝16.8倍でつづいた。

 9月中旬の門別グランシャリオナイターは、メインレースが近づくに連れてひんやりとした空気を感じるようになる。それはイコール、2歳馬たちにとっての大舞台が間近に迫ってきたことを意味し、競馬場全体が夏の開放的な雰囲気とは違うピリッとした緊張感を醸し出し始める。

 そんな中で「第15回イノセントカップ」のゲートが開き、まずは外枠から好スタートを切ったネスターがポンと飛び出した。そのハナを叩くように、ここが3戦目とキャリアの浅いシーズアウーマン(牡、北海道・角川秀樹厩舎、父ネオユニヴァース)が押して先頭に立つ。外からシュネルバレイ、内からリンダリンダも差がなくつづき、ナイスヴィグラスは先行勢を見るように中団を進む展開。その隊列に大きな変化はなく3~4コーナーに差しかかり、レースが動いたのは4コーナー過ぎ。2番手につけていたネスターが先頭に躍り出て、直線に入ると後続を突き離しにかかった。その勢いのままネスターが粘り込みを図ろうとするところに、外から襲いかかったきたのがリンダリンダ。残り200mのハロン棒でネスターを捕えると、ゴールへ向けて一目散に加速していく。結果的にゴール板では2馬身の差をつけ、1番人気のリンダリンダが完勝。2着には4番人気ネスターが粘り込み、2番人気ナイスヴィグラスは最後に追い込んだものの3着に敗れた。

 優勝したリンダリンダは、ライスシャワーの生まれ故郷として知られるユートピア牧場の生産馬。その父フレンチデピュティは、桜花賞馬レジネッタなどの芝GⅠ馬を輩出する一方で、クロフネやノボジャックといったダートの強豪馬も送り出しているオールマイティなベテラン種牡馬だ。母クリムゾンルージュも南関東のダートグレードを沸かせた活躍馬で、ひとつ上の姉には今年のヒダカソウCを制したルージュロワイヤルがいる血統。その背景を考えると、ここは名門牧場出身の良血馬が、ひとつ目の花を咲かせた段階に過ぎないのかもしれない。この出世レースをきっかけとして、将来どんな大輪の花を咲かせてくれるか、リンダリンダの今後が楽しみだ。
桑村真明騎手
ゲートの速い馬が他にいたので、無理をせずあのポジンションにつけました。ダートでは初めて砂を被る位置での競馬になりましたが、特にストレスを感じているような素振りもなく、折り合いもついていました。夏の遠征で中央の強い馬に揉まれたことも、いい経験になっているのだと思います。距離は伸びても大丈夫だと思いますし、さらに大きな舞台で結果を出したいです。
角川秀樹調教師
夏に遠征した芝のレースで惨敗がつづいたので、負け癖がついていなければいいなと思っていたのですが、心配無用でしたね。逃げる形ではなくても競馬ができることを実証できたので、今回のレースはそれが最大の収穫です。今後はダートに専念し、同距離のエーデルワイス賞はもちろん、距離が伸びる北海道2歳優駿、全日本2歳優駿まで見据えて調整していきたいと思います。

 
文:浜近英史(うまレター)
写真:小久保巌義