dirt
2017年3月14日(火) 高知競馬場 1400m

オープン勝ちの勢いで重賞勝利
父ノボジャックと父仔制覇達成

 「日曜日はインコースが使えたんですが、きのうの雨で変わりましたね」とは、前半の4レースまでを終えた赤岡修次騎手の感触。前々日の開催は良馬場だったが、黒船賞JpnⅢ当日は重馬場になった。しかし上空には青空が広がり、日なたには春を感じさせる空気があった。
 第19回を迎えた黒船賞。地元所属馬はトライアルとして設定されている3つの重賞の優勝馬がすべて回避してしまったが、兵庫から3頭、笠松から1頭が参戦。JRAからは5頭が出走してきたが、なかでもニシケンモノノフの人気は断然だった。
 それはある意味、当然といってもいいだろう。昨年12月、兵庫ゴールドトロフィーJpnⅢを制したとき、庄野靖志調教師は「黒船賞を目指します」と話していた。高知は、ニシケンモノノフの馬主さんの地元。パドックでの様子は勢い十分でひときわ目立ち、輝いているという表現がふさわしく思えた。
 それをファンも支持したのだろう。本馬場入場のときは1.7倍だった単勝オッズは、最終的には1.6倍に。その勢いのままニシケンモノノフは先手を取って押し切りを図ったが、後続を封じることはできなかった。
 「フェブラリーステークスで目いっぱいに走った反動があったかな」と、横山典弘騎手。対して、ブラゾンドゥリスとグレイスフルリープはニシケンモノノフを見る形でレースを進められた。インコースではトウケイタイガーも先行勢に加わって、3コーナーあたりからはキングズガードとドリームバレンチノも先頭を射程圏内にとらえてきた。
 その展開では、レースを引っ張ったニシケンモノノフが5着に敗れたのは仕方がなかったのかもしれない。優勝したのは、大外枠の発走から馬群の外を通ってきたブラゾンドゥリス。キングズガードは差し脚を長く使ったが、3/4馬身差で2着。直線の入口で先頭に立って粘り込みを狙ったグレイスフルリープは3着だった。
 「レース前は、どのくらいやれるかと思っていたのですが」と、ブラゾンドゥリスの内田博幸騎手は話したが、5歳を迎えての成長度合いは鞍上の想像を上回っていたようだった。前走で初めてオープン特別を勝ち、そして今回の重賞初制覇。父は黒船賞を2度制したノボジャックで、3代母はロジータ。徐々に強さを増していった父母のように、この馬もさらなる進化が期待できそうだ。
 今年はJRAから出走した5頭が5着までを独占したが、6着という結果に悔しそうな表情を浮かべていたのが、トウケイタイガーに騎乗した川原正一騎手。「掛かったし、内で行くところがなくて。枠が外だったら、それかどこかで外に出せていたら」とポツリ。地元で好走が続くその力量は、ダートグレードレースでも通用する可能性を示したといってもよさそうだ。
 もう1頭、地元で注目を集めていたのがディアマルコ。しかし今回の相手では、ついていくのが精一杯だった。「ここでは厳しすぎました。でも元気はありますし、今の状態を維持して夏からのグランダムに向かっていきたいですね」と、佐原秀泰騎手。ディアマルコもまた、この経験を今後の糧にしてくれることを期待したい存在だ。
内田博幸騎手
大外枠はこの馬にとって良い枠ですから、勝ち負けは別にして積極的に能力を出し切る競馬をしようと考えていたのですが、このメンバーでも戦えましたね。前走は自分が思っていた以上に強い内容でしたが、だんだんと馬が競馬に慣れてきて、力をつけている感じがします。
尾形和幸調教師
だんだんと大人になってきた感じはありますが、砂をかぶることを嫌がる面がある馬ですから、大外枠を引いた時点で自信がありました。(3走前の)中山1800メートル戦(3着)から考えると、現状ではマイルまでなら対応できると思います。今後は馬の状態をみながら、次以降を検討していきたいです。


取材・文:浅野靖典
写真:桂伸也(いちかんぽ)