ダービーウイーク タイトル

 競走馬にとって最高の名誉、それはダービー馬の称号。

 全国各地の6競馬場(佐賀・門別・盛岡・名古屋・大井・園田)で行われる“ダービー”6競走を短期集中施行する夢のような6日間、それが「ダービーウイーク(Derby Week)」(創設2006年)です。

 ダービーウイーク各レースで勝利を掴んだ各地の世代ナンバーワンホースは、全国3歳馬のダート頂上決戦「ジャパンダートダービーJpnⅠ(大井・7/13)」出走に向け、大きなアドバンテージが与えられます(※)。
※ 東京ダービーの1・2着馬にはジャパンダートダービー(JDD)への優先出走権が与えられ、その他5競走は指定競走(注)として認定されている。
(注) 指定競走とは、その1着馬が根幹競走の選定委員会において、同一地区内の他の馬に優先して選定される競走をいう。なお、他の優先出走権の状況や指定馬の数によって適用されない場合がある。
 前年春から、新馬戦を皮切りにスタートし、秋の「未来優駿」シリーズを経て、一世代でしのぎを削る熱き戦いは、集大成への大きな山場を迎え、興奮はクライマックスへ。

ダートに魅せられる6日間!ダービーウイークをお見逃しなく!
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伏兵が直線一気で波乱の決着
殊勲の鞍上はダービー5勝目

 ダービーウイーク2016は驚きの結末で幕を閉じた。
 ダービーウイーク最終戦となる兵庫ダービーは、一冠目の菊水賞を制したシュエットこそ回避したが、その2~7着馬や兵庫チャンピオンシップJpnⅡ出走4頭が参戦し(両レースとも出走が3頭)、3歳馬の頂上決戦にふさわしいメンバーが集まった。
 しかし1番人気は、菊水賞も兵庫チャンピオンシップJpnⅡも不出走のマイタイザン。2歳時に4連勝で兵庫若駒賞を制し、川崎の全日本2歳優駿JpnⅠにも挑戦(10着)した素質馬で、今年はこれで2戦目も休み明けだった5月の復帰戦では、2着馬を10馬身突き放し逃げ切っていた。これ以上ない臨戦過程で、単勝オッズも1.5倍と圧倒的だった。
 2番人気は、兵庫チャンピオンシップJpnⅡ・6着、地元最先着のエイシンニシパで3.7倍。これに北海道から中央を経由して転入し、兵庫で4勝のハタノキセキが7.4倍で続き、この3頭が単勝一桁台だった。
 雨が降る重馬場の中、好発を決めた杉浦健太騎手の1番人気マイタイザンが大方の予想通り、ハナを奪う。しかし、これに真っ向勝負を挑んだのが、2番人気エイシンニシパ。鞍上の吉村智洋騎手が「ファンはマイタイザンが一番強いと思ってたようだけど、僕は自分の馬が一番強いと思ってたから、この乗り方しか考えてなかった」と言うように、出ムチを入れて加速。1周目の3コーナーでは、マイタイザンの外の2番手でぴったりマークした。
 道中もマイタイザンが息を入れようとすれば、すかさず詰め寄り、ペースを落とさせない。しかし、マイタイザンも今までこれで押し切ってきただけに、杉浦騎手も「この馬の競馬ができれば勝てると思っていた」と譲らない。この人気馬2頭が作るハイペースが大波乱を呼ぶことになる。
 競り合いを続けた2頭だが、最終の4コーナー手前で、ついにエイシンニシパが競り落とし、押し切りを図る。しかし、あと一歩のところで勝利の女神に見放されてしまう。
 ゴール前、大外から突っ込んできたのは1番人気マイタイザンと同厩で、木村健騎手が騎乗する6番人気の伏兵ノブタイザンだった。道中は後方3、4番手で脚をため、直線で末脚を爆発させると、一瞬でエイシンニシパをクビ差で差し切った。新井隆太調教師ですら「マイタイザンが伸びずにヤバいと思ったら、ノブタイザンの方がハマって、あれっという感じ。正直、自信を持って送り出したのはマイタイザンの方でしたから」と驚く大波乱だった。
 なお3着にも、道中、最後方から追い込んだ9番人気トウケイヘイゾウが入り、3連単は6→2→9番人気で60万4140円と兵庫ダービー史上最高配当となった。ちなみに、ノブタイザンの馬番は6番だが、2010年以降の1着馬の馬番は6、2、6、2、6、2番で、6番と2番が交互に続いて、6番人気で単勝41.5倍の伏兵ながら、今年も馬番6番が勝った。
 殊勲の木村騎手は兵庫ダービー3連覇となる5勝目だが、特筆されるのはこの5勝が最近6年で挙げている点。近年は怪我もあり、今年は兵庫リーディング5位だが、大舞台での強さに陰りは見られない。
 ノブタイザンの今後について新井調教師は「状態を見てからだが、大井に行かせたい」と7月13日のジャパンダートダービーJpnⅠへの挑戦を表明した。
木村健騎手
前回が5頭立ての5着でしたし、前回もスタートが遅くて、今回も遅かったので、道中はじっくり乗ろうと思っていました。前が速くなったのもありますが、直線はあんなに脚が使えるとは……。追い応えがありました。ゴールでは内と外で離れていたので、勝ったかどうか分かりませんでした。
新井隆太調教師
前走が転厩初戦で5着でしたが、叩いた効果と木村さんに乗ってもらった効果の両方が出たと思っています。道中じっとしていたのは思っていた通りでしたが、すごい脚を使ってくれました。長所は、必ずひと脚は使うのと、性格が素直なところ。次は出走権を生かして、大井に行かせたい。


取材・文:松浦渉
写真:桂伸也(いちかんぽ)