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2018年1月31日(水) 川崎競馬場 2100m

マイペースの逃げで後続を振り切る
進化した5歳馬がジーワン2勝目

 GⅠ/JpnⅠ・11勝という大記録を打ち立て、一時代を築いたコパノリッキーが昨年末に引退した。さて、2018年のダート戦線はどのような戦況になっていくのだろうか。それを占う意味でも見逃せない一戦、川崎記念JpnⅠが、真冬の川崎競馬場で行われた。
 今年は出走馬10頭中、GⅠ/JpnⅠ馬が5頭と豪華メンバーが揃った。レース前、人気順を確認するたびに1番人気が変わって大混戦模様。最終的には、ケイティブレイブが単勝2.7倍と支持を集めた。2番人気はサウンドトゥルーで3.0倍、3番人気はアウォーディーで3.8倍と三つ巴の様相。その後に、アポロケンタッキーが6.1倍と続いた。また地方からは、2014年の全日本2歳優駿JpnⅠの覇者で、大井に移籍後、復活を遂げたディアドムスが、このメンバー相手にどんなレースを見せるのか注目が集まった。
 ゲートが開くと、先手を取ったのはケイティブレイブで、2番手にアポロケンタッキー、3番手の内にグレンツェントがつけた。直後にメイショウスミトモ、アウォーディーが続き、大外枠だったディアドムスは後方の内に進路を取った。サウンドトゥルーは後ろから2番手。小回りコースということもあり、どこで仕掛けるかがポイントだ。
 向正面に入ってもマイペースで逃げるケイティブレイブ。4コーナー手前あたりでペースを上げて引き離しにかかると、後続の騎手たちの腕も動き始めた。直線では、アポロケンタッキーやアウォーディーが前を目がけて勢いよく伸びる姿が。しかし、結局ケイティブレイブは最後までそれらを寄せ付けず、1馬身半差で見事な逃げ切り勝ちを披露した。
 2着のアポロケンタッキーに騎乗した内田博幸騎手は「途中でフェイントもかけたのですが、勝ち馬に上手く乗られましたね。寒い時期ということもあってか体が絞りにくいようです。暖かくなってくれば結果も出てくると思います」とコメントを残した。
 1馬身差の3着にはアウォーディーが入った。2016年に同じ舞台で行われたJBCクラシックJpnⅠを制しているだけに期待も集まっていたのだが、武豊騎手は「スタートが上手くいかなくて良いポジションが取れなかったのが痛かったです。伸びも甘かったし本領発揮できませんでした。気持ちの問題です」と悩ましい表情だった。
 このレース2年連続2着で今年こそはのサウンドトゥルーは、4コーナー手前で動いていったが、自慢の末脚は不発に終わり5着という結果だった。
 優勝したケイティブレイブは2017年の帝王賞JpnⅠ以来、JpnⅠ・2勝目。昨年後半は、あと一歩のレースが続いていたが、今回は久しぶりの逃げの手で強力ライバルたちを完封した。福永祐一騎手は「名古屋大賞典で逃げ切り勝ちをした時は、先頭に立つとフワフワするところがあったのですが、今日はずっと集中していました。これまでいろんな競馬をしてきた成果が出たような気がします」と進化の一面を語った。今年は、5歳馬ケイティブレイブによってこのまま世代交代となるのだろうか。
 そして管理する目野哲也調教師は2月いっぱいで定年を迎える。レース後「今日は絶対勝ちたいと思っていました!」と満面の笑顔でインタビューに答えた。続けて「この馬は、一度も放牧に出ず、ずっと厩舎でトレーニングをしてきた馬。まだまだ走りますよ。それが見られないのは残念ですが……」と寂しさも覗かせた。ケイティブレイブ自身は3月に他の厩舎に移籍することになるが、その前に目野厩舎所属としてのラストラン、フェブラリーステークスGⅠに出走する。師の最後の大舞台で、悲願のJRA・GⅠをプレゼントできるかどうか注目だ。
 JRAから大井に移籍後、初めてダートグレードレースに挑んだディアドムスは6着だった。森下淳平調教師は内容には納得している様子で「これまでのレースと流れが違いすぎるので仕方ない部分もあります。それでもこの着差(勝ち馬から1秒7)ですし、慣れればもっと上を目指せるでしょう」と、この馬の力を再確認したようだ。今後は、4月のブリリアントカップから5月の大井記念を目標に進め、その先の帝王賞JpnⅠも視野に入れているとのこと。今年の南関東古馬戦線で中心の1頭であろうディアドムス。今回の経験を糧にダートグレードでの活躍にも期待したい。
 
福永祐一騎手
今年最初のジーワンを勝つことができて最高です。返し馬でも少しピリピリしていて前走より良い状態に感じました。楽なペースで逃げられましたし、向正面で勝てるのではと思っていました。調教からも一段壁を乗り越えたような雰囲気がありましたし、人気も背負っていたので勝てて良かったです。
目野哲也調教師
この馬は控えるとバランスを崩してしまうので福永騎手にはハナに行ってくれと伝えました。そうなれば、そのまま逃げ切れるんじゃないかと思っていました。直線は「残ってくれ!」と手を叩いて応援していましたよ。最高のレースでした。フェブラリーステークスでも自分のペースで先行するしかないです。


取材・文:秋田奈津子
写真:築田純(いちかんぽ)