dirt
2018年3月29日(木) 名古屋競馬場

幼さ残る4歳馬が重賞初制覇
地元の期待馬は力を出すも5着

 例年よりも厳しい寒さを日本列島にもたらした2018年の冬。しかし、3月29日の名古屋競馬場は快晴で、気温はゴールデンウイーク並みのポカポカ陽気。スタンドやパドックでは上着を手に持ったファンも多く見られた。2017年度の名古屋競馬の最後の大一番、名古屋大賞典JpnⅢは春一色のムードの中、行われた。
 当初は11頭立ての予定も、大井のモズライジンが出走を取消し、10頭での争いとなったが、今年も例にもれず、中央勢が優勢。1番人気は重賞未勝利だが、ジャパンダートダービーJpnⅠ・2着馬でミルコ・デムーロ騎手が騎乗するサンライズソアで単勝2.0倍。これに昨年のJBCクラシックJpnⅠ・3着ミツバが3.8倍、近5走で4勝の上がり馬モズアトラクションが4.9倍、名古屋グランプリJpnⅡの覇者メイショウスミトモが7.4倍と続き、上位人気4頭は中央勢が占めた。
 地元名古屋期待のカツゲキキトキトは5番人気で8.0倍。昨年末の名古屋グランプリJpnⅡでは中央勢を抑えて1番人気に推されたが、3着。今回は中央勢が強化されたことと、中間の調整に狂いが生じた分、人気を落とすこととなった。しかし、今回はマークが緩むことで中央勢の間隙を突けることも可能。また、20日に高知で行われた黒船賞JpnⅢでは兵庫のエイシンヴァラーが中央勢を破って勝っており、地方勢に追い風が吹いており、場内にはカツゲキキトキトの一発に期待するムードも流れていた。
 レースはゲートが開いたと同時に観客席からは悲鳴が起こる予想外の展開で幕を開けた。1番枠のメイショウスミトモが落馬した。しかも、1周目の直線では空馬となったメイショウスミトモが他馬を従えて、先頭を行くシーンも。
 1コーナーでメイショウスミトモがコースから外れると、逃げていたサンライズソアがペースを上げる。2番手カツゲキキトキトもぴったり追走。これに内キーグラウンド、外モズアトラクションが続き、さらにその後ろにミツバの展開。3コーナー過ぎで外からミツバが進出すると、2番手カツゲキキトキトの手応えが一杯になる。直線は逃げ粘るサンライズソアが、外から猛追するミツバを半馬身差で振り切って重賞初制覇を決めた。3/4馬身差の3着には6番人気キーグラウンドが入り、中央勢が上位を独占した。
 昨秋の武蔵野ステークスGⅢではインカンテーションの半馬身差2着だったサンライズソアだが、後にフェブラリーステークスGⅠを制するノンコノユメに先着した力は本物だった。口取り写真を撮影する際に、静止できないなど、まだ幼さが残るが、精神面が成長すれば、さらに強くなりそうだ。
 名古屋の期待カツゲキキトキトはサンライズソアから遅れること1秒差の5着に終わった。「思っていた競馬はできたし、力は出せた。名古屋グランプリの時もそうだったが、正攻法では中央勢には勝てない。もうひと工夫、何かが必要なんだろう」と大畑雅章騎手。
 次走はオグリキャップ記念とかきつばた記念JpnⅢの両にらみだが、「多分、かきつばたかな」と同騎手。中央勢を倒してのダートグレード競走制覇へ。カツゲキキトキトの挑戦がこれからも続く。
 
M.デムーロ騎手
名古屋は(栗東から)近いし大好き(笑)。テンションは高いけど、力はある馬。今回は(馬体重も)マイナスでいい状態だった。スタートから落ち着いて、最後まで伸びた。2着馬(ミツバ)も乗っていたので自信もあったし、余裕もあった。次走も楽しみ。
河内洋調教師
人気になっていたので、ゴール前までヒヤヒヤでした(笑)。でも、しのぎ切ったし、状態も良かった。大井でも2着があるし、先行力もあって、54キロだし、有利と思っていた。まだ気合が表に出過ぎる幼さがあるけど、ようやく重賞を勝てたし、秋にはジーワンの大舞台に立たせたいですね。


取材・文:松浦渉
写真:岡田友貴(いちかんぽ)