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2017年11月3日(祝・金) 大井競馬場 2000m

【リポート動画】

後方から持ち味を発揮し差し切る
3度目の正直でJBCタイトル奪取

 すでに終了したJBCレディスクラシックJpnⅠとスプリントJpnⅠの1着馬と2着馬の差はともにアタマ。2戦続けてきわどい勝負が続くと場内の熱気がさらに高まるのは必然で、JBCクラシックJpnⅠのパドックはかなりの人口密度になった。
 出走馬は13頭で、そのうちJRA所属馬が7頭。昨年、川崎競馬場で行われたこのレースを制したアウォーディーが2.4倍で1番人気に推され、昨年の東京大賞典GⅠを制したアポロケンタッキーが3.6倍で2番人気。その2頭に続いたのはケイティブレイブとサウンドトゥルーで、ここまでの4頭が単勝6倍未満。オールブラッシュはパドック周回中では13倍台だったが最終的には15.2倍。グレンツェントは14倍台から20.0倍まで下がり、徐々に上位4頭に人気が集約されていく形になった。
 ゲートが開き、先手を主張したのはオールブラッシュ。大井のサブノクロヒョウが2番手につけ、ミツバ、アウォーディーは前の2頭を見る形。ケイティブレイブは7番手あたりを進み、アポロケンタッキーはその直後。サウンドトゥルーはさらにその後方からレースを進めた。
 向正面に入ったところで、場内の大型ビジョンには先頭から順番に走行中の各馬がアップになった。それがアポロケンタッキーのところに来たとき、内田博幸騎手が腰を落としながら手を大きく動かしている姿が映った。
 その瞬間、スタンドのファンからはどよめきが。そして画面が先頭争いに戻ると、激しくなりつつある先頭争いに再び歓声が上がった。
 最後の直線に入ると、逃げるオールブラッシュに代わって、ミツバとケイティブレイブが先頭に。アウォーディーはインコースから差を詰めてきたが、並びかけたところから伸びあぐねる走りになった。そこに勢いよく加わってきたのはサウンドトゥルー。ミツバとケイティブレイブの追い比べを横目に、1馬身差をつけてJBC初勝利を飾った。
 サウンドトゥルーはそのままの流れで馬場をもう1周。ホームストレッチではファンからの大声援を浴びた。検量エリアに戻ってきたところでは大野拓弥騎手が「この馬にとってのマイペース」と笑顔を見せた。
 2着のケイティブレイブは勝利を寸前で逃したが、福永祐一騎手は「以前からこういうレースをしたいと思っていました」とコメント。徐々に成長している手ごたえをつかんでいるようだった。
 惜しかったのはJRA勢では最低人気ながら、2着とはクビ差3着だったミツバ。松山弘平騎手は「最後まで真面目に走ってくれて、ゴール前では差し返そうとしてくれました」と残念そうだったが、パドックで勢いよく歩く姿には状態のよさが現れていた。
 4着のアウォーディーは「状態も走りもよかったのですが、大井は合わないのかな」と武豊騎手。「左回りのほうが力を発揮できると思いますので、次は巻き返したい」と12月3日のチャンピオンズカップGⅠでの捲土重来を期した。
 しかしそこを狙うのはサウンドトゥルーも同様。「寒い時期は調子が上がる」タイプだけに、チャンピオンズカップGⅠの連覇が次のターゲットだ。「まだ成長の余地がある感じがしますね」と高木登調教師。7歳でもまだまだ、ダート界の中心的存在として君臨し続けていくつもりだ。
大野拓弥騎手
惜しい競馬が続いていたので、勝ちたいと思っていました。(休み明けを)1走して状態がすごく良くなっていましたし、自信を持ってマイペースで行くことを心掛けて乗りました。今回は最後の直線で手前をしっかりかえてくれましたね。今年の残り2戦でもいい競馬をしてくれると思います。
高木登調教師
ジョッキーには「ウチのがいちばん強いと思って乗ってこい」と言いました。夏負けがきついタイプですが、今年は順調に調整できましたね。前走のときも調子がよくて、今回はさらに良くなっていましたから、これを維持できるか心配(笑)。でも年末までもう2つ、タイトルを取りに行きたいと思っています。


取材・文:浅野靖典
写真:いちかんぽ(早川範雄、国分智)