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2017年12月14日(木) 名古屋競馬場 2500m

前を行く2頭を目標に差し切り勝ち
地元期待のカツゲキキトキトは3着

 2017年の名古屋グランプリJpnⅡの主役は、地元所属のカツゲキキトキト。このレースは創設された2001年に笠松のミツアキサイレンスが制して以来、JRA所属馬が14連勝(2005年は降雪のため中止)。また2007年までは地方所属馬が3着以内に最低でも1頭は入っていたのだが、2008年以降はそれも途切れた。しかし昨年、カツゲキキトキトの3着で不名誉な記録にピリオド。今年はそれ以上の期待が集まった。
 今年のカツゲキキトキトは、佐賀記念JpnⅢが4着だったものの、名古屋大賞典JpnⅢは3着。4月末のオグリキャップ記念を制して休養に入り、この秋は白山大賞典JpnⅢで2着と、着実にステップアップしてきた。昨年はアムールブリエ、ケイティブレイブという強敵相手での3着。それなら今年こそはと、地元の専門紙に本命印が並んだのも妥当なところだろう。
 ファンも同様の考えで、カツゲキキトキトの単勝オッズは1.8倍。2番人気がオールブラッシュの4.9倍ということでは、やや抜けた数字になっていた。そういった状況ならば、強めの北風が吹く平日でも関係なし。メインレースのパドックを囲んだファンの数も、ゴール前で大型のカメラを持って陣取る人も例年より多かった。
 そのたくさんの視線が注がれるなか、各馬はまずスタンド前を通過した。先手を取ったのはクリノスターオーで、カツゲキキトキトは2番手。その直後に高知から参戦のサクラビクトワールが続き、タガノディグオ、メイショウスミトモなどのJRA勢が追走していった。
 ダートグレードレースでは最長距離、コーナー8回というのもこの舞台が唯一。となれば、クリノスターオー鞍上の幸英明騎手が1周目の向正面でペースを落としたのは当然のことだろう。その隊列には変化がほとんどないまま進み、2周目の向正面からペースが上がった。
 3コーナー手前で動いたのはトップディーヴォ。それに呼応してカツゲキキトキトもスパートを開始して、逃げるクリノスターオーを交わして先頭に立った。その2頭による先頭争いは最後の直線の半ばまで続き、その姿に場内からは大きな声援。しかしカツゲキキトキトはゴールを前にして力尽きてしまった。
 それを背後から目標にしていたのがメイショウスミトモ。インコースで我慢させていたそのパワーを鞍上が解放し、残り100メートルあたりで先頭に立って押し切った。
 「いやあ、抑えるのが大変でした」と検量室前で馬から降りた古川吉洋騎手は、嬉しさと苦笑いが半々といった表情。2着でも「仕方ない」という顔をして後検量に向かったトップディーヴォの横山典弘騎手とは対照的だった。
 カツゲキキトキトは昨年と同じ3着。ゴール地点ではため息のような声があちらこちらから聞こえてきた。「前走と比べると、調子がすこし落ちていたかな。でも昨年は流れ込んでの3着で、今年は勝ちに行っての3着ですから」と、大畑雅章騎手は悲壮感をまったく見せていなかった。「どこかでまたチャンスがありますよ。早く(タイトルを)取りたいとは思いますけれど」
 それは多くの地方競馬ファンにとっても同じ願いであるに違いない。
 
古川吉洋騎手
行きたがるタイプの馬で、しかもこの距離ですからキツイかなと思っていたのですが、やっぱり掛かりましたね。それでも2周目の3コーナーの勝負どころで置かれなかったので、そこで勝てると思いました。今日はいい位置を取れたことが勝因ですね。賞金を重ねられたことも今後に向けて大きいと思います。
南井克巳調教師
前走のチャンピオンズカップから中10日でもここに出るのは予定通り。前走を走って状態が良くなっていると思いましたし、ジョッキーも指示どおりに乗ってきてくれました。この馬はウイングアローの近親で、最初に見たときからいい印象を持っていました。この後の予定は馬の様子を見てから考えます。

カツゲキキトキトは昨年と同じ3着

取材・文:浅野靖典
写真:岡田友貴(いちかんぽ)