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連載第50回 1997年 サラブレッドチャレンジカップ

『東海両雄の一騎打ち 名古屋の意地見せたツートップ』
1997年 サラブレッドチャレンジカップ セイエイツートップ

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 「不運」と言ってしまえばそれまでだが、思えばツイていない時代に生まれたような気がする。1994年生まれがデビューした頃の東海地区は、笠松の荒川友司調教師率いる“ワカオライデン軍団”の最盛期であった。
 グレード競走に勝ったワカオライデン産駒は3頭。1頭は92年生まれのライデンリーダー(95年報知4歳牝馬特別)、そしてあと2頭は94年生まれのシンプウライデン(97年名古屋優駿)とトミケンライデン(97年全日本サラブレッドカップ)で、いずれも笠松の荒川厩舎所属である。
 東海地区は名古屋競馬と笠松競馬で相互に出走できる番組を組んでいる。96年、つまり94年生まれのデビュー年は、シンプウライデンが中京盃、ゴールドウイング賞、そして暮れのジュニアグランプリを制し、明けて3歳にはトミケンライデンがゴールドジュニアに勝ち、2~3歳春シーズンは笠松勢が席巻していた。
 その状況に抗い、名古屋の意地を見せたのがセイエイツートップである。
 初勝利は2戦目。その後も勝ちきれず、6戦目のゴールドウイング賞でシンプウライデンと初対戦する。結果は2秒2離された9着。それが2歳暮れの力差だった。
 続く次走で2勝目を挙げるも、以降再び一進一退を繰り返し、3月のスプリングカップで再びシンプウライデンと対戦し、1秒差の3着。B級で1、2着の後クラシックシーズンに突入する。
 1冠目の駿蹄賞は10番人気の低評価。レースも3着と健闘するも、勝ったシンプウライデンから1秒2の差。再び自己条件を2、3着の後、名古屋優駿(G3)に駒を進めた。シンプウライデンはJRA勢4頭を迎えたそのレースでも快速を飛ばし逃げ切り勝ち。2着のJRA馬トウカンイーグルに4馬身の差を付ける快勝であった。一方セイエイツートップは2頭のJRA馬には先着したものの、勝ったシンプウライデンからは11馬身+ハナ差の4着(2.4秒差)。1900mに距離が延びた分差を縮められるかに思われたが、逆に離される結果となってしまった。当時はパワーはヒケを取らなかったが、シンプウライデンのスピードには完全に負けていた。
 しかし、この敗戦を境に馬が変わった。地元A級で連勝。夏を越しパワーアップしてきた。
 9月28日、金沢競馬場で行われるサラブレッドチャレンジカップ。全国の地方競馬から、3歳のトップクラスが集結する全国交流競走。例年なら幅広く集まるのだが、シンプウライデン相手では分が悪いと見たか、名古屋2頭、笠松1頭、新潟1頭、地元金沢5頭の9頭立てと寂しい頭数となった。
 断然の1番人気はシンプウライデン。ここまで14戦10勝2着2回。敗れた2戦はJRA京都のデイリー杯3歳ステークス(当時)と、古馬相手の東海クラウンだけ。遠征競馬は経験豊富、距離も経験済み、何よりも前走の名古屋優駿でJRA勢を破って勝っている。約3か月ぶりの久々がどうかだけだが、もはや単なる荒探しでしかない。
 2番人気は初の遠征競馬となるが、連勝中と好調さを買われセイエイツートップ。3番人気は新潟で11戦8勝2着1回3着2回で目下6連勝中の牝馬アンビシャスフット。
 レースは新潟の快速牝馬アンビシャスフットが逃げ、2番手にシンプウライデン、そしてそれをマークするようにセイエイツートップが控える。2周目の3コーナー手前でアンビシャスフットの脚色が鈍ると、シンプウライデンが先頭に立ち、逃げ込みを図る。3~4コーナーで後続を大きく引き離し、シンプウライデンとセイエイツートップのマッチレースとなった。
 「夏を越して力を付けた」と吉田稔騎手。その言葉の通り、力尽きたシンプウライデンを捉えると、2馬身差の差を付け、悲願のシンプウライデン超えを果たした。
 タイムは2分2秒5のコースレコード(当時)。父ナグルスキーらしい馬力タイプだが、アンビシャスフットとシンプウライデンの作る速い流れを追走し、パワーに加えスピードがあることを証明してみせた。
 岐阜金賞は遠征疲れもあったかワカオライデン軍団のもう一方の雄トミケンライデンの3着に敗れたが、大井のスーパーダートダービーではメイショウモトナリの0.3秒差4着と健闘している。
 群雄割拠だった当時の東海地区。交流競走への遠征などもあり、タイトルは名古屋のダイヤモンドカップと、雪の降りしきる中で行われた第1回梅見月杯の3勝に留まった。6歳春には大井競馬場に移籍してきたが、レースで掛かるようなところもあり、調子も上がらず、往年の力はないように見えた。
 翌年には笠松に移籍。最後のレースとなった東海クラウンに勝ち、有終の美を飾っている。
文●日刊競馬 小山内完友
写真●いちかんぽ
競走成績
第8回 サラブレッドチャレンジカップ 平成9年(1997年)9月28日
  サラブレッド系4歳 1着賞金1,700万円 金沢 1,900m 晴・重
着順
枠番
馬番
馬名
性齢
重量
騎手
タイム・着差
人気
1 6 6 セイエイツートップ 牡4 56 吉田稔 2.02.5 2
2 7 7 シンプウライデン 牡4 56 安藤勝己 2 1
3 8 8 ミナモトオペラ 牡4 56 渡辺壮 大差 5
4 8 9 ドウカンキング 牡4 56 中川雅之 3 5
5 1 1 ホワイトチケット 牡4 56 安部幸夫 4 4
6 5 5 レイブファクトリー 牡4 56 古性秀之 ハナ 7
7 2 2 アンビシャスフット 牝4 54 向山牧 2 3
8 4 4 ゴールドマッチ 牝4 54 米倉知 1/2 8
9 3 3 ミスターカサマツ 牡4 56 桑野等 大差 9
払戻金 単勝420円 複勝100円・110円・260円 枠連複270円 枠連単850円