3歳秋のチャンピオンシップ

 本シリーズは、各地の3歳主要重賞競走を戦った有力馬が11月に実施されるダービーグランプリへと集結し、地方競馬の3歳王者の座を争うもので、カテゴリーに応じてボーナス賞金(馬主)が設けられています。

 充実の秋、成長の秋、飛躍の秋など競走馬にとって大きな意味合いを持つ「3歳秋」を舞台に繰り広げられる熱戦にご期待ください。

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好位から早め先頭で後続を完封
地方移籍後4連勝で重賞初制覇

 高知の三冠目、黒潮菊花賞は雨中の争いとなった。
 圧倒的な強さで高知二冠を制し、さらに古馬相手の珊瑚冠賞まで制したフリビオンは、翌週に佐賀で行われる西日本ダービーへの遠征を決めたために不在。世代最強馬が抜けた既存勢力に対して、中央や他地区から転入して1、2戦の新興勢力が5頭。その新興勢力の中で人気を集めた2頭、モズオトコマエ、カレンラヴニールが強さを見せた。
 抜群のスタートを見せたのが、ここまで二冠ともフリビオンの2着だったバーントシェンナ。2番手争いを制して直後につけたのがセブンハーバーで、モズオトコマエ、マルムーティエが続いた。
 1番人気モズオトコマエの手応えは十分で、3コーナーで前をとらえ一気に先頭に立つと、そのまま後続を寄せ付けず快勝。中団から早めに勝ち馬の直後につけたカレンラヴニールが追ってきたが、直線でも差を詰めることができず4馬身差の2着。3着争いは混戦となって、高知二冠ではともに7着、今回は最低人気だったメイソが抜け出した。1、2着は人気どおりだが、3連勝式の馬券は波乱の決着となった。
 地元生え抜きとして3番人気に支持されたバーントシェンナは、勝ち馬に交わされた3コーナー過ぎからずるずる後退。「(高知優駿以来の)休み明けで行きっぷりがよくなかった」(宮川実騎手)とのことで8着に沈んだ。
 勝ったモズオトコマエは、今年7月に中央の3歳未勝利戦でデビューを迎えたものの、勝ち馬から6秒以上も離されての惨敗。ホッカイドウ競馬に移籍し、下級条件戦を2戦とも楽勝。その後高知に移籍し、初戦の古馬C3級、1400メートル戦を快勝していた。そのときの勝ちタイムが、同じ1400メートルで争われる黒潮皐月賞の近年の勝ちタイムと比べても遜色のないもの。しかも今回の鞍上が赤岡修次騎手とあって人気の中心となっていた。とはいえここまでキャリアわずか4戦。陣営には不安もあったようだ。中央での1戦はダート1800メートルだが、大差の敗戦では経験にはなっていない。気性難もあり、手探り状態で臨んだ一戦だった。
 勝ちタイムの2分5秒4は、黒潮菊花賞のレースレコード。コースには水が浮くスピード馬場だったため、そのタイムは割り引いてみる必要はありそうだが、1997年以降、同じ1900メートルで争われている高知優駿でも2分5秒台という決着はない。中央では仕上がりきらなかった馬が、地方に来てようやく素質開花となった。
 2着のカレンラヴニールも同様。中央では6戦して一度も掲示板に載れなかったものの、高知に移籍し2戦とも楽勝で臨んだ一戦。勝ったモズオトコマエから4馬身差の完敗ではあったが、鞍上の永森大智騎手はあまり悲観していない様子。「まだまだズブくて、3歳のときのリワードレブロンみたい」と、古馬になって全国区での活躍を見せるようになったパートナーに例えた。
 生え抜きの世代最強馬フリビオンに対し、さらなる成長が期待できそうな転入馬の台頭で、この秋から来年以降、高知の重賞戦線はさらに層が厚いものとなりそうだ。
赤岡修次騎手
2番手につけようと思ったんですが、前が飛ばしていたので、ヘタに追いかけるより3番手でと思いました。今回は初めての1900メートルということもあったし、気の悪いところを見せることもあるので、それがどう出るかと思ったんですが、最後は遊ぶようなところもあって、ほんとに強い勝ち方でした。
宮路洋一調教師
キャリアが浅いだけにどうかと思っていましたが、前回の勝ち方がよかったので、なんとかやってくれるのではないかと思っていました。距離的なところも、揉まれさえしなければこなしてくれるんじゃないかと思っていました。次走についてはオーナーと相談して決めていくことになると思います。


取材・文:斎藤修
写真:桂伸也(いちかんぽ)