ウエブハロン2017 スーパー ジョッキーズ トライアル タイトル

 本年8月26日および27日にJRA札幌競馬場で実施される「2017ワールドオールスタージョッキーズ」への出場をかけて地方競馬のトップジョッキーが争う「ワールドオールスタージョッキーズ地方競馬代表騎手選定競走」がSJTです。SJT本戦(第1ステージ、第2ステージ)の計4レースにおける着順に応じた得点の合計により、地方競馬代表騎手が選ばれます。
 また、SJT本戦に先がけて、各地方競馬場リーディング次位の騎手等による、本戦への出場をかけた『SJTワイルドカード』が実施されます。
 ※2017ワールドオールスタージョッキーズの地方競馬代表騎手は、地方競馬全国協会が代表騎手1名、補欠騎手1名を日本中央競馬会に推薦し、同会が決定します。
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第1ステージトップの中野騎手が連勝 2位に大差をつけて初出場での優勝

 8月26、27日にJRA札幌競馬場で実施されるワールドオールスタージョッキーズ。その出場権として地方所属騎手に与えられた枠はひとつだけ。誰もが目指す夢の舞台への切符をつかむための争いは熾烈になるのが通例だが、今年はすこし様子が違った。
 盛岡競馬場で行われた第1ステージで、1着、2着の成績をおさめた中野省吾騎手(船橋)が35ポイントを獲得し、2位の真島大輔騎手(大井)に14ポイントの差をつけていたのだ。昨年は永森大智騎手(高知)が54ポイントで優勝し、一昨年は藤田弘治騎手(金沢)が44ポイントで優勝。例年の優勝ラインを含めて考えると、中野騎手が有利な状況といえた。
 しかしSJT第2ステージは、2年連続で1人の騎手が2勝を挙げている。そのことが皆の頭にあるのか、騎手紹介式の前には「大逆転を狙います」と話す騎手も。中野騎手も騎手紹介式では「ポイントとか関係なしに、2戦とも勝つ算段で行きます」とアピールしていた。
 じつは中野騎手は前日の船橋競馬での騎乗終了後、その日のうちに園田競馬場に入るつもりが、乗った新幹線が架線切断による停電の影響で止まってしまい、新大阪駅に着いたのが午前4時頃だったそうだ。それでも「今開催の船橋での成績がかなりいいので、自分に流れが来ていると感じています」と笑顔。そういうアクシデントも楽しんでいるかのようだった。
 第3戦、シルバーブーツ賞は1400メートル戦。出場予定だった森泰斗騎手(船橋)が負傷のため、直前になって出場を辞退。代わりの手綱は2戦とも下原理騎手(兵庫)が務めることになった。ただし、下原騎手は第1ステージで敗退したので、ここでのポイントは加算されないと発表されていた。
 それでも名手たちの戦いであることには変わりがない。しかしながら今年のSJTは、ひとりの男がすべてをさらっていった。
 主役となったのは中野騎手。レースは2番手から進めた田中学騎手(兵庫)が、4コーナー手前で先頭に立って押し切るかたちだったが、それを1コーナーでは後方2番手にいた中野騎手が、向正面から一気に追い上げてゴール寸前で逆転したのだ。
 勝ったマンテンスマイルを管理する尾林幸二調教師は「距離短縮で新しい面が出ないものかと思っていましたが、あんな末脚が使えるとは。普段の園田なら田中騎手が勝っていましたよ」と、驚きの表情を見せていた。
 これで中野騎手は55ポイントになり、その次が30ポイントの永森騎手。1着は20ポイントという設定だから、ここで中野騎手の優勝が決まってしまった。最終戦を残して優勝が確定するのは史上初だ。3着に入った山口勲騎手(佐賀)は「中野騎手が1着?こりゃダメだ」と苦笑い。佐藤友則騎手(笠松)も苦笑しながら、中野騎手の肩を叩いて「おめでとう」と讃えていた。
 しかしSJTは第4戦まで組まれている。B2クラスで争われる1700メートルのシルバーホイップ賞は、真島騎手、矢野貴之騎手(大井)、藤田弘治騎手(金沢)の騎乗馬が単勝5倍未満。しかしそこにはちょっとした異変があった。中野騎手の馬の単勝オッズが締め切り10分前あたりに、6倍前後まで上昇したのだ。騎乗するゴッドバローズは園田のC級で1勝を挙げただけで、B級では23回走って2着と3着が各1回。その馬が最終的に9.2倍の4番人気に支持されたのだから、これはもう「騎手で買われた」と判断しても差し支えないだろう。
 そして中野騎手は、またしても観客の度肝を抜いた。
 大外枠からすぐに2番手につけ、2周目の4コーナー手前で先頭に立って、そのまま勝利。決め手不足が続いていた馬に、上がり3ハロンの最速タイムを出させたその騎乗ぶりには、兵庫の某トレーナーから「ウチの馬が南関東に行くときに乗って」と直接のオファーが届いた。
 一方、スタンドで勝負の行方を見守っていたファンからは、ゴール前100メートルあたりで、感嘆もしくはため息とも取れるような声があちらこちらから聞こえてきた。なかには「また中野か」「ちょっとこれはすごいぞ」と興奮気味に話す声も。
 中野騎手はSJTの4戦で、3勝、2着1回。獲得したポイント数は75で、これは過去最高の56ポイントをはるかに超える大記録だ。それをデビュー8年目、通算勝利数が500にも達していない騎手が生み出したのだから恐ろしい。
 一緒に騎乗した騎手も「初めての園田であれだけうまく流れに乗れるとは」(下原騎手)、「盛岡でもそうでしたが、しっかりと返し馬をしていましたね」(田中騎手)などと感心しきり。この騎乗技術と勢いは、世界の舞台でもあっさり通用してしまうかもしれない。中野騎手のこれからの可能性は、まさに無限大だ。

取材・文:浅野靖典
写真:桂伸也(いちかんぽ)

当日の様子はこちら
(YouTube地方競馬チャンネル内)
総合優勝
中野省吾騎手
(船橋)
最初のレースは後方からでしたが、馬の気持ちをうまく乗せられました。2戦目は馬のリズムを大切にしたら2番手に行ってくれましたね。2戦とも楽しく乗れました。さっきまでは優勝したいと思っていましたが、今はもう次の札幌に意識が行っていますね。挑戦者ですが、そのほうが自分の力を出せると思います。
総合2位
田中学騎手
(兵庫)
1戦目は結果的にみると、仕掛けが早かったのかなあ。というか、中野騎手の勢いに負けたというところでしょうか。でも2戦目も流れに乗れて3着で、結果が総合2位ですから、我ながらしぶといですね(笑)。地元の意地は見せられたかなとは思いますが、今回は完敗です。
総合3位
永森大智騎手
(高知)
1戦目は田中さんの後ろで、いい位置を取れたと思いながら乗っていたんですが、最後が伸びなかったですね。2戦目は4着でしたし、全体的に大きい着順を取らないで乗ることができたとは思うのですが、今年は相手が悪かったですね(苦笑)。ケガなく地元で頑張って、また来年もこの舞台に参加したいです。