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当コーナーでは、地方競馬に関するイベントや注目レース等の気になる話題を写真と共にご紹介します。

ワールドオールスタージョッキーズ

2日間で6着が最高という結果
世界の舞台で桑村騎手が得たもの

2018年8月25・26日 JRA札幌競馬場

 2つの台風が日本列島に接近もしくは上陸し、予報ではこの週末に札幌を直撃する可能性もあった。しかし温帯低気圧に変わるなどで土日の札幌競馬の開催に直接の影響はなく、雨も土曜日の朝までで上がった。
 札幌競馬場を舞台に行われるワールドオールスタージョッキーズ(以下、WASJ)は今年で4回目、地方代表となったのはホッカイドウ競馬の桑村真明騎手。デビューしたのは2005年で、09年までは札幌競馬場でも地方開催が行われていただけに、いわば地元ともいえる舞台。JRA札幌開催でも、デビュー2年目の06年からほぼ毎年のように参戦(07、13年は騎乗なし)、08年には11頭立て最低人気のイナズマアマリリスで2歳500万下(芝1200メートル)を勝利するなど、札幌芝コースも豊富に経験している。

思い通りの騎乗ができなかった初日

 迎えた初日、桑村騎手には2つのエキストラ騎乗があった。第3レース(3歳未勝利)でダート1700メートル戦(11着)、第7レース(3歳以上500万下・牝馬)で芝1200メートル戦(15着)を経験し、臨んだ第1戦は芝1200メートル戦。騎乗したレヴァンタールは、騎乗馬のグループ分けが“D”評価で、単勝でも最低人気。少しでも上の着順をという気持ちで臨めたのではないだろうか。
 中団うしろの馬群の中を進んだ桑村だったが、4コーナー手前で早くもムチが入った。内を回ったぶん位置取りを上げたが、直線で伸びる脚は残っておらず10着でのゴール。勝ったのは6番人気の武豊騎手。大外枠から抜群のスタートも中団に控え、4コーナーで前を射程圏に入れると、直線半ばで抜け出した。ゴール前で外から迫ったラファエル・ベハラーノ騎手(アメリカ)が半馬身差で2着。連れて伸びた福永祐一騎手がクビ差で3着に入った。
 桑村騎手が期待されたのは第2戦(芝2000メートル)。騎乗したプロフェットは“A”評価で、2年前の3歳時には京成杯GⅢを制している。単勝5.1倍の3番人気に支持された。
 枠順確定前に1頭が出走取消となり、大外13番枠からのスタートとなった桑村騎手は、中団の外目を追走。渋った馬場(稍重)もあってか前半1000メートル通過が63秒6というスローペースとなっても、4コーナー手前まで馬群に大きな動きはなく、桑村騎手は中団のまま流れ込んだだけの7着という結果。
 勝ったのは、1番人気に支持されたクリストフ・ルメール騎手。4番手あたりの好位追走から直線で抜け出しての快勝。2馬身差の2着にはシェーン・フォーリー騎手(アイルランド)が入り、戸崎圭太騎手が3着。4着のチャドレー・スコフィールド騎手(香港)まで、好位から中団より前に馬たちでの決着だった。
 「ペースも遅かったみたいで、ちょっと抑えすぎてしまった感じです。すんなり外を回っていけばよかったんですけど、内のほうを狙って、その迷いがロスになってしまった」と振り返った桑村騎手。初日は終始表情が硬く、残念ながら笑顔は見られなかった。

足りなかったのは思い切りのよさ

 2日目のWASJの前にも3鞍のエキストラ騎乗があった桑村騎手だが、いずれも下位人気だったこともあり、10着、13着、10着。ここまで結果を残すことができないまま第3戦(ダート1700メートル)を迎えた。1番枠からのスタートで、ラチ沿いの中団を追走。コースロスなく回ったことで、3コーナー過ぎでは先行勢の直後につけたが、そこからは追い通し。6着での入線だった。「3~4コーナーではいいところまで行けるかなと思ったんですが、直線ではまわりの馬の手応えが違っていました」と、初日よりは柔らかい表情に見えた。
 4コーナー手前で馬体を併せて先頭に立ったのは、内が1番人気の武豊騎手で、外が2番人気のジョアン・モレイラ騎手(ブラジル)。直線一杯を使っての追い比べは、写真判定の結果、モレイラ騎手がハナ差、先着していた。実は初日の2戦を終えて最下位だったモレイラ騎手だったが、勝っていることを知ると笑顔が弾けた。
 一方、桑村騎手は6着の8ポイントを稼いだことで、ここまで15ポイント。最終戦を勝てば、他の騎手の結果次第では表彰台の可能性も残して最終戦を迎えることになった。
 メインのキーンランドカップGⅢを挟んで迎えた最終戦(芝1800メートル)。「外枠からで、出脚がつかない馬だったので、内に入って行きたかったんですけど、思うように入っていけませんでした。終いはいい脚を使いましたが、なかなか差を縮められませんでした」という桑村騎手は8着だった。中団から直線で突き抜けたのはルメール騎手で、3馬身差の2着に1番人気のミルコ・デムーロ騎手が入った。
 エキストラ騎乗も含め2日間で9レースに騎乗し、6着が最高という成績だった桑村騎手。「思い通りのレースができず、不甲斐ない結果です。世界のトップジョッキーの中に入って、自分に足りない部分がすごくわかった2日間でした。対応力というか、レースの流れの中で思い切りのよさが欠けていたのは、多少なりとも萎縮していた、気持ちで負けてる部分はあったと思います。でもこのメンバーの中で乗せてもらったことはすごく楽しかったですし、たくさんのお客さんの前で乗れたことも楽しかったです。こういう大きな舞台でもう一度乗りたいという気持ちもまた芽生えました」と2日間を振り返った。
 優勝は、2勝を挙げ72ポイントのルメール騎手。1勝、2着1回の武騎手が59ポイントで2位、勝利はなかったものの2着1回のデムーロ騎手が40ポイントで3位。桑村騎手は19ポイントで11位タイという結果だった。
 表彰式のフォトセッションで、隣にいた武騎手に肩を組まれた桑村騎手には笑顔があった。その表彰台の少し高いところから見た景色はきっと覚えていることだろう。今シーズンは通算1000勝を達成、北海道リーディングでも2位以下に差をつけてのトップを走っている。ホッカイドウ競馬という枠に収まらず、今後は地方競馬全体を牽引していくような活躍を期待したい。


取材・文:斎藤修
写真:中地広大(いちかんぽ)

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