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レースハイライト

第22回 TCK女王盃 JpnⅢ

2019年1月23日(水) 大井競馬場 1800m

鞍上の判断が勝負を分ける 混戦の牝馬戦線は波乱の決着

 2018年に行われた牝馬ダートグレード8レースのうち、複数のレースを制したのはアンジュデジール(エンプレス杯JpnⅡ、マリーンカップJpnⅢ、JBCレディスクラシックJpnⅠ)のみ。それはすなわち、アンジュデジール以下は混戦という牝馬ダート路線の現状を示しており、同馬が不在のこのレースは、今後を占う意味でも重要な一戦となった。
 しかし、結果から言えば、JRA勢では最も人気がなかった単勝6番人気のビスカリアが勝利。2着にも9番人気のマルカンセンサー(大井)が入り、3連単は99万円という波乱。この路線の混迷ぶりを浮き彫りにする結果となった。
 好ダッシュを決めた大井のクレイジーアクセルと、大外枠に入ったアイアンテーラーが逃げ争いを展開。ビスカリアはこれを5番手の内で進めた。3コーナーの手前から徐々に位置取りを上げると直線で抜け出し、一気に後続を突き放した。2着のマルカンセンサーにつけた着差は5馬身。重賞初制覇とはいえ、ハイペースを積極的に運んで勝ち切ったあたり、牝馬路線の主役に名乗りを上げるには十分すぎる内容だった。
 森泰斗騎手とのコンビは今回で3度目。「これまで何度か乗っているから、どれくらいの脚を使うのかは分かっていた」とジョッキーが話したように、これまでの経験を生かしてタイトル奪取に成功。加えて、この日の前日から大井競馬場は内ラチ沿いが軽かったが、鞍上がそれを把握し、終始内にこだわって騎乗したことも大きかった。
 馬場の把握という点では、2着のマルカンセンサーも同様。的場文男騎手は「内でじっとする競馬で、少しの可能性にかけた。それがいいほうに出たね」と話した。最後まで内ラチ沿いを通ってきた鞍上の好判断でもあるのだが、実は戦前、管理トレーナーの高野毅調教師は「近況はうまくかみ合っていないだけ。ここでも力は互角だと思う」とも。地元C1戦で苦戦していた近況が信じられないような高い能力を、ダートグレードの舞台で証明してみせた。
 一方、単勝1.4倍の圧倒的な1番人気に推されたラビットランは、直線で伸びきれず3着。ミルコ・デムーロ騎手は「向正面では勝てるような手応えだったけどね。久々のぶんなのか……」と首をひねった。確かにJBC以来で若干間隔が開いていたことや、牝馬特有の難しさもあったのかもしれない。ただ、今回に限っては、馬場傾向を熟知していた森騎手と的場騎手が地元の利を最大限に生かした結果。3着でも悲観する必要はない。
 なお、JBC制覇後、チャンピオンズカップGⅠでも4着に健闘したアンジュデジールだったが、このレースの3日前に出走した東海ステークスGⅡでは12着に敗れている。そうしたなかで登場した7歳のニューヒロイン。牝馬ダート路線は迷走を続ける一方で、活況を呈しはじめた。

地方馬最先着は2着のマルカンセンサー
取材・文:大貫師男
写真:宮原政典(いちかんぽ)

コメント

森泰斗騎手

何度か乗っているので、どれくらいの脚を使うかは分かっていましたが、地方のダートが合うか、その点は気になっていましたね。でも、それも杞憂に終わってよかったです。内ラチ沿いが軽かったから、その位置をキープしながら脚も十分にたまっていましたし、直線でもよく伸びてくれました。

山内研二調教師

想定外の結果で、うれしく思っています。前走より気配が良く、いい状態で出走させることができました。道中はいつもより前めの競馬でしたが、3コーナーをまわるあたりでは「ひょっとしたら」と思いました。次走はまだ考えていませんが、今後もまた頑張ってほしいと思います。