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レースハイライト

第17回 佐々木竹見カップジョッキーズグランプリ

2019年1月29日(火) 川崎競馬場

未勝利の2名が同ポイントの激戦 2戦目着順上位の戸崎騎手が優勝

 1960年のデビューから2001年に現役を引退するまでの42年間で、通算7153勝(うち中央2勝)を挙げ、年間505勝達成(1966年、当時の世界記録)や南関東リーディングに17度輝くなど、『鉄人』という異名で多くの人たちを魅了してきた元騎手の佐々木竹見さん。
 そんな川崎競馬場の至宝を讃えるべく、引退の翌年2002年から始まったのが佐々木竹見カップジョッキーズグランプリ。毎年、地方各地と中央のトップジョッキーたちが集まり腕を競い合う。今回の初出場は吉村智洋騎手(兵庫)と瀧川寿希也騎手(川崎)の2名。
 今年もマイスターチャレンジ(1500メートル)とヴィクトリーチャレンジ(1600メートル)、2レースのポイント制で行われた。
 第1戦のマイスターチャレンジは、1番人気に推されていた山本聡哉騎手(岩手)のシカゴジャズが、2着馬に8馬身差をつける圧勝。出鞭を入れて積極的に先手を取っていくと、そのまま後続馬たちを突き放した。
 「指示もあったし、強い馬なので強気に先手を取りました。出脚はよくなかったですが、どんな競馬をしても勝てたかなと思います。素直でスタミナもあるし、いい馬に乗せてもらいました。2戦目も総合優勝などは意識をしないようにしっかり乗りたいです」(山本騎手)。
 実は、このシカゴジャズを担当しているのは、岩手で騎手をしていた山崎進厩務員。普段から調教にも乗っている馬で、岩手の後輩に当たる山本騎手に、レースではバトンを渡したかたちだ。
 「僕が騎手を辞める前に(山本騎手は)実習生として入ってきたのでレースは一緒に乗っていませんが、同じ岩手なので今回は乗ってくれただけでも、お~!と思ったし、勝ってくれたので余計にうれしいです」と山崎厩務員。南関東では各地の競馬場出身者の姿が多く見られるが、こういうドラマが見られるのも、全国から騎手が集まるレースの醍醐味でもある。
 2戦目のヴィクトリーチャレンジは、昨年、距離を2100メートルから1600メートルに短縮。勝ったのは、7番人気タニノホウザンとコンビを組んだ赤岡修次騎手(高知)。道中は中団内めで進めていき、最後の直線で一気に外へ持ち出すと、逃げ粘っていた戸崎圭太騎手(JRA)の10番人気ケイティーテンリウをクビ差交わしたところがゴールだった。「よかった、完璧!」と満面の笑みを浮かべて引き上げてきた赤岡騎手。
 結果的には、4着、2着だった戸崎圭太騎手と、2着、4着だった森泰斗騎手(船橋)が合計ポイントでトップの65。同点の場合は、第2戦のヴィクトリーチャレンジでの着上位者を優先するというルールがあることから、戸崎騎手の優勝が決まった。
 2位に森騎手。第1戦で優勝した山本騎手は、2戦目で僅差の7着となり、63ポイントを獲得して3位に終わった。
 「勝って優勝したかったですね。同ポイント1位というのもスッキリしませんが、それでも優勝できたことはうれしいし、運もよかったです」(戸崎騎手)。
 戸崎騎手と森騎手は地方競馬教養センターの同期生としても知られるが、こういう表彰式で、それぞれの勝負服で並んでいる姿というのも、今となっては非常に新鮮な光景だ。今年の戸崎騎手はJRA年間最多勝記録更新(216勝)を目標にすることを公言し、森騎手の地方全国リーディング奪還も見逃せない。今年もこの同期生が競馬サークル全体を盛り上げていくことになるだろう。
 なお昨年地方全国リーディングに輝き、初出場を果たした吉村騎手は、「いつも一緒に乗らない皆さんと乗せていただけて、みんな上手ですし、僕自身は左回りに乗る機会はそんなにないので、とても新鮮なものがあっていい経験ができました」。こういうレースは馬運もあるだけに、3名が同点も第2戦の着順により最下位に終わってしまったのは残念だったが、今後に向けて前向きだった。
 また「いろんな競馬場で乗ってみたいという気持ちはずっとありましたが、まずは地元のリーディングを獲ってからと思っていたので、これからは機会があったらいろんな競馬場で乗ってみたいです」とも語った。全国リーディングの称号を引っ提げて、これからの吉村騎手も楽しみだ。
取材・文:高橋華代子
写真:早川範雄(いちかんぽ)

コメント

総合優勝
戸崎圭太騎手
(JRA)

地方時代の勝負服を今でもこうやって着せていただけて、感激しながら乗っていますし、これを着て表彰台に上がれたのはすごくうれしいです。感慨深いものはありまね。毎年いいレースが繰り広げられるこのレースに参加できるのは光栄なことなので、来年も来ることができるように頑張ります。

総合2位
森泰斗騎手
(船橋)

2戦目は流れが向かなかったですが、両方とも自分のしたいレースはできたので後悔はありません。ただ、(戸崎騎手と)同じポイントだったのに優勝できなかったことは残念です。(戸崎騎手は)同期生ですが、JRAでいっぱいお金を稼いでいるので、200万円くらい置いていって欲しいです(笑)。

総合3位
山本聡哉騎手
(岩手)

首位を守りたかったですが、上手な人たちばかりなので、こればかりはうまくいかないですね。1戦目に強い馬に乗せていただいて、勝つことができたのは気持ちとして楽です。地元がオフシーズンで競馬はそんなに乗っていませんでしたが、佐賀競馬場で乗せていただいていたのもよかったです。次回は優勝目指します。