ダートグレード競走を中心としたレースハイライトや、シリーズ競走等の特集、各種連載など盛りだくさんの情報をお届けします。
font
標準

レースハイライト

第36回 フェブラリーステークス GⅠ

2019年2月17日(日) JRA東京競馬場 ダート1600m

理想のペースに持ち込み逃げ切る 未勝利から7連勝でダートの頂点に

 2018年のJRA賞・最優秀ダートホースにしてNARグランプリ2018でもダートグレード競走特別賞を受賞したルヴァンスレーヴの不在は残念だったが、コパノキッキングに騎乗する藤田菜七子騎手がJRAの女性騎手としてGⅠ初騎乗となることは、一般のニュースでも伝えられるほどの注目となった。
 ひとつ前のアメジストステークスのレース中からパドックはファンでぎっしり。穏やかな好天に恵まれたこともあって、この日の東京競馬場の入場人員61,141名は、前年同日比で121.8%。この日が最終日となった第1回東京開催8日間の売上合計は前年比でわずかに100%に届かなかった(99.4%)にもかかわらず、フェブラリーステークスGⅠの売上が117.2%と大幅アップというのは、藤田騎手のGⅠ初騎乗という効果もあっただろう。
 一方で注目となったのは、6連勝で東海ステークスGⅡを制したインティで、単勝2.6倍で1番人気の支持を受けた。
 抜群のダッシュを見せたのはサンライズソアだったが、ダートコースに入ってじわじわと先頭に立ったのがインティだった。ペースを握ったインティの手応えは直線を向いても十分で、残り400メートルあたりから後続を離しにかかった。これに迫ったのは、差のない2番人気に支持されていたゴールドドリームだけ。馬群の中から抜け出し、徐々に差を詰めたものの、インティの影をとらえたまで。着差はクビだったが、危なげのないインティの逃げ切りとなった。
 鞍上の武豊騎手は、「思い通りのラップを刻んでいいペースで運べました。直線、ゴーサインを出したらいい伸びで、最後は馬がレースをやめようとしていましたが、それでも押し切れると思った」というから、着差以上の完勝だったようだ。
 インティの勝因は、武騎手のコメントにもあるとおり、マイペースの逃げに持ち込んだこと。「前半3ハロンが34秒台になると厳しいので、35秒台に抑えたい」とレース前に話していたという野中賢二調教師。「サクセスエナジーが行けば2番手でもいいと思っていた」(武豊騎手)ということだが、競りかけてくる馬もなく、前半600メートル通過が35秒8、さらに1000メートルが60秒2というラップは、逃げ馬にとっては楽なペース。ゴールドドリームは4コーナー中団からメンバー中最速の上り34秒8という脚を使ったが、それで届かないのでは仕方ない。3着のユラノトには4馬身差をつけており、負けてなおチャンピオン級の強さは見せた。
 注目のコパノキッキングは、4コーナー最後方から追い上げて5着。距離不安が言われていたが、小林祥晃オーナーは「1200メートルの競馬をしよう」と藤田騎手に伝えたという。それゆえ最後方でじっと我慢。それが、ゴールドドリームに次ぐ上り35秒2という直線大外からの追い上げにつながった。ペースがゆったりしていたぶん、向正面では掛かるような場面もあり、「後半に脚を温存していたので最後は伸びてくれましたが、もう少しペースが流れてくれれば」と、藤田騎手は悔しそうな表情だった。
 勝ったインティは、デビュー2戦目の未勝利戦から7連勝でGⅠ初制覇。途中1年近い休養があったのは「体質が弱くて思ったように使えなかった」(野中調教師)ため。もともと繋の部分が緩く球節が地面につくほどで、デビュー戦で9着に負けたときは両後ろ脚とも落鉄していて、球節に穴が開くほど擦れていたという。東海ステークスGⅡ前の調教でも脚を痛がることがあり、体質改善をしながらGⅠまで駆け上がった。
 武豊騎手にはフェブラリーステークスGⅠ・5勝目となったが、野中賢二調教師はカゼノコでのジャパンダートダービーJpnⅠ制覇があったものの、2008年の初出走以来初めてのJRAGⅠタイトル。2008年から日本で供用された父ケイムホームにとっても、アメリカで残してきた産駒も含めて初めてのGⅠ勝利。浦河で家族で牧場を営む山下恭茂さんには、GⅠ初勝利どころか前走の東海ステークスGⅡ がJRA(グレード制導入後)での初重賞勝ちだった。
 インティの勝利は、自身のみならずさまざまな人や馬に初めてのGⅠタイトルをもたらすこととなった。

的場文男騎手トークショー&フェブラリーステークスレース回顧の様子
取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(早川範雄・築田純)