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レースハイライト

第51回 ばんえい記念

2019年3月24日(日) 帯広競馬場

馬場状態を味方に王者を振り切る 1トン初挑戦の良血馬が頂点に

 今冬の十勝地方は雪が少なく、郊外の畑などにもほとんど雪が残っていない状態だった。しかしこの日は朝から断続的に雪が降り、時折吹雪くようなことも。気温も下がり、昼間の最高気温でようやく3度、ばんえい記念が発走する日没前には0度を下回っていたと思われる。そんな天候が、レースの流れを少なからず左右することになった。
 断然人気は、やはりオレノココロ。ばんえい記念史上3頭目の3連覇に加え、ばんえい重賞最多勝記録更新となる重賞22勝目も期待された。
 第2障害。まるで息を合わせたかのように、コウシュハウンカイ、オレノココロ、フジダイビクトリーが仕掛けると、ほんの一瞬遅れてセンゴクエースも続き、人気上位4頭の挑戦が始まった。
 四腰ほどで最初に天板に脚をかけたのが、2016年の覇者で、この日の最終レース後に引退式が予定されているフジダイビクトリー。センゴクエースはヒザをついたもののすぐに立て直し、初めて経験する1トンのソリを上げた。そのままフジダイビクトリーが先頭で障害を降りると、やや差があって、センゴクエース、コウシュハウンカイ、オレノココロという順で続き、早くも実績馬4頭の勝負となった。高重量戦で、障害を降りてからの平地の脚が抜群のオレノココロにとっては、前とのタイミングを図りながらの4番手はおそらく想定どおりだったはず。
 しかし際立っていたのはセンゴクエースで、1トンのソリをまったく苦にしないかのように、残り30メートルあたりでフジダイビクトリーを並ぶ間もなく交わして先頭へ。オレノココロも同じような勢いで歩き、じわじわと差を詰めた。
 第2障害を降りてから一度も止まらなかった2頭の勝負は、センゴクエースがそのまま振り切り、オレノココロは1馬身近くまで差を詰めたところがゴールとなった。
 勝ちタイムは3分35秒0。ばんえい記念が3月下旬の開催となった2006年以降で、5.1%という湿った馬場で行われた2012年(勝ち馬ニシキダイジン)の2分34秒0という超スピード決着に次ぐ2番めのタイム。雪が降ったといっても積もるほどではなく、水分量は1.2%とやや乾いた状態。しかし冬の馬場状態は、同じ水分量でも気温によって変化することがあり、前述のとおり0度前後という水分が凍り始める気温が、このスピード決着を演出することとなったようだ。
 「あのタイミングなら行けると思った。(3分35秒0は)想定外の速さ。こっちも止まらずに歩いていましたからね」とはオレノココロの鈴木恵介騎手。勝ったセンゴクエースの工藤篤騎手にしても、4分近いタイムでの勝負を想定していて「まるで(それほど重くない)特別戦を走っているようだった」と振り返った。3着だったフジダイビクトリーの菊池一樹騎手は、「先手を取って早く展開をつくろうと思って、先頭で障害を降りて、見せ場はつくれたと思います」と満足げな表情を見せた。
 出走8頭中7頭がゴールしても第2障害に残っていたのが、B級格付からの挑戦だったドルフィン。7着カンシャノココロから4分以上遅れはしたものの、懸命のゴールは万雷の拍手で迎えられた。
 勝ったセンゴクエースは、満を持して7歳でのばんえい記念初挑戦。今シーズン重賞未勝利でではあったものの、帯広記念でのきわどい2着で手応えをつかんでいた。父はダントツ・リーディングのウンカイ。母は牡馬一線級とも互角に戦い重賞13勝を挙げたサダエリコ。2歳時から同世代同士では無敵で重賞を勝ちまくってきた、ばんえい随一の良血馬が、ついに頂点に立った。

地方競馬全国協会理事長賞の副賞として畜産品が贈呈された

3連覇がかかっていたオレノココロは2着
取材・文:斎藤修
写真:浅野一行(いちかんぽ)

コメント

工藤篤騎手

オレノココロより先に行かないと勝てないので、先行して行こうとは思っていました。自分から行きたがるような感じで、この馬のレースになったと思います。(第2障害で)ヒザをついても焦らず、ふた呼吸くらい入れて、それからの反応がよかったので、これならと思いました。

槻舘重人調教師

ここに向けての調教の状態がすごくよくて、あっと言わせるレースはできるのかなという感じはありました。思ったよりペースが落ち着いた感じで、タイム的に速い決着になったのはよかったと思います。オレノココロも絶好調でしたが、逆に馬場状態が不利だったかなという気がします。