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レースハイライト

第61回 道営記念

2018年11月15日(木) 門別競馬場 2000m

直線後続を突き放し6馬身差圧勝 門別の古馬中距離重賞完全制覇

 9月の胆振東部地震の影響で、道営記念は予定より1週遅れで行われた。この日は午後8時で気温1.8度と、1週ずれるだけで寒さも厳しくなる。
 地元・富川高校吹奏楽部のファンファーレで今年最後のレースがスタート。レースの注目は重賞5連勝中のスーパーステション。すぐに内のセンコーファーストがぴったりとスーパーステションに並び、スカイロックゲートも外から馬体を併せに行った。それでもスーパーステションの阿部龍騎手は「絡まれるかと思ったが、馬のリズムでレースを運べた」
 3コーナーでは、ドラゴンエアルとタービランスが騎手の気合に応えて先頭に迫ろうとするが、阿部騎手は手綱を持ったままで他馬を寄せ付けない。「ならば俺が」とばかり4コーナー手前で動き、闘いを挑んだのがハッピースプリント。今シーズンも北海道リーディング独走の田中淳司調教師が自信の仕上げをもって送り出し、名手・宮崎光行騎手がプライドをかけて外から襲いかかる。直線でスーパーステションは初めてのムチに応え、ぐいぐいと後続を突き放してゴール。2分5秒3の好タイムで単勝1.3倍の人気に応えた。
 6馬身差がついての2着はタービランス。4コーナーで一旦外から被せられて位置取りを下げるも、再度追い込んだドラゴンエアルが3着。ハッピースプリントは4着だった。
 泥だらけの人馬が戻ってくる中、先頭を譲らなかったスーパーステションだけがきれいなまま。門別のマイル~中距離重賞完全制覇の快挙となった。
 道営記念初制覇を圧勝で飾った阿部騎手は「ほっとした」とインタビューで感極まり、言葉をつまらせた。角川秀樹調教師は、同日行われたブロッサムカップをイージーナウ、前日のイノセントカップをエムオータイショウで勝ち、2日間で重賞3勝。なかでも騎手時代に勝てなかった道営記念の勝利(3勝目)は“格別”と喜んだ。馬主・生産者であるグランド牧場の中倉和幸マネージャーはスーパーステションの当歳時について「手はかからないがやんちゃな馬。馬体もあった」と愛馬の成長に目を細めた。
 レース後は恒例となったファンと騎手との交流会。阿部騎手が持っていたホッカイドウ競馬の新人騎手最多勝記録を更新する57勝(ほかに他地区で1勝)を挙げ、新人としては異例の道営記念騎乗を果たした落合玄太騎手は「楽しめた。さらに腕を磨いていきたい」と笑顔。3年連続4度目の北海道リーディングとなった桑村真明騎手、この日調教師試験合格が発表された櫻井拓章騎手らが撮影やサインに応じていた。
 今年は胆振東部地震の影響で7日間82レースが、濃霧で4レースが中止となったにもかかわらず、発売額は前年対比102.0%の251億4343万円。地震から数日間、震源地にほど近い門別競馬場は断水が続き、1日2、3回訪れる給水車で馬の管理をするなど苦労もあった。交流会後、五十嵐冬樹騎手会長は「地震で日常を取り戻せていない人もいる中、最後まで開催ができた」と感謝の言葉を述べた。

取材・文:小久保友香
写真:浅野一行(いちかんぽ)

コメント

阿部龍騎手

ほっとしています。自分の走りをするだけだと思っていました。最後の直線は追ってくる馬の脚音も聞こえなかった。1戦ごとに走りがよくなっています。今日も強かったです。

角川秀樹調教師

スタートで絡まれるかと思ったが自分のレース運びができた。テンよし、しまいよし。言うことない。無事に走ってくれて感謝しています。今後は名古屋グランプリと東京大賞典に申し込みます。