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  • 第34回
  • 全日本新人王争覇戦

1.21 (火) 高知

2名が同ポイントで並ぶ
 2着2回の岩田騎手が優勝

第1戦

第2戦

リポート動画

免許取得後5年以内の若手騎手たちによって争われる全日本新人王争覇戦。今年は選出されていた岩本怜騎手(岩手)と多田羅誠也騎手(高知)が負傷のため出場辞退。木本直騎手(兵庫)が補欠繰上りでの出場となったが、2名の欠場により例年より1名少ない11名での戦いとなった。

多田羅騎手は検量室に姿を現し、「調教で肩を脱臼しましたが、今朝から少しずつ調教を再開しました」と嬉しい報告。「新人王に乗りたかったんです」と悔しそうで、来年こそはとの思いを強くした。同期の福原杏騎手(浦和)も前日の大井第7レースで落馬したが、「大丈夫です!」と高知入り。彼らデビュー1年目の遠征組3名と地元高知の同期は笑顔で集合写真を撮った。

また、「卒業以来、会っていなかった同期とも2年ぶりに一緒に乗れるので楽しみです」と話したのはデビュー2年目の出水拓人騎手(佐賀)。こちらも同期が4名出場とあって、再会を楽しんだ。そんな中、唯一のデビュー5年目はヤングジョッキーズシリーズ(YJS)初代王者の臼井健太郎騎手(船橋)。西日本の騎手はYJSで高知での騎乗経験がある人も多いが、東日本の騎手たちにとっては初コース。臼井騎手と福原騎手は第1レースを外ラチ沿いまで行って観戦した。「ちょうどいいアングルから内をどのくらい空けるかや砂の深さを見ることができました」と臼井騎手。そのレースにエキストラ騎乗した落合玄太騎手(北海道)は「イメージ通りの馬場でした」と感触をつかんだ。

第1戦は岩田望来騎手(JRA)が単勝1.6倍と抜けた1番人気。2番人気に石堂響騎手(兵庫)が4.5倍で、単勝10倍以下は2頭のみだった。

大外枠から出ムチを入れて先手を奪ったのは出水騎手で、ピタリと半馬身外に岩田騎手。ゆったりした流れに見えるものの縦長の展開で、4コーナー手前で岩田騎手が先頭に躍り出た。しかし、直後で機をうかがっていたメイプルクリークと西村淳也騎手(JRA)が外からすかさず並びかけ、直線で2馬身半離して勝利。これには同馬を管理する中西達也調教師も「牝馬ながらモッサリした面がありますが、上手く乗ってくれました」と笑みをこぼした。

3着は後方3番手から差し脚を伸ばした吉井章騎手(大井)、4着は「同世代同士のYJSではいい結果を残せなかったので、その借りを返したいです」と意気込んでいた齋藤新騎手(JRA)、5着は「自分の責任かもしれませんが、思ったよりも伸びなくて」と塚本涼人騎手(岩手)だった。2番人気に支持された石堂騎手は「高知は相性がいいはずなんですが、ショックです」と肩を落とした。

第2戦は1戦目とは対照的に混戦ムードで、単勝10倍以下は出走馬の過半数を占める6頭。近走で掲示板に載った馬が多く、乗り方次第でどの馬が勝ってもおかしくない雰囲気だ。

スタートして横一線の先行争いからハナを取ったのは石堂騎手。2番手に西村騎手、その外に岩田騎手、直後に吉井騎手と4頭が先団を形成した。4コーナーにさしかかり、またしても先頭に立ったのは岩田騎手。そのまま押し切るかと思われたが、直線半ばで彼の内側にできたスペースを突いて出水騎手が伸び、1馬身差で勝った。

3着に「3~4コーナーの手応えが良くて『もしかして!?』と思ったのですが」と、石堂騎手が粘り、4着西村騎手、5着に「手応えはずっと良かったですが、難しかったです」と木本騎手だった。

2戦を終えて、ともに掲示板に載った岩田騎手と西村騎手が表彰台に上がることは明白な状況。本人たちもそれは気づいていたが、ポイント計算の結果、なんと両者が同じ70ポイントで、そうなれば気になるのが何を基準に優勝者を決めるかということ。規定では【第2戦の成績上位者】ということで、第2戦で2着だった岩田騎手が第34代新人王に輝いた。

それに対し、西村騎手は「(第1戦を)勝ったのに優勝じゃないんですか!?」とやりきれない口調。昨年よりも1着と2着の付与ポイント差が10縮められた分、2着2回の岩田騎手の優勝が叶ったというわけだ。その言葉を聞いた岩田騎手も「勝たずに優勝というのは、なんだか複雑で申し訳ないです」と曇った表情。しかし、それは「勝って表彰台に立ちたい」というプロ意識の表れでもあるだろう。

一方、表彰式で3位が出水騎手だと発表されると、「やったぁ!」と喜んだのは彼の応援団と思しき人たち。それぞれに思いの異なる表彰式となった。

  • 取材・文
  • 大恵陽子
  • 写真
  • 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

総合優勝 岩田望来騎手(JRA)

1戦目は思い通りのレースができましたが、直線で馬が遊んでしまいました。2戦目は早めに動いたこともあり最後まで馬を集中させられず、ともに僕の責任です。デビュー1年目の昨年はたくさん注目いただき、乗せていただきました。今年が本当の勝負の年。将来は父のように日本ダービーを勝ちたいです。

総合2位 西村淳也騎手(JRA)

1つでも上の着順を、という思いで騎乗していました。1戦目を終えて、同じくらいの得点を取れば優勝できると思い頑張ったのですが、2位。2戦目で3着の石堂騎手さえ交わしていれば単独トップで優勝だったのか……と悔しいですが、これが実力なので、また競馬にいっぱい乗って頑張ります。

総合3位 出水拓人騎手(佐賀)

1戦目は残念な結果で、このまま終わってはダメだと思って2戦目に臨みました。2戦目は本命馬を見る位置で、ついて行けば道が開くだろうと思っていました。表彰式では母が泣いているのが見えました。地元でたくさん乗せていただき、レースでの引き出しが増えました。もっと腕を磨きたいです。