1. Presented by National Association of Racing
  2. 地方競馬のオンライン情報誌ウェブハロン
  3. ダートグレード競走を中心としたレースハイライトや、シリーズ競走等の特集、各種連載など盛りだくさんの情報をお届けします。
  • 第30回
  • 東京スプリント JpnⅢ

4.10 (水) 大井 1,200m

進化する9歳馬が若馬を圧倒
 得意の舞台で意地を見せる

2月17日のフェブラリーステークスGⅠで、藤田菜七子騎手を背に5着に食い込んだコパノキッキング。その直後、女性騎手として初となるグレード制覇を目指し、同じコンビで東京スプリントJpnⅢへ向かうことが明らかにされた。NARグランプリ2018の年度代表馬キタサンミカヅキもそこへの参戦プランが組まれていたこともあって、同25日に行われたNARグランプリ表彰式では、その話題で持ちきり。レースまで1カ月半もあるというのに、早くも両者の対戦に期待が寄せられていた。

その後、2頭とも順調な仕上がりを見せ、いよいよ対決の時を迎えた。しかし、単勝1番人気に推されたのは、今回が重賞初挑戦のヒロシゲゴールド。3連勝中の勢いが買われたのはもちろんだが、もっとも大きな要因は大井コースの馬場状態にあった。降りしきる雨で、一面に水が浮く不良馬場。2番人気のコパノキッキングも、4番人気に甘んじたキタサンミカヅキも、持ち味は切れのある末脚。前残り気味だったこの日の傾向からも、不安視されるのは仕方がなかった。

そして迎えたスタート。その瞬間に場内からどよめきが起きる。コパノキッキングが痛恨の出遅れを喫してしまったのだ。一方で好ダッシュを見せたのは、大方の予想通りヒロシゲゴールドと、なんとキタサンミカヅキ。これまでは後方待機策が多かったキタサンミカヅキだが、今までにない行きっぷりを見せて2番手につける。注目の2頭の明暗が、ここでくっきり分かれた。

軽快なラップを刻んで逃げるヒロシゲゴールドに、キタサンミカヅキも難なくついていく。直線を向いてからも2頭の攻防は続いたが、残り100メートルを過ぎたあたりでキタサンミカヅキが底力を発揮して抜け出した。そこへコパノキッキングが猛追。差し切る勢いではあったが、その差が1馬身まで詰まったところでフィニッシュラインを迎え、地方の年度代表馬が意地を見せて勝利した。

キタサンミカヅキはこれが重賞6勝目で、うち5勝が大井1200メートル。久々の実戦ではあったが、“ここは俺の庭だ”と言わんばかりの力強い走りで、4歳馬2頭をねじ伏せた。ただ、そうはいっても2番手からの競馬は想像をはるかに超えるもの。森泰斗騎手の柔軟な騎乗とともに、9歳にして進化を続けるキタサンミカヅキには驚かされた。

そんな地方のエースコンビに、女性騎手初のグレード制覇を阻まれた藤田菜七子騎手とコパノキッキングだったが、爆発的な末脚で2着に追い込み、能力の高さを示した。「ゲートでの体勢は悪くなかったけど、少し出負けしてしまったし、初めてのナイターもあってテンションが高かった。もっと走れる馬」と藤田騎手。ただ、もともとゲートが安定しない馬で、しかも勝ち馬が地方の看板馬なのだから、十分に胸を張れる結果だろう。グレード制覇も、そう遠くないはずだ。

馬場傾向を考慮して無理に抑えなかった森騎手とキタサンミカヅキ。そして、馬場をものともせずに押し上げてきた藤田騎手とコパノキッキング。それぞれの強さを、それぞれに発揮した一戦だったといえる。今後も繰り広げられるだろう両者の対戦が、スプリント路線をより熱くするに違いない。

  • 取材・文
  • 大貫師男
  • 写真
  • 岡田友貴(いちかんぽ)

Comment

森泰斗 騎手

大井が舞台ということで、今回は譲れない気持ちでした。今日は馬が行く気になっていたから、あえて下げることもないと思って2番手につけました。地方の意地を見せることができましたね。(藤田)菜七子騎手を負かしてしまって申し訳ないという気持ちもありますが、これも勝負なので。

佐藤賢二 調教師

十分に乗り込んでいましたが、相手関係を見て半信半疑な面もありました。2番手の競馬でしたが、無理せずついていけたし、騎手もうまく乗ってくれたと思います。直線では後ろから来る馬もいたので、差されなければいいなと思っていました。次走は未定。馬の様子を見ながら使っていこうと思います。