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  • 第21回
  • ジャパンダートダービー JpnⅠ

7.10 (水) 大井 2,000m

無敗で3歳ダートの頂点に
 羽田盃馬が意地の3着確保

人間に置き換えてみても分かることだが、たとえ全兄弟であっても個性は異なるもの。それでいて、よく似た面も併せ持っている。デビューから3戦無敗でここに挑んだクリソベリルは、2013年のジャパンダートダービーJpnⅠを制したクリソライトの全弟。兄と同様、息の長い末脚を武器に、GⅠ/JpnⅠの舞台に駒を進めてきた。

これまでの圧倒的なレースぶりに加え、無敗の期待感もあってか、単勝は1.2倍。他の出走馬もそれぞれに実績があり、非凡な能力も持ち合わせているのだが、予想以上に人気が集中。ただ、そんなプレッシャーも、クリソベリルにとっては“どこ吹く風”だった。

外枠もあって、道中は前が開けた状態。東京ダービー馬ヒカリオーソ(川崎)が平均ペースで逃げるなか、若干行きたがるそぶりを見せたが、川田将雅騎手がなだめながら6、7番手を追走する。3コーナーで仕掛けたデルマルーヴルを追いかけるかたちで進出すると、直線で持ち前の末脚を繰り出し、最後は3馬身差をつけて3歳ダートの頂上決戦を制した。

兄のクリソライトは先行集団から抜け出し、7馬身差の圧勝劇。着差、時計ともに兄が上回っているが、当時より若干時計がかかる今の馬場で、後半3ハロンはくしくも兄と同じ37秒4。スピードに乗ってからの力強さは弟が上回っている印象を受けた。「立ち姿も含め、まったく違うタイプですね。兄はどちらかといえばもまれ弱い面もありましたが、この馬はそういったところが見られないですし、競馬もしやすい感じです」と音無秀孝調教師。3歳夏の時点では、弟のほうが完成度が高いといったところか。

2着はデルマルーヴル。UAEダービーGⅡ(4着)から帰国後の初戦だったが、疲れも見せず、先団から早めに仕掛ける競馬で素質の高さを示した。戸崎圭太騎手は「手前を替えなかったりして、まだ若さを残しているから、今後が楽しみです」と話す。全日本2歳優駿JpnⅠのときもそうだったが、レースぶりにはまだまだ幼さを残している。それだけにキャリアを積んでの伸びしろがありそうで、さらなる飛躍も十分に期待できる。

地方勢の最先着は、船橋のミューチャリー。メンバー最速となる後半3ハロン37秒1の末脚を繰り出し、4コーナー11番手から3着まで追い込んだ。御神本訓史騎手は「直線で挟まれたときに少しひるんだけど、最後にまた伸びた。2着はあったかもしれない」と悔やんだが、羽田盃馬の意地は十分に感じ取れる内容だった。東京ダービーはスローペースに末脚を封印されて2着だったが、ペースが上がりやすいダートグレードでは競馬がしやすいタイプ。今後も積極的な挑戦を待ちたい。

4着に船橋のウィンターフェル、5着にはヒカリオーソと地元の南関東勢が続き、2歳時から高い素質を示してきた各馬が順調に能力を高めている印象を受けた。1、2着こそJRA勢に譲ったが、GⅠ/JpnⅠで掲示板に地方勢が3頭も名を連ねたのは久しぶりで、しかもJRA勢の出走枠が7頭だけに価値も高い。地方馬全体のレベルが底上げされている証明だろう。

ただ、そうはいっても今回はクリソベリルの強さが際立っていた。過去20回のジャパンダートダービーJpnⅠで、無敗でこのレースを制したのは01年のトーシンブリザード(船橋)のみ。そんな偉業を成し遂げながらも、川田騎手は「ポテンシャルの高さにまだ身体が追いついていない感じがあります。大人の身体になってくれば、日本一を争う馬に成長してくれるでしょう」と、さらなる伸びしろを口にする。兄が8歳まで一線級で戦い続けたことからも、成長力と持続力に富んだ血統。兄と同様に、そして兄とは違う強さを発揮して、ダート競馬の歴史に名を刻んでほしい。


  • 地方競馬全国協会理事長賞の副賞として
    畜産品が贈呈された

  • 地方馬最先着は3着のミューチャリー(大井)
  • 取材・文
  • 大貫師男
  • 写真
  • 早川範雄(いちかんぽ)

Comment

川田将雅 騎手

前半は少し進みすぎるくらいだったので、なだめながら乗っていました。身体的に仕方がない部分もありますが、動くのに少し時間がかかりましたね。大人の身体になってくれば、さらにいい走りができるようになるのは間違いありません。日本一を争えるような馬に成長してほしいですね。

音無秀孝 調教師

前走で先行していくような競馬をしたので前進気勢でしたが、あのまま先行していったら、しまいがなくなってしまいますからね。ジョッキーがうまく乗ってくれたと思います。兄のようなもまれ弱さもないですし、立ち姿も、性格も、兄弟でまったく違うタイプです。今後はオーナーサイドと相談して決めます。