

~新競走体系が与える効果を様々な角度から紐解く~
文:古谷剛彦

ディクテオン(コリアカップ)
9月7日、韓国・ソウル競馬場で行われたコリアカップG3に、大井からディクテオンが参戦し、見事な差し切り勝ちを演じた。地方馬による海外でのグレード競走優勝は、2006年シンガポール航空国際カップG1のコスモバルク以来19年ぶり2頭目。ダート競走では史上初の快挙だった。
2016年に創設されたコリアカップG3とコリアスプリントG3には、ほぼ毎年、日本からダートの有力馬が参戦している。特に近年では、前者が1着賞金8億ウォン(約8500万円)、後者が同7億ウォン(約7440万円)と、G3という格付けの割りに賞金が高いこともあるだろう。また両レースとも、昨年からアメリカのBC(ブリーダーズカップ)チャレンジシリーズの対象レースとなり、コリアカップG3優勝馬にはBCダートマイルG1、コリアスプリントG3優勝馬にはBCスプリントG1の優先出走権が与えられる。昨年はコリアスプリントG3を制したリメイクが、BCスプリントG1に挑戦した。
国内では一昨年から昨年にかけてダート競走の体系整備が行われた。古馬中距離路線は、川崎記念JpnIが冬から春へ移行し、上半期の総決算として定着している帝王賞JpnIへとつながるように配置された。芝で言えば、大阪杯GIから宝塚記念GIのようなイメージだ。その元年に、ライトウォーリアが川崎記念JpnIを逃げ切り、帝王賞JpnIにも出走。そして、地方所属馬として初めてコリアカップG3に挑戦した。体系整備2年目の今年、ディクテオンは川崎記念JpnIで2着に追い込み、帝王賞JpnIでも4着に健闘。この内容を踏まえ、荒山勝徳調教師はコリアカップG3への挑戦を視野に入れ、オーナーサイドに提案したそうだが、双方の思いが一致したことで海外遠征を決断した。
2年連続で地方所属馬が選出されたが、川崎記念JpnIと帝王賞JpnIで好結果を出せば高いレーティングを得られ、選ばれる可能性が高くなることを証明した。川崎記念JpnIの時期移行は賛否があった。冬に行われていた当時は、ドバイワールドカップG1への壮行レースとした意味合いが強く、2023年にはウシュバテソーロが川崎記念JpnIからドバイワールドカップG1を連勝した。その翌年、4月に移った川崎記念JpnIは、ドバイとほぼ同じ時期での施行となることで有力馬が分散し、JpnIとしては少々手薄な印象を与えた。しかし、ライトウォーリアは川崎記念JpnI優勝から王道を歩み、その流れの中で同じ左回りの中距離で争われるコリアカップG3に目を向けた。2年連続で春のビッグレースを歩んだ地方所属馬がコリアカップG3に出走した流れは、意外な成果と言えるのでないか。
コリアカップG3優勝がBCダートマイルG1の出走権獲得という点では、レースの厳しさなどを考えると直結しづらく、ディクテオン陣営はレース後のインタビューでも、BCへの言及はなく、状態面を考慮した上でJBCクラシックJpnIを目指すと荒山調教師がコメントしていた。レースの格で言えば、コリアカップG3より東京大賞典GIの方が明らかに上だ。しかし、海外のグレード競走を地方所属馬が優勝したインパクトは相当大きい。
JRA所属馬にとっては、ダートの主要レースで思うようなローテーションが組めない陣営が多い中、地方所属馬ならレースプランを組み立てやすいメリットがある。ライトウォーリア、ディクテオンはともにJRAではオープンで活躍しており、ディクテオンはダートグレードを3勝していた。このような中央から地方への移籍はどんどん増えており、オーナー側も活躍しやすい環境を求める時代になってきた。「海外ではJRAも地方も関係なく、同じホースマンとして見ている」と、一昨年に浦河で行われた牧場で働く若い世代に向けた講演で、矢作芳人調教師の言葉を思い出す。ディクテオンの勝利は、カテゴリー別にダート競馬を整備し、スペシャリストを育みやすい環境を整えた成果を感じるとともに、多くの地方競馬関係者に希望を与えた。
写真:森内智也
PROFILE

古谷剛彦
(ふるや たけひこ)
1975年東京都出身。2001年からホッカイドウ競馬パドック解説者となり、北海道を中心に活動している。グリーンチャンネル『地方競馬中継』『アタック!地方競馬』『KEIBAコンシェルジュ』『馬産地通信』にレギュラー出演。ホッカイドウ競馬LIVE『なまちゃき』解説者。フリーペーパー『うまレター』南関東競馬NEWS担当。監修・著書に『地方競馬完全攻略ガイド』。共著に『交流重賞徹底攻略!地方競馬パーフェクトブック』。