SPECIAL COLUMNSダート競馬、新時代へ

~新競走体系が与える効果を様々な角度から紐解く~

文:古谷剛彦

VOL.22

ゴールドアリュールから発展するダート系種牡馬
その父系を伸ばすイグナイター

イグナイター(JBCスプリント)

イグナイター(JBCスプリント)

 根幹距離と言われるマイル戦。国内ダートはフェブラリーステークスGI、かしわ記念JpnI、マイルチャンピオンシップ南部杯JpnIの古馬が出走できる3つのレースに加え、全日本2歳優駿JpnIが2歳ダート王決定戦に位置付けられている。フェブラリーステークスGIは1997年、JRA初のダートGIに昇格した。それまで、ダートのビッグレースを勝っても、種牡馬としての価値は決して高くない時代が続いていた。しかし、フェブラリーステークスGIの昇格とともに、地方競馬も巻き込んでダートグレードが整備された時でもあり、まだ評価されていたとは言い難かったものの、徐々にその考えにも変化が見られた。そのきっかけを作ったのは、アグネスデジタルだった。

 アグネスデジタルは、1999年全日本3歳優駿GII(当時)を制すなど、2歳時の3勝はすべてダートだった。しかし、3歳時の2000年にはマイルチャンピオンシップGIを勝って芝マイルのチャンピオンに君臨。2001年秋から2002年2月まで、マイルチャンピオンシップ南部杯GI→天皇賞・秋GI→香港カップG1→フェブラリーステークスGIと国内外のビッグレースを4連勝。2003年の6歳時には安田記念をコースレコードで制した。芝・ダート、そしてマイルから中距離までオールマイティな活躍を見せた外国産馬は、21世紀に入ったばかりの新時代に革命を起こした。

 当時のダート競馬は、芝で頭打ちになった馬が目先を変えてダートに向かう流れが多かった。だからこそ、2歳でダートチャンピオンになった馬が、芝のビッグレースでも優勝する馬が出てくるとは夢にも思わなかった。アグネスデジタルのような幅広い活躍を見せる馬が登場すると、それに負けじとより強い馬を生産しなければならない。ダート界のスペシャリストが誕生する時代へ突入する。

 ほぼ同じ時代に、ダート専門のチャンピオンホースとしてゴールドアリュールが現れた。フェブラリーステークスGIが中山ダート1800mで施行された時(2003年)の勝ち馬で、他にジャパンダートダービーGI、ダービーグランプリGI、東京大賞典GIも優勝。マイル実績はなかったものの、ダート界に旋風を起こす強さを誇った。サンデーサイレンス後継で数少ないダート専門の種牡馬という個性が、馬産地での人気を博した。

 その成果が、自身の活躍した舞台とは異なる、マイルでのトップホースを続々と輩出したこと。フェブラリーステークスGI優勝馬にはエスポワールシチー、コパノリッキー(2回)、ゴールドドリームの3頭。エスポワールシチーとコパノリッキーは、かしわ記念JpnIをそれぞれ3勝、マイルチャンピオンシップ南部杯JpnIも複数回優勝。ゴールドドリームはかしわ記念JpnIを連覇した。その他、オーロマイスターとサンライズノヴァがマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIを制している。

 ゴールドアリュールは、ダート系種牡馬の存在をクローズアップさせた最初の馬と言っても過言ではない。サンデーサイレンス異色の後継が、その個性を発揮して父系を伸ばしている。

 ゴールドドリームは、初年度産駒がデビューした昨年、地方ファーストシーズンサイアー1位に輝いた。その背景には、初年度から200頭を超える種付をこなす人気を博し、グランジョルノがJRA所属馬としてJBC2歳優駿JpnIIIに出走し、ソルジャーフィルドの2着に健闘した。地方所属馬は全国で活躍を見せ、ミラクルヴォイスがネクストスター門別、ミトノドリームがネクストスター佐賀を優勝。ベラジオドリームはネクストスター門別で2着に食い込み、産駒ワンツーを決めた。シビックドリームは、ハイセイコー記念2着など賞金の高い南関東で活躍。高知のトサノマイヒメは、佐賀遠征でフォーマルハウト賞を制した。年が明けると、ジャナドリアが雲取賞JpnIIIを制し、2着がグランジョルノで産駒ワンツーを決めた。2歳重賞で活躍した馬たちは、3歳でも存在感を示しており、2022年生まれの世代別サイアーランキングで地方に絞ると、ナイトオブファイアなどがいるホッコータルマエに次ぐ2位で、その差は約3000万円と僅か。まだ2世代しか送り出していない状況での好成績から、ゴールドドリーム産駒はより期待が膨らむ。

 エスポワールシチーの産駒からも、2頭のJpnI馬が誕生した。ヴァケーションは全日本2歳優駿JpnIを鮮やかに差し切り、現在は金沢で現役を続けている。そして、イグナイターがJBCスプリントJpnI(2023年・大井)を制し、前年に続いて2年連続でNARグランプリ年度代表馬に輝いた。さきたま杯JpnIでもレモンポップの2着があり、先日のマイルチャンピオンシップ南部杯JpnI・10着を最後に現役を引退。種牡馬入りすることが発表された。イグナイターは、ダート短距離で活躍したスピードが魅力。ゴールドアリュール~エスポワールシチーからさらに父系を伸ばすべく、イグナイターには新たな仕事が待っている。

 写真:いちかんぽ

PROFILE

古谷剛彦(ふるや たけひこ)

古谷剛彦
(ふるや たけひこ)

1975年東京都出身。2001年からホッカイドウ競馬パドック解説者となり、北海道を中心に活動している。グリーンチャンネル『地方競馬中継』『アタック!地方競馬』『KEIBAコンシェルジュ』『馬産地通信』にレギュラー出演。ホッカイドウ競馬LIVE『なまちゃき』解説者。フリーペーパー『うまレター』南関東競馬NEWS担当。監修・著書に『地方競馬完全攻略ガイド』。共著に『交流重賞徹底攻略!地方競馬パーフェクトブック』。

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