

~新競走体系が与える効果を様々な角度から紐解く~
文:古谷剛彦

ファーンヒル(JBCスプリント)
25年目のJBC開催が無事、終了した。今年はJBCスプリントJpnIで、ファーンヒルがエンテレケイアとの先行争いを制して先手を奪い、JRA勢の追撃を凌いで、スプリントでは2年ぶり5頭目となる地方所属馬の勝利を飾った。1000mという特殊な距離。JRAでは、新潟の直線競馬で行われるアイビスサマーダッシュが、芝とはいえ1000mで唯一の重賞。一方、地方競馬では、各ブロックの1000m以下で争われるスーパースプリントシリーズが2011年に始まる。この時代は、ラブミーチャンという全国区のスプリンターが地方のスターとして君臨しており、名古屋で行われた名古屋でら馬スプリントと、シリーズの決勝的な位置付けとなっていた習志野きらっとスプリントを11年から13年まで3連覇した(スーパースプリントシリーズは23年まで)。
異色の舞台設定で覇を競うレースは、地方競馬にしっかりと根付いた。またJRAのダート短距離重賞は、1200mだとカペラステークスGIIIのみ。それ以外はリステッドを含むオープン特別ばかりだが、常に登録頭数が多い番組で、フルゲートの激戦となる。しかも、勝つ度に負担重量が増えてしまうケースが目立つ。ダート短距離馬にとっては非常にレース選択が厳しい状況が続く。
ファーンヒルは、JRAで3勝クラスを勝った後、オープン特別で2着2回、3着2回と惜しいレースもあった。前半3F=34秒台で先行できるスピードを考えると、新天地でタイトルを狙う選択は納得できる。特に、今年のJBC開催は船橋だったことで、15年ぶりにJBCスプリントJpnIが1000mで行われるとあれば、事前にこの舞台を経験できる南関東所属馬にとって有利に働く。移籍初戦だった習志野きらっとスプリントで、ファーンヒルは3馬身差の圧勝を演じた。このレース振りから、見る側にとっても大一番で地の利を活かせると、強く感じたのではないか。
短距離と言えば、JBC開催当日の門別で、地方全国交流として創設された北海道2歳スプリントが1200mで行われた。1800mで覇を競うJBC2歳優駿JpnIIIは翌年のダート三冠を意識させるレースで、一昨年のフォーエバーヤングのように全日本2歳優駿JpnIまで制す馬もいる。しかし、JRAのダート1400~1600mや、園田1400mで行われる兵庫ジュニアグランプリJpnIIから全日本2歳優駿JpnIへ向かうケースの好結果が目立つのも確か。また、昨年のミリアッドラヴのように、エーデルワイス賞JpnIII(1200m)から挑む場合でも、過去にもグレイスティアラ(05年)、リエノテソーロ(16年)が全日本2歳優駿を制しているように、短距離戦のハイペースを経験した馬の優位性も感じる。
北海道2歳スプリントは、JBCデーの2歳短距離カテゴリーに組み込まれるようなレースに成長することを、馬産地では期待している。JBC協会の協賛で、他地区から遠征する馬の出走奨励金を100万円に設定したことも、全国のスピード自慢を揃え、レースレーティングを高めていくことを主眼に置いている。
今年は、佐賀からヘイルメリーランが遠征してきたが、北海道でデビュー勝ちを収めた後、すぐ佐賀へ移籍してネクストスター佐賀に出走(6着)した。トップスプリンターとは言えないものの、コース経験を活かして遠征を決めたようだが、長旅の影響で16kgも馬体が減り、能力を発揮し切れず14着に終わった。ただ、創設したレースを盛り上げる上で、他地区からの参加があったことは何より。
勝ったゴッドバロック、2着シーテープ、4着ブルーメンガルテン、5着ファインキックと、掲示板内5頭のうち4頭がネクストスター門別に出走していた。別路線組では3着サヨナキドリが、ウィナーズチャレンジ(7)を勝った勢いで渋太く粘った。ゴッドバロックは兵庫ジュニアグランプリJpnIIに出走予定だが、ネクストスター門別でゴッドバロックを破ったスペシャルチャンスも同じく園田を目指している。この2頭の兵庫ジュニアグランプリJpnII出走意思は、北海道2歳スプリント創設の意義を思わせる。
しかし、新ダート体系の本質は、早い段階におけるスペシャリストを生み出すことにある。ファーンヒルのような新天地での活躍も嬉しいが、やはり地方生え抜きのビッグレース優勝が、競馬の盛り上がりに欠かせない。北海道2歳スプリントが、全国の2歳スプリンターが目指すべきレースとなるためにも、各地のネクストスターを10月上旬までに消化することを提案したい。
ホッカイドウ競馬がハイレベルの2歳戦を繰り広げている背景は、馬産地直結という利とは別に、全国最初の2歳重賞として定着している栄冠賞が6月下旬に設定され、ダートグレードまでの2歳レース体系がしっかり整備されていることが大きい。JRAで2歳新馬戦が6月に始まるようになってから10年以上経った。その流れから、中期育成→後期育成の流れもどんどん早くなっている。デビュー頭数が北海道ほど多くはないにせよ、地方競馬の各地でも、早い時期から2歳戦が組めるようになっている。早い時期に重賞を行った方が、デビュー促進へとつながり、ネクストスターに関してもメンバーが揃う可能性は高い。来年の日程には間に合わないだろうが、再来年には一考願いたい。
写真:いちかんぽ
PROFILE

古谷剛彦
(ふるや たけひこ)
1975年東京都出身。2001年からホッカイドウ競馬パドック解説者となり、北海道を中心に活動している。グリーンチャンネル『地方競馬中継』『アタック!地方競馬』『KEIBAコンシェルジュ』『馬産地通信』にレギュラー出演。ホッカイドウ競馬LIVE『なまちゃき』解説者。フリーペーパー『うまレター』南関東競馬NEWS担当。監修・著書に『地方競馬完全攻略ガイド』。共著に『交流重賞徹底攻略!地方競馬パーフェクトブック』。