

~新競走体系が与える効果を様々な角度から紐解く~
文:古谷剛彦

全日本2歳優駿 ゴール前
全日本2歳優駿JpnIは、ホッカイドウ競馬から参戦したベストグリーンが単勝1.9倍の1番人気に支持された。栄冠賞で破ったゴッドバロックが、後に兵庫ジュニアグランプリJpnIIで2着に健闘。ブリーダーズゴールドジュニアカップでベストグリーンから1秒2差の3着だったアヤサンジョウタロが、JBC2歳優駿JpnIIIで3着惜敗と、ベストグリーンに敗れた馬たちがダートグレードで奮闘したことが、多大なる支持を集めたと思われる。
しかし、机上の計算と実戦は違う。逃げたイダテンシャチョウが前半3F=37秒6のスローペースで、ベストグリーンは向正面に入るまで引っ掛かっていた。その内にいたパイロマンサーは、1コーナーの入りまでは行きたがる面を見せていたものの、すぐ折り合いがついた。勝負所の反応は、ベストグリーンが手応え良く上がっていくのに対し、パイロマンサーが抵抗するような形で、実際に直線入口ではベストグリーンが一旦は前に出た。ただ、パイロマンサーが差し返す渋太さを見せるとともに、JBC2歳優駿JpnIIIを制したタマモフリージアが猛然と追い込み、ベストグリーンは脱落。パイロマンサーが粘り切り、2歳ダート王に輝いた。
今年を含む過去5回の全日本2歳優駿JpnI優勝馬を改めてみると、ドライスタウト、フォーエバーヤング、ミリアッドラヴ、そしてパイロマンサーが3戦3勝で頂点に立った。
唯一、キャリアを積んでいたデルマソトガケは、未勝利戦→もちの木賞を連勝した勢いで勝利を収めており、3連勝で優勝している。もちの木賞は京都ダート1800m(2020~22年は阪神)で施行されているが、比較的時計の速いコースで、マイル戦の忙しい流れにも対応できる器用さを備えていると考えて良さそうだ。
また、フォーエバーヤングとタマモフリージアは、JBC2歳優駿JpnIIIからの臨戦だが、門別がオーストラリアの白い砂に替わった後の勝ち馬で、序盤のラップが厳しく、差し切り勝ちを演じている。
昨年のJBC2歳優駿JpnIIIを差し切ったソルジャーフィルドも、全日本2歳優駿JpnIで3着に食い込んだ。1800mからの距離短縮となる全日本2歳優駿JpnIだが、JRAは2歳ダート戦の番組が少ないので、1勝クラスのメンバーは必然的にハイレベルとなる。JBC2歳優駿JpnIIIや兵庫ジュニアグランプリJpnII、昨年のミリアッドラヴのように牝馬ならエーデルワイス賞JpnIIIに出走できたJRA勢は、ダートグレードで揉まれた経験が活きてくる。いずれにせよ、JRA勢のダート路線が、年々層に厚みを増していることを感じた。
とはいえ、ベストグリーンは決して悲観する内容ではなかった。『グリーンチャンネル地方競馬中継』でゲスト出演された中村均(元JRA調教師)さんは「パイロマンサーは並ぶと渋太いタイプ。ベストグリーンは、勝負所で相手に合わすような形でレースを運んでしまい、かえってパイロマンサーの持ち味を引き出してしまった感じがありました」と解説された。パイロマンサーのデビュー戦、早めに先頭に立つとフワフワし、外からジャスティンダラスに一旦は詰め寄られたが、馬が来ればもうひと伸びする内容で勝利した。その相手を研究した上で、栄冠賞の時のように早めに突き放していくくらいの積極性があれば、パイロマンサーが抵抗し切れなかった可能性があったのでは……と、私も思った。
アヤサンジョウタロも、ロスのない立ち回りから4着に食い込み、JBC2歳優駿JpnIIIでタマモフリージアにつけられた差を詰めることはできなかったものの、初のマイル戦で大健闘と言える。
この2頭には、ダートグレードで再び、打倒JRAを目指して頑張ってほしい。なお、アヤサンジョウタロはこの後、船橋・齊藤敏厩舎に移籍し、来年は雲取賞JpnIIIからダート三冠を目指す方針となっている。ベストグリーンもダート三冠を視野に一旦放牧に出される。
全日本2歳優駿JpnIは、ホッカイドウ競馬の強豪が出走したことで格好はついたものの、舞台となる南関東の所属馬が2頭しか出走しなかった。コスモギガンティアが最後方から5着に追い込んだが、アイビーステークスに参戦(7着)するなど、JRA勢に挑む姿勢を見せていたキャリア豊富な地元馬が、何とか意地を見せてくれたことは何より。地方所属馬が掲示板に3頭が載ったことを考えれば、それまでに実績のあった南関東勢にも出走して欲しかった。
全日本2歳優駿JpnIを制したパイロマンサーは、UAEダービーG2参戦を示唆した。何度も書いているが、JRAのトップホースたちは海外を目指す馬ばかり。だからこそ、2歳及び3歳ダートグレードは、地方馬にも十分にチャンスはある。関係者の考えが一向に変わらなければ、さらなる高みを目指す人たちとの差は開くばかり。年明けのブルーバードカップJpnIIIは、南関東所属馬が多数出走することを期待したい。
写真:いちかんぽ
PROFILE

古谷剛彦
(ふるや たけひこ)
1975年東京都出身。2001年からホッカイドウ競馬パドック解説者となり、北海道を中心に活動している。グリーンチャンネル『地方競馬中継』『アタック!地方競馬』『KEIBAコンシェルジュ』『馬産地通信』にレギュラー出演。ホッカイドウ競馬LIVE『なまちゃき』解説者。フリーペーパー『うまレター』南関東競馬NEWS担当。監修・著書に『地方競馬完全攻略ガイド』。共著に『交流重賞徹底攻略!地方競馬パーフェクトブック』。