SPECIAL COLUMNSダート競馬、新時代へ

~新競走体系が与える効果を様々な角度から紐解く~

文:古谷剛彦

VOL.25

門別能検初日1番時計の馬の活躍
サウジへ挑戦するベストグリーン

ベストグリーン(鎌倉記念)

ベストグリーン(鎌倉記念)

 NARグランプリ2025の受賞馬が発表され、年度代表馬は東京大賞典GIとコリアカップG3を制したディクテオンが受賞した。20年ぶりに地方所属馬が東京大賞典GI優勝を飾り、コリアカップG3の勝利は地方所属馬にとって海外ダート重賞初制覇の快挙を成し遂げたディクテオンは、まさに2025年の象徴と言える。

 JRA賞ではフォーエバーヤングが年度代表馬に輝いたが、ダート競馬の評価が一気に上がった1年でもある。

 2歳最優秀牡馬に輝いたのは、ホッカイドウ競馬のベストグリーン。昨年、ホッカイドウ競馬で能力検査(以下、能検)を受けた中で、800mのタイムが最も速い48秒6を初日の3月13日にマークした。能検初日に1番時計をマークした馬は16年以降、多くの馬が地方競馬の重賞を制している(20年、24年を除く)。

 16年:バンドオンザラン(栄冠賞、イノセントカップ、優駿スプリント)
 17年:ソイカウボーイ(サッポロクラシックカップ、楠賞)
 18年:イグナシオドーロ(ブリーダーズゴールドジュニアカップ、北海道2歳優駿JpnIII)
 19年:アザワク(グランシャリオ門別スプリント3連覇、道営スプリント)
 19年:プリモジョーカー(リリーカップ)※2019年は1番時計が2頭
 21年:スティールルージュ(フルールカップ、ローレル賞、ユングフラウ賞、若潮スプリント、しらさぎ賞)
 22年:ポリゴンウェイヴ(ニューイヤーカップ、クラウンカップ、兵庫ゴールドカップ)
 23年:カプセル(平和賞)

 20年トンデコパと24年ファストワンは重賞勝ちはないものの、トンデコパはフルールカップ2着と連対実績はあり、ファストワンは門別のオープン特別で2着3回の後、浦和に移籍して負けなしの4連勝と、依然として連対10割を誇る。

 2歳の早い時期に速い時計を叩き出せる馬は、早熟=短距離向きというイメージを持つ人は少なくない。しかし、能検初日の1番時計をマークした馬が、10年間でこれだけの成果を上げている点は、大いに注目できる。

 ベストグリーンは、栄冠賞の勝利で早くも重賞ウイナーとなった。それにとどまらず、ブリーダーズゴールドジュニアカップを制した後、全日本2歳優駿JpnIを意識して鎌倉記念の遠征を決め、南関東勢を圧倒した。全日本2歳優駿JpnIは3着に敗れたものの、NARグランプリでは全会一致で2歳最優秀牡馬に選出された。

 ベストグリーンは、サウジダービーG3の招待を受諾。門別競馬場で順調に調整されている。田中淳司調教師に話を聞いた。

 「鎌倉記念を勝った時、全日本2歳優駿の先にあるサウジダービーも意識しました。全日本2歳優駿は、ベストグリーンの持ち味を発揮し切れず、悔しい敗戦となり、3着では選出されるか微妙な立場になったなぁと思いましたが、無事に選ばれてホッとしました。立ち上げも早く、1月10日に3F41秒4-1F13秒8をマークするなど、順調に過ごしています」

 24年にフォーエバーヤングで優勝するなど3年連続でサウジダービーG3に騎乗している坂井瑠星騎手に手綱を託すことになった。

 「前走後、坂井騎手に騎乗依頼をした際、快く引き受けてくれました。ベストグリーンの過去のレースも見てくれていたようですし、頼もしいですよね」

 検疫先となる大井競馬場・小林分厩舎に向かう前となる1月24日に、坂路で併せ馬を行う予定。「気が入りやすいタイプなので、併せ馬でも折り合いをつける意識を持った調教を行い、その後はサウジに着いた後も単走で行うつもりでいます」

 ホッカイドウ競馬から海外遠征を行った馬は、コスモバルクとハッピーグリンがいる。コスモバルクは06年、シンガポール航空国際カップG1を制し、地方所属馬初の海外G1制覇を叶えた。ハッピーグリンは、田中淳司厩舎にとって初の海外遠征となる香港チャンピオンズ&チャターカップG1で、結果は8着と奮わなかったものの、エグザルタントやパキスタンスターといったG1馬と戦い、大きな刺激を受けた。ベストグリーンが3頭目の海外遠征となるが、いずれもホッカイドウ競馬生え抜きである。

 田中淳司調教師は、ハッピースプリントが全日本2歳優駿JpnIを勝った時に、ドバイ(UAEダービーG2)を意識していた。しかし、この当時は若駒のドバイ遠征後のダメージの大きさを関係者に伝えられ、馬の将来を考えて南関東クラシックを目指す方向性を応援する側となった。あれから12年、自身が育て上げた逸材での中東遠征がいよいよ叶う。

写真:いちかんぽ

PROFILE

古谷剛彦(ふるや たけひこ)

古谷剛彦
(ふるや たけひこ)

1975年東京都出身。2001年からホッカイドウ競馬パドック解説者となり、北海道を中心に活動している。グリーンチャンネル『地方競馬中継』『アタック!地方競馬』『KEIBAコンシェルジュ』『馬産地通信』にレギュラー出演。ホッカイドウ競馬LIVE『なまちゃき』解説者。フリーペーパー『うまレター』南関東競馬NEWS担当。監修・著書に『地方競馬完全攻略ガイド』。共著に『交流重賞徹底攻略!地方競馬パーフェクトブック』。

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