SPECIAL COLUMNSダート競馬、新時代へ

~新競走体系が与える効果を様々な角度から紐解く~

文:古谷剛彦

VOL.27

古馬トップホースの地方移籍は
ダートグレードを勝つための選択

オディロン(ダイオライト記念)

オディロン(ダイオライト記念)

 今年の3歳ダート三冠前哨戦は、ブルーバードカップJpnIIIがJRA所属馬のワンツースリー。雲取賞JpnIIIは1~4着を占め、JRA勢はかなり強力な印象を受ける。

 そんな中、JRAでダート戦を勝ち上がった馬が早めに地方競馬に移籍するケースは、近年も続いている。一昨年はマッシャーブルム、昨年はシーソーゲーム、そして今年はサンラザールが大井へ移籍。マッシャーブルムとサンラザールは、転入初戦でスターバーストカップを快勝。シーソーゲームは、クラシックチャレンジ2着後にダイヤモンドカップ(盛岡)を制した。マッシャーブルムは羽田盃JpnIで6着に敗れ、その後は短距離路線へ。シーソーゲームは東京ダービーJpnIへ駒を進め3着に健闘し、ジャパンダートクラシックJpnIにも出走(8着)した。

 サンラザールは、JRAの1勝クラスで5着に敗れ、JRA所属のままだとダート三冠を歩むのが厳しい状況となり、早々と地方転籍を選択した。地方競馬に移っても、ダート三冠に出走するための選定は、地方所属時における総収得賞金(着内賞金の総額)を基本とし、転入初戦での出走は認めていない。そう考えると、ダート三冠を目指すためには、早い段階で地方競馬へ移籍し複数勝利を収め重賞ウィナーらを上回るだけの賞金を手にするか、トライアルで権利を取ることが求められる。

 JRAの2歳から3歳春まで、新馬戦や勝ち上がった馬たちによるダートの番組は、芝に比べれば少ない。だからこそ、新馬戦は狭き門であり、勝ち上がった馬のレベルは高い。もちろん、1勝クラスやオープン特別も出走馬の質は高い上に多頭数のレースとなり、ハイレベルな戦いが繰り広げられる。敗戦組にも素質馬は多く、地方へ移籍した際に圧勝するケースを結構見てきた。今年のサンラザールもJRAで厳しいレースを経験し、移籍初戦のスターバーストカップでは、ペースの違いから手応えなども明らかに違い、直線は余力を持ってフィニッシュしている。

 このような移籍は、ダートグレードになる前の南関東クラシックでも見られた。2010年に東京ダービーを制したマカニビスティー、2012年に東京ダービーでプレティオラスの2着だったプーラヴィーダ、そして2016年東京ダービーで7馬身差の圧勝を演じたバルダッサーレ。その他、結果は出なくても、JRAから移籍して南関東クラシックに挑んだ馬はいる。

 結果が出た際は賛否があり、バルダッサーレが圧勝した時は特に批判の声が強く、東京ダービーに関してはその後、転入初戦で出走することは不可となった。しかし、逆の立場で考えれば、ハイセイコーやオグリキャップ、イナリワンなどがJRAへ移籍してビッグレースで活躍したケースに対し、厳しい意見などはあっただろうか……。

 競馬は本来、オールカマーであるべきだ。ルールに則り、移籍して結果を出したことに不平不満を感じるのは、スポーツとして競馬を考えるならあり得ない。実力差だと受け止め、来年はもっと強い馬づくりに励もうと気持ちを切り替えるのが、スポーツマン・スピリッツだと感じる。

 それでは、古馬はどうか。過去にダートグレードの勝利実績があっても、JRA所属のままではダートグレードやJRAでのオープン競走に出走するのが難しいケースがある。そのような状況から、地方競馬に移籍をするケースが以前にも増して増えた。各地の重賞も賞金が上がったことから、ダートグレードのみならず、地方交流など様々な選択肢があるので、必ずしも南関東に限った転入ではなく、あらゆる地区で名だたる馬の活躍が見られる。ディクテオン、ライトウォーリア、イグナイターがNARグランプリ年度代表馬に輝く成績を収め、今年はセラフィックコールがダイオライト記念JpnII・3連覇を目指し、南関東へ移籍した。その偉業を阻止したのは、兵庫のオディロン。オディロンもJRAオープンからの転入馬だ。古馬になると、このような移籍による活躍に対し、賛否の声はあまり上がらない。

 JRA関係者は、当たり前のように世界を目指す時代になった。その一方、地方競馬では対JRAを意識する関係者の絶対数は、賞金の高い地区になればなるほど少ないという現状がある。南関東を除く地区は、まず地方競馬の中で最も賞金の高い南関東のレースや、地元のダートグレードを目指す。これは、健全なピラミッド構造と言える。しかし、ピラミッドの頂点にいなければいけないはずの南関東が、ダートグレードへの挑戦は消極的で、むしろ地方重賞でフルゲートになるケースが目立つ。本来は対JRAを意識し、地元でチャンピオンになった後は高みを目指すのが理想である。

 ただ、今年はブルーバードカップJpnIIIに南関東から有力馬が出走した。また、ベストグリーンがサウジダービーに挑戦したように、関係者の意識は確実に変わってきた。そしてダートグレードを勝つために、「ダート競馬は地方競馬」と考えるオーナーが増え、古馬になればトップクラスの移籍が自然に行われる時代にもなった。新ダート体系は少しずつ根付き、ダート三冠を地方所属馬が賑わす時が来ることも、そう遠くはないだろう。

写真:いちかんぽ

PROFILE

古谷剛彦(ふるや たけひこ)

古谷剛彦
(ふるや たけひこ)

1975年東京都出身。2001年からホッカイドウ競馬パドック解説者となり、北海道を中心に活動している。グリーンチャンネル『地方競馬中継』『アタック!地方競馬』『KEIBAコンシェルジュ』『馬産地通信』にレギュラー出演。ホッカイドウ競馬LIVE『なまちゃき』解説者。フリーペーパー『うまレター』南関東競馬NEWS担当。監修・著書に『地方競馬完全攻略ガイド』。共著に『交流重賞徹底攻略!地方競馬パーフェクトブック』。

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